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最強のツーリングバイクとは何か

 筆者はバイクが好きである。日本以外でもバイクに乗りまくり、あちこち旅行をしまくった。そんな筆者に結構質問が来る。「どのバイクを買えばよいのか」というものである。

 殆どの人にとって、バイクの使用目的は次の4つに分けられる。今や道路事情も良くなって日本から渋滞は無くなった。通勤にバイクを使うなんていうのももう過去の話であり、雨風に耐えながら転倒や事故の危険性に怯える上に荷物搭載量も少ないバイクで通勤なんてのはせいぜい2005年くらいまでの話である。今現在、この通勤ライダー達は殆ど軽自動車に乗り換えた。

 現在のバイク乗りの使用用途は以下の四つである。
1 街で目立つため…つまりファッション
2 スポーツライディング
3 エクストリームまたは林道バイク投げ
4 趣味でブラりとツーリング

 おおよそこの4つに分けられる。


1は筆者からアドバイスできる事など何もない。好きなデザインのものに乗れば良い。
2は公道でやるのはリスクがデカすぎるので、サーキットでもジムカーナでも行くと良い。速いバイクは大抵1、2種類に絞られる。
3はスーパーモトでもトレールでもトラ車でも、とにかく頑丈でパーツが豊富なのを選べば良い。

 問題は4である。

 ツーリングと言うと、最近ではBMWやスズキのアドベンチャータイプ、またはラリー用デュアルパーパスなんかを勧める人が多いが、これらのガチのアドベンチャータイプが活躍するのってアフリカ縦断とか、南米一周とかそんなレベルではないだろうか。要は未舗装路を長距離走る行程が必要となる場合である。このレベルの冒険なら、わざわざバイクでやらなくても達成感は得られるだろう、というのが筆者の考えである。

 またバイクの冒険ってのはいかにして限られた装備で走破するかという所に面白みがあると思っているので、豪華装備で行くくらいなら最初から車でいいじゃん……と思っていたりもする。

 しかもこれらのバイク、筆者的には排気量が大きすぎるように思える。外国でツーリングした事ある人はわかると思うが、ガソリンスタンドが定期的にある保証が全くないのである。燃料計が半分以下を示したら、そこからはもうガス欠の恐怖との戦いである。

 また僻地に行くとガソリンが大抵瓶詰で売られているのだが、当然滅茶苦茶高い。都市部の3倍以上なんてザラである。燃料計が半分以下を示してからは常にガソリンの事を考えるようになり、景色を楽しむ暇も、エンジンの鼓動を楽しむ暇もない。

 ただひたすらに人のいない道路で野生動物や強盗が襲ってくるかもしれない暗闇の中バイクを押して歩きながら、蚊に刺されまくる絵を想像し、それと今目の前にある瓶詰のぼったくりガソリンを天秤に掛けるのみである。

 そういうわけで、ツーリング慣れしてくるとより燃費が良いバイクを求めるようになっていくのである。そもそもロングツーリングになると最初の100kmくらいで飽きるので、乗り味とかフィーリングとかどうだってよくなってくる。ハーレーに代表されるアメリカンクルーザーも、安定したパラツインも、高回転までよく回るマルチも、最早どうでも良い。ケツが痛くなるかならないかのほうが余程大事である。

 またツーリングをする場合は各都市間をちょこちょこ移動し、都市で宿を取りつつ現地のグルメを楽しむのが定番である。この都市内での移動がポイントで、大きなサイズのバイクに乗っているとこれがめんどくさい。ライディングで体力も使いきっているので、歩きでどっか行くくらいなら宿で寝てるわ、となってしまう。ツーリングに使うバイクを小型にして、都市内でもバイクで移動するようにしたほうが良い。

 で、その都市内では渋滞がめんどくさい。渋滞の中一々クラッチ切ってギア上げて、ってのがめんどくさいので小型にしてもミッションだと移動がダルくなり、やっぱり乗らなくなる。そこで、オートマが大活躍する。

 さてこれまでの条件を纏めよう。
・燃費最優先
・小型ボディ
・オートマ



 これらを満たす条件のバイクは……そう、スクーターである。更にスクーターは
・高速走行時の風防完備
・メットインスペースを活用すればバックパックが要らない
という超メリットもある


 つまり、燃費が良くて小さく、メットインスペースの大きなスクーターこそがツーリング最強バイクなのである。実際筆者はいろんな国でツーリングをしたが、都市観光と道中を両立出来た旅はすべてスクーターでのツーリングであった。一応以下に失敗例も挙げよう。

