ボディビルダータイプ別

 ふと、友人とボディビルダーに変な性格の人間が多すぎるという話になった。友人はボディビルやる事自体がおかしいので、ガイジしかいない、で話を終わらせたが、筆者はそうは思っていない。

 ボディビルダー同士の付き合いは普通の人同士の付き合いよりも深いものになるから、よりその人の悪い面がよく見えてくるだけであって、そのガイジ系ビルダーだって会社や親戚の集まりでは表面を取り繕っているはずである。つまりこのガイジ率は日本社会の縮図だ、というのが筆者の論であった。

 別の友人はこう言った。ボディビルダーは中高と暗い青春時代を送った人間が多く、所謂陽キャコンプがある。だから陽キャを見ると執拗にネットで叩いたり、嫌がらせをする。この業界が陰口まみれなのはそのせいだ、と。

 たしかにこのビルダー陰キャ論にはかなりの説得力がある。陰キャがコンプから始めているとすれば、すべての説明がついてしまうからだ。しかし同時にこんな言もある。

 とある外国の大会に日本人選手を連れて行った時の事だ。

 「何コレ!外国のボディビルってヤンキーばっかじゃん!!」

 うーむ、これも事実なのである。日本と外国ではやる動機が違うのだ。


 そこで筆者は始めた動機によって性格が異なる説を提唱したい。以下にそれを羅列しよう。


1 陰キャコンプ型
2 周りを見返してやりたい型
3 イキりたいからやっている型
4 スポーツ補強でやっていて、怪我等でウェイトしか出来なくなった型
5 スポーツ補強でやっていて、ウェイトのほうが面白くなっちゃった型
6 映画などに影響されてやっている型
7 他人種に負けたくなくてやっている型
8 モラトリアム型
9 自傷型





1 陰キャコンプ型

 もうタイトルで説明が付いているのだが、コンプから身体を鍛えているタイプである。彼等は仮想敵としている陽キャないし元陽キャに対してマウントを取る事が目的なので、筋トレそのものを極めたり、コンテストの結果を極める気は薄い。

 学生時代の復讐が出来ればただそれで良いのである。よってこのタイプはぶっちゃけ向上心が薄い。このタイプは国内のレベルの高い大会で勝ってやろうだとか、世界で戦ってやろうなんて微塵も考えていない。そんな事する予定はもともと人生設計に入っていないからである。

 結局何をやってもそこそこ、で終わりなのである。ぶっちゃけ筆者はこのタイプが嫌いであるし、相手にしないようにしている。何度裏切られた事やら・・・

 またインターネットなどで他人の悪口をほざきまくっているのもこのタイプである。何故か学生時代に虐げられていた自分には見ず知らずの陽キャに復讐する権利が当然備わっていると考えている。だから匿名なのに滅茶苦茶偉そうだし、他者が匿名を相手にするのは当然だと考えている。頭がおかしい。







2 周りを見返してやりたい型

 1の陰キャコンプ型と似ているが、こちらはより具体的なバージョンである。また陰キャコンプ型と違って「大会で結果を出して見返してやる!」という具体的な目標があったりするので、1のタイプよりは向上心が強い。

 このタイプが気にしている周りとは二つに大別される。一つは親族であり、もう一つは友人関係である。大抵の場合このタイプは親族ないし友人間で見下され、馬鹿にされている。

 なのでビッグタイトルに挑む根性があったりもするのだが、いかんせんやっぱり見返せれば良い、がモチベーションなので、辛さ>>見返しレベルとなると途端にサボるようになる。

 おそらく一定のレベルまでは身体を作る事が出来るであろうが、それ以上となると辛さのほうが勝ってしまい本人の中で割に合わなくなる。そういう理由でこのタイプも一定以上大成する事はない。

 このタイプは見返しの範囲が身内に限定されているので、1のタイプのように不特定多数に向かって噛み付いたり悪口をほざいたりする事はない。






3 イキりたいからやっている型

 このタイプはベストボディなんとか、が出来た時から急に増えた。実は自分の身体をドレスアップして、威嚇してねり歩き、賞賛を貰うもしくは他者の承認を得るという行為は暴走族と共通しているのである。

