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「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場 2014.04.28・05.05 Vol.72 2/2 2014-06-01 22:25:42
日経ビジネスの特集記事 Vol.72
「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場 2014.04.28・05.05 Vol.72 2/2 2014-06-01 22:25:42
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
今週号の特集記事のテーマは
円高が是正され、中国などの新興国のコスト高が進んだことで、生産を国内に戻す動きが広がりつつあることと、従来の資本や取引関係とは違う「知」のケイレツを構築し、モノ作り全体の底上げをしようという試みが始まった
ということです。
PART2 ケイレツは「血」より「知」
知のケイレツ CASE1 三菱化学
北九州市黒崎地区が舞台です。
今、ここで地元の人たちしか知らない変化が起きています。
黒崎地区とはどのような地域で、そこで何が起こっているなのか、
日経ビジネスのリポートで確かめてみましょう。
北九州市黒崎地区は、三菱化学黒崎事業所によって九州有数の企業城下町として栄えたエリアだ。
筑豊炭田のお膝元で、石炭を原料にした化学製品を生産してきた。
1990年代初頭から、主力だった汎用品の生産は海外工場への移管が進んだ。
生産量は減少し、従業員は60年代に比べて5分の1ほどになった。
p.035
つまり、昔日の面影は感じられないのです。
そんな黒崎事業所内に、真っ白な高い建物が完成間近になっています。
日経ビジネスに掲載されている写真を見ると、周囲には錆びついた設備や空き地が点在しています。
この白い建物は、「半導体向け洗浄剤で世界シェア70%を占めるステラケミファの新工場だ」(p.035)そうです。
普通に考えれば、三菱化学とステラケミファは系列企業ということになりますね。ところがそうではなかったのです。
三菱化学とステラケミファに資本関係はない。
少量の取引はあるものの、「ケイレツ」と呼ばれるような密接な関係はない。それでも、三菱化学はステラケミファを積極的に誘致した。
p.035
製造業で長年にわたって行われてきた「ケイレツ(すでに英語化されています 注:藤巻)」に基づく誘致ではなかったのです。
三菱化学はどんな意図を持って、ステラケミファを積極的に誘致したのか気にかかります。
その真意は、こんなところにありました。
進出企業との関係構築により目指しているのは、単なる遊休地の活用ではない。
黒崎事業所は虎の子であるR&D(研究開発)部門を生かし、技術やノウハウといった「知」を軸に結び付いた「知のケイレツ」を作ろうとしている。
p.036
![](https://assets.st-note.com/img/1685370949720-JeeF1ro0jE.png)
「血」より「知」を重視したということになります。従来の「ケイレツ」による取引では、上流企業が下流企業(下請け企業)に発注するという一方向
だけのモノの流れでした。
単に製造コストを考えただけの関係でした。上流企業が下流企業へ「コストの下げ圧力」を強めれば、そのままで済んでいました。
現在では、日本企業は中国や韓国企業にコスト面で太刀打ち出来なくなっています。
三菱化学が「知のケイレツ」を通じて目指したことは、次のようなことだったのです。
知のケイレツには、資本関係や商流に基づき長期間固定した上下関係は存在しない。
業種や規模が違う企業が知財やアイデア、ノウハウを通じてつながり、人材の活発な交流が新たなイノベーションを生む。
p.036
経営資源と言えば、ヒト、モノ、カネ、情報、時間、さらにノウハウなどが挙げられます。
この6つの経営資源に共通する言葉は何でしょう?
私の考えでは「流れ」です。
人流(社内の異動、入社・退社)
物流(A地点からB地点へ移す)
金流(売買におけるお金のやり取り、給与の支給と
受取など)
情報流(情報は流れるから価値を生む)
時間(刻々と変化し、止まることはない)
ノウハウ(継承されていかなければ宝の持ち腐れ)
三菱化学は従来のケイレツという仕組みの中では、新しいものは生み出されないと考えたのではないか、と私は思います。
異質なものが交流することによって、化学変化を起こそうとしている、と私は考えました。
そうした試みによってイノベーションを起こそうとしていると考えたのです。
知のケイレツ CASE2 今治タオル
今治タオルについて見たり聞いたりしたことはありますか?
愛媛県今治市はタオルの生産地として知られていました。
しかし、海外勢の低価格品の輸入が急増し、今治のタオル産業は危機に瀕していました。
そこで、危機意識を共有する同業者同士が生き残りを賭けて、知恵を絞り、考えだしたのが「知のケイレツ」だったのです。
今でこそ「今治タオル」というブランドに統一していますが、四国タオル工業組合が、「今治タオル」のブランド基準を作ったことがきっかけとなったそうです。2007年のことでした。
ユニクロやセブン-イレブンなどのブランド力向上に力を発揮している、「デザイナーの佐藤可士和氏にも協力を仰ぎ、内外の目で今治製タオルの強みを分析した」(p.039)そうです。
「ライバル同士で技を教え合い、基準を満たすタオルを作り始めた」(p.039)ことで、四国のタオル産業に大きな波を起こしたのです。
切磋琢磨するだけではなく、自分に厳しさを求めるという姿勢が高品質を維持する動機づけになっているのでしょう。
タオル会社・オリムの野口忠氏は「自分たちで自分たちに厳しくしている。それこそが今治が生きる道」と言う。
こうした厳しさは、親睦を目的とした一般の業界団体と一線を画す。
政府への不満を漏らしていたかつての四国タオル工業組合の姿とも異なる。
p.039
![](https://assets.st-note.com/img/1685370994487-RJOp8Lb2z4.png)
「血」より「知」を重視したケイレツが、他業界にまで広がるかどうかは定かではありませんが、従来通りの考え方や、やり方に固執していては、生き残ることは難しいかもしれません。
それは、企業だけにあてはまることではなく、個人レベルでもあてはまることです。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-06-01 22:25:42)のものです。加筆修正してあります。
「知のケイレツ」がキーワードでした。
日経ビジネスは過去にもキャッチーなキーワードやキーセンテンスを生み出してきました。
例えば、「会社の寿命は30年」があります。日経ビジネスが1983年に唱えた説です。
この意味は、会社の死ということではなく、勢いを失っていくということです。もちろん、さらに悪い方向へ進んでいけば、倒産という企業の死に至ることさえあります。
当時は会社の寿命は30年だったかもしれませんが、現在ではもっと短くなっているようです。
東京商工リサーチが、2022年に倒産した企業6,428件(負債1,000万円以上)のうち、創業年月が不明の779件を除く5,649件の平均寿命を算出・分析した「倒産企業の平均寿命」に関する調査によると、日本企業の平均寿命は「23.3年」であることがわかった。
最近では、ケイレツ外しの流れが加速しているように思います。
ケイレツという仕組みの中で長期にわたって事業を続けていると、緊張感が薄れてくるだけでなく、ライバル社との競争意識が減退し、「井の中の蛙」になったり「ゆでガエル現象」に陥ることさえあります。
そうした状況が続くと、衰退していきます。
ケイレツ関係が長年続いたことによって、日本企業からダイナミズムが失われてきたのです。
危機感を抱いた経営者はケイレツ関係を飛び越えて、本当に技術力のある企業との強固な協力関係を築き、ライバル企業との戦いに勝てる体質に作り変えていくことを志向しているのです。
もはやライバル企業は日本国内にはなく、海外にあると考えたほうが正しいでしょう。
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