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【スポーツ心理学#7】「受け入れる」ことはストレスを軽減させる

ストレスマネジメントの方法や理論は、主に臨床心理学や一般心理学の世界で発展してきました。

時代の変化に合わせて、効果的だと考えられた理論や方法もまた変わってきました。

近年、ストレスや不安に対する方法や理論で研究が重ねられているのが、「受け入れる」(受容:acceptance)という心理状態です。


数年前から日本でも認知され始めたマインドフルネス(mindfulness)に含まれている3つのコンセプトの1つが「受け入れる」という感覚です。ちなみに残りの2つは、「判断・評価をしない: non-judgmental」と「今この瞬間: being in the present」です。

他にも、2000年初頭から研究され始めたAcceptance-Commitment Therapy(ACT)と呼ばれる心理療法でも、「受け入れる」という感覚が重要になってきます。


なぜ、「受け入れる」のか?

受け入れる事は、良くも悪くもありのままに事実や出来事を認識するので、そこに余計なストレスがかかりにくい事がメリットです。


そもそも人がストレスを感じるのは、目の前の出来事と自分の期待にギャップがある事で生じます。それはいい事と悪い事の両方に言えます。

雨が降って欲しくないと思っているのに雨が降れば、起きて欲しくない事が怒っているのでネガティブなストレスを感じることになります。

反対に「ポジティブなストレス」は想像しにくいかもしれませんが、普段褒めてくれない先生から予期せぬタイミングで褒められる事も、ある意味でストレスがかかっています。


これに対して、「ありのまま起きた事を受け入れる」という認識の中には良いも悪いも存在していません。

そもそも目の前の出来事に対してそこまで期待が無いので、起きた出来事と自分の抱く期待のギャップも小さくなります。

その結果ストレスがかかりにくい、という認知プロセスです。


ACTをケガをしたアスリートにするとしたら、

 ・「ケガをした」という事実を受け入れる。その時に「ケガしたからスキルが落ちる」といった判断は持たないようにする。

 ・ケガをしたという事実を受け入れたら、その上で自分が出来る事を考え、その出来る事を実行する。

といった具合になります。


このように言葉にするとそこまで複雑なコンセプトではありませんが、いざ「受け入れる」という考え方を身につけるのは、なかなか難しく、時間がかかります。

この記事を読んだすぐにする事はそこまで難しくなくても、習慣的にあらゆる出来事をありのまま受け入れるよう捉えるのは一定期間繰り返し意識して初めて出来るようになります。


取り組んで習得する上での課題はあるものの、やはり「受け入れる」という心理状態はストレス軽減には効果が期待出来ます。

まずは一日、そして次の日、その次の日は上手く出来なくても、その翌日改めて出来た、といった具合に出来ない日も含めて長期的に取り組んで身につけるようにしてみて下さい。

早川琢也 / Takuya "Tak" Hayakawa


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