 暴走族の場合はそれが単車とコールであるが、ベストボディなんとかの場合は肉体であった、ただその違いである。確か上位にはっきりと順位を付けなかったのも都合が良かった。(2021現在でははっきり順位を付けているようである)

 日本の法がどんどん厳しくなって、若者はその青春の憤りをぶつける場所が無くなってしまった。そして彼等はこれに飛びついたという風に筆者は見ている。もし日本の法がもっと緩ければ彼等は暴走族やギャングになって街を練り歩いていた事だろう。

 健全で良いと言えば良いのだが、このタイプは今やSNSが主戦場になってしまっていて、いかに自撮りで盛れるか、フォロワー増やせるかの勝負になってしまっているのが残念である。ちゃんと大会出よう。





4 スポーツ補強でやっていて、怪我等でウェイトしか出来なくなった型

 主にパワー系コンタクトスポーツ、格闘技上がりである。前者はラグビーやアメフト、後者は柔道やレスリング、空手が多い。まれにボクシングやキック出身者がいるが打撃系の中でもこれらの二つは別格に根性がある人が多く、すぐに結果を残せる。

 このタイプは元のスポーツに未練のある人が多く、いつまでも「まあボディビルは本気じゃないから」という逃げのスタンスを作っている事が多い。だが怪我のほうも別に本気で直そうとはしていないし、本業への復帰への道筋も立てられていない。

 要はどちらも逃げで、なんとなく現実逃避でやっているのである。特にラグビーアメフト、柔道空手出身者はパワーに未練がありすぎて絞りきれない事が多い。レスリング出身はそもそもの階級が厳しいため、本業じゃなくてもきっちり絞ってくる。上に書いたボクシング、キックも同じである。







5 スポーツ補強でやっていて、ウェイトのほうが面白くなっちゃった型

 タイトルの通りである。また4のタイプがボディビルガチにスイッチを切り替えてもこのタイプになる。このタイプは自分のやっていた競技が何かしらの政治的要素、運要素で決まるのが面白くなく、努力が結果に直結するウェイトのほうが良いや~と考えている人が殆どである。

 そんな感じなので本人は元のスポーツで何かしらの辛酸を舐めているパターンが多く、世の中の不条理や苦労というものをよく知っているのでこれまで述べたタイプと比べると圧倒的に大人である。

 またこのタイプはいつまで経ってもスポーツマンで居られる、という所にボディビルの魅力を見出していたりするので、結果より過程重視な人が多かったりする。要はキツい事ジャンキーである。筆者の経験では元体操にこのタイプが多い。

 結果にあまりこだわりがないので、水抜き計量パスで勝ちにいくとか、階級をどんどん上げていく、と言う事にはあまり興味がない。彼等はキツい減量を乗り越えてステージに立つというのが最大の目的である。もう少し勝ちに拘ってくれるとコーチングの甲斐もあるのだが、ちょっと惜しいタイプである。


 



6 映画などに影響されてやっている型

 これは最も単純なタイプである。昔、特に1980年代後半から1990年代前半にかけて、身体を鍛えて戦いに挑む、なんて映画がやたらめったら流行った。古くはベストキッドなんかが先駆けだろう。

 そこからニンジャウォーリアーシリーズだとか、ジャッキーチェンの香港映画などがどんどん続いた。これらの映画を見て単純な、言い換えれば純粋な精神の持ち主達は「カッケェ!!」とこぞって真似し始めたのである。

 そのうちただひたすら鍛えているだけなのも勿体ないので、コンテストにオマケで出て見るか、みたいなノリでコンテストに出る。このタイプはパワーリフティングや握力王だとか、アームに流れたり同時にやっている事が多いのも特徴である。