・アメリカンクルーザー……都市内で全く役に立たない。長距離走行中エンジンの熱で気が滅入ってくる。風の抵抗で疲れる。横に鞄つけたり、シーシーバーを付けても荷物は思ったより積めない。
・スーパースポーツ……とにかくケツがイテーし肩と三頭筋がガクガクしてくる。腰も痛い。積載が皆無なのでバックパックを背負うか、箱を後ろに付けるしかない。するとバランスの関係で更に疲れる。荷物だけ目的地に先に送るという技を駆使しないとやってられない。そして外国だと期日通りに荷物が付いている事が少ない。何よりもガソリン代……
・メガツアラー……これ乗るなら車のほうがいいだろ。重いし都市内ではゴミだし……ガソリン代……
・中型マルチ……意外と悪くはなかった。パワーと燃費のバランスがなかなか良い。ただそれでもクッソ僻地だとガス欠との戦いになる。
・スーパーモト……罰ゲームかな?
・250シングル……振動で手が痺れる。120km/h超えるとチャタリング。尚これは所謂クラシックタイプだけではなく、カウル付きのモデルでも同じである。
・125ccスクーター……一応これでも110km/hは出るので速度域の低い国ならなんとかなる。ちなみに筆者はこれでパタヤからプーケットまで行った事がある。
・110ccアンダーボーン……いわゆるカブである。全開にしまくっていたらブローした。積載が弱い。


 では成功例はどれか。ズバりここで発表しよう。


 それは……









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 PCX150


である。最近は160やハイブリッドも出ているのかな?PCXの特徴として
1 ライディングポジションが楽
 これは実は奥が深くて、スクーターだからこそできる技である。筆者は基本的にスクーターに乗る時でもシートに浅く腰かけ、身体を真っ直ぐ立て、ハンドルを低めに持つという「前乗りスタイル」なのであるが、ストレートをひたすら進むという場面では足を前に投げ出して身体を後ろに傾ける「ラッコ乗り/アメリカン乗り」に移行する。

 これはこのようなフットレストが縦に長いスクーターのみが出来る事であり、ミッションのバイクだとステップの位置が決まってしまっているのでライディングポジションを変化させる事ができない。結果エコノミー症候群のようなものが発生してしまい、物凄い体調が悪くなる。車でも飛行機でも足のポジショニングが自由なほうが疲れは少なくて済むのである。

2 燃費
 これは説明するまでもないかな。

3 大容量メットイン
 

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 筆者のように旅行慣れしていると、荷物は極限まで少なくできる。だいたい着替え3枚もあれば充分で、そこに洗面用具とか、PCとか、充電機や常備薬、サプリがあればOKである。小型のバックパックに収まる程度だ。そしてPCXのメットインにはそれがすっぽり入ってしまう。むしろバックパックなんて入れずにそのままぶち込んでいたくらいである。

 28Lもスペースがあるので、プロティンパウダーや現地で適当に買ったバナナとかを入れておいても十二分に余剰スペースがある。これは実にありがたかった。ちなみに筆者はパニアやリアトランクなどつけない派である。更にバックパックを背負う事も絶対にしない。ツーリングでバックパックを背負っていると異常に疲れるからだ。

4 意外と小回りが利く
 このおかげで各都市内移動も楽々であった。ぶーんと名所に行き、くつろいで写真を取る。歩いてそこまで来ている他の観光客を尻目にぶーんと宿まで帰る。楽々道中である。


 尚、高速走行を心配する声があるが、130km/h位は出るので楽勝である。そもそもバイクで120km/h以上出していると疲れる。また、パワーの余力がうんちゃら何て事言ってくる人がいるが、筆者は常に全開にしてないと気が済まないタイプの人間なのでこれで丁度良いのである。

 恐らくバイク乗る人間の半分は筆者と同じタイプで、常にアクセル全開でないと気が済まない人種である。そしてアクセル全開の結末は、罰金である。特にヨーロッパはカメラが多い。最近タイなんかも増えてきた。最近のカメラは高性能で、バイクでも後方からきちんと撮影してきやがる。オマケに車線を跨ぐように運転していてもきっちり映してきやがる。



 成功例その2


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Piaggio Medley 150


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 メットインも大容量

ヨーロッパのスクーターらしく、フロント16インチ、リア14インチである。ヨーロッパは石畳の道が多かったり、カルスト地形で道路が傷みやすいので前後16インチの走破性の高いスクーターが主流であった。しかし後輪まで16インチだとあまりにもメットインの積載性が無くなってしまうので、最近は前だけ16で後ろを14にするのが主流である。

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 風防がないのが難点だが、オプションで用意されている。

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成功例その3

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Piaggio Beverly

このスクーターはいろんなラインナップがあって、旧型の200から、新型の350まである。デザイン的にデカく見えがちだが、実際乗って見ると日本のビッグスクーターよりは大分コンパクトである。


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 トランクも大容量

 このスクーターも前16、後ろ14インチである。但しこちらのモデルは排気量がデカいので、燃費は前者二つには劣る。

 本来筆者はフットボード中央にフレームが走っているタイプはスクーターとしては認めていない。街乗りに使う際、そこに荷物が置けなくなるからだ。スクーターの利便性を殺している。

 しかしツーリング用となると、センターフレームがないモデルは地面のギャップを拾ったりする際の振動がモロに手と腰に響いてくるので、ツーリング用スクーターだけはセンターフレーム有りを認めている。

 そういえばヤマハのN-MAXとかいうのもあったな。

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 センターフレームの部分が高すぎて、これもうスクーターの意味なくね?って感じがするんだよね。ホンダのADVと同じ。これもうシート前全部タンクにしたほうが良いんじゃないの?足の自由度が低いから疲れそうなんだよね。


 以上排便のプロによるバイク指南。



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