 筆者の知っている限りこの業界の大御所のY氏なんかがこのタイプである。






7 他人種に負けたくなくてやっている型

 日本では最も特殊なタイプであるが、外国では最もメジャーで一番数が多いタイプである。このタイプは大抵外国在住経験があったり、外国人の多い地域に住んでいた事がある。特に学校が人種混合だとこういう傾向がより一層強くなる。(ちなみに中国やインドなど傍から見たら同人種でも実際は街ごとに言語もルーツも全く異なるという民族でもこうなる)

 このような外国人が多いコミュニティで目立つのは矢張り黒人とラテン系である。二十年以上前だと韓国系も強かった。彼等は皆鍛えているので全体的に戦闘力が高く、発言力があるのだ。ヒョロガリのままでは舐められてしまい、コミュニティの中でやりたい放題されてしまう。

 また、90年代のLA黒人ギャングブームの影響もこれの一種である。当時のクリプス・ブラッズなんかは全員バキバキに身体を作っており、この動機自体が「白人に舐められないため」であった。

 日本でこれらのLAギャングの真似をし始めた若者たちは彼等の肉体も真似し始めた。スキンヘッドにし、日焼けサロンに通い、筋トレに明け暮れたのであった。「本場の奴等に舐められないように」彼等はそうしたのである。

 筆者の知る限りではK氏なんか典型的なこのタイプである。もともとLA黒人ギャング文化が大好きだった上に、実際にLAに住んでいた。





 尚恥ずかしながら筆者もこのタイプである。

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8 モラトリアム型

 これは社会学用語のモラトリアムである。学生から社会に出て働きサラリーを得る、もしくは商売を初めて生活を自分でやっていく、この厳しい現実の世界に放り出されるのが嫌で、現実逃避としてやっているタイプである。

 「俺はボディビルを頑張っているから……」が経済的に独立しないで済む免罪符となっているのである。このタイプは学連出身者に多く見受けられる。酷いのになると働いていてもまだこの考えを持っており、本業そっちのけでボディビル及び学生時代の事ばかり考えている。

 ボディビルはキツい。他スポーツのような一瞬のキツさはないが、生活の24時間すべてがそれに支配されてしまう。だから何もしていなくてもボディビルをやっているだけで人生を超頑張っているかのように錯覚してしまうのだ。しかしそれが金を稼げる道に繋がっていなければ、ただの趣味である。

 結局現実逃避の道具にしているだけなので、彼等の話は非常に大げさである。しかし実際には大したことをしているわけではない。このタイプはやたらめったら話の風呂敷を広げてくるが真に受けないようにしよう。どうせ実行できやしないのだ

 このタイプはコンテストではそこそこのレベルまでは行ける。しかし実際にボディビルと金を稼ぐ道を紐付けない限り国際A級まではいけない。国際B級止まりが良い所である。実家がメチャ金持ちとかは例外である。






9 自傷型

 このタイプは新しい。日本では比較的最近出てきたタイプである。特徴としては命を掛けたがる。主にスーパーサプリなどで滅茶苦茶なリスクを取りたがる。トレーニングも滅茶苦茶である。

 しかし結局これはリストカットに近い。「こんなに危ない事してる自分見て見て!」なので、それらのスーパーサプリをぶち込む事や、わけのわからないノンカーボダイエットで病院に運ばれたりするのが彼等のメインの目的である。

 身体を作りたいわけではなく、単に注目を集めたいだけなのでやっぱり結果は出ない。むしろ「こんだけの事やっておいて何でこの結果なの?」とびっくりさせられる事が多い。彼等のやってる事はプロフェッショナルより格段に過激である。

 しかしそれを結果のためにやっているわけではない。単にその行為自体を通して注目を集めたくてやっているだけに過ぎない。筆者はリッチ・ピアーナはこのタイプの究極だと思っている。

 彼は単に目立ちたいだけだったのだ。結果として死んでしまったが、それも彼の本望だったろう。彼は最初から人生に希望など見出していなかったと筆者は考えている。




 以上タイプ別。皆はどれかな?

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