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「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場 2014.04.28・05.05 Vol.71 1/2  2014-06-01 22:11:57

日経ビジネスの特集記事 Vol.71

「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場 2014.04.28・05.05 Vol.71 1/2 2014-06-01 22:11:57

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>


今週号の特集記事のテーマは

円高が是正され、中国などの新興国のコスト高が進んだことで、生産を国内に戻す動きが広がりつつあることと、従来の資本や取引関係とは違う「知」のケイレツを構築し、モノ作り全体の底上げをしようという試みが始まった

ということです。

キャノンの御手洗富士夫(みたらい・ふじお)CEO(最高経営責任者)は、今年初めの全社方針説明会で、次のように宣言しました。

「国内生産比率を5割に戻す――」

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その真意はこうでした。

御手洗CEO曰く、リーマンショック後に生産を海外へ移転したのは、急激な円高に対応するための緊急避難だった。

それを通常の生産体制に戻す。 

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さらに、こう続けました。

「日本の工場は自律的な成長ができるが、海外ではまだ難しい。1ドル=100円なら日本で作る」と断言する。

理由は人材のレベルだ。

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「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場 
2014.04.28・05.05


ただ、製造拠点を国内に戻すだけで、勝ち残ることはできるのでしょうか?

ボストン・コンサルティング・グループの太田直樹シニアパートナーは次のように語っています。

「日本の製造業が競争力を維持するには、これまでよりも一步踏み込んだ付加価値向上への取り組みが欠かせない」

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では、今後、日本は何で戦うのかという質問に対して、日経ビジネスは、
キーワードは「知」だ、と答えています。

知を軸に結びついた企業連携、すなわち「知のケイレツ」が生産現場にイノベーションを生み出す。

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PART 1 中国に勝つモノ作りの逆襲

中国をはじめとする新興国に打ち勝つためにどうしたら良いのか、を考えるのに適した2社のケースを見ていくことにしましょう。

新日鉄住金マツダです。

新日鉄住金 古さを生かす

日本の高度経済成長期には、「鉄は国家なり」とか「鉄は産業のコメ」と言われました。

鉄鋼業界は、自動車業界とともに鉄鋼生産によって日本の成長を支えてきました。

しかし、今やアジアでは、中国や韓国などの鉄鋼メーカーの後塵を拝しています。

ただ、中国は成長に伴う「痛み」を抱えています。中国ではPM2.5などの有害物質が社会問題を引き起こしています。日本が辿ってきた姿と重なる
ものです。

新日鉄住金の八幡製鉄所が舞台になります。ここには110年にわたって使われ続けている修繕工場があるそうです。

110年にわたって国内生産を続けてきた八幡の原動力になっているのは、開所当時の設備であっても、いまだに改修をしながら使い続ける「古さ」と、最新技術の融合だ。

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これほどに長期にわたって使われている設備は他にあるのでしょうか?

これほど古い設備を使い続けているのは世界でも珍しい。理由の一つが、巨額投資を抑制し、効率や品質を大きく左右する高炉などの設備へ集中的に資金を投じることにある。

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高炉を新規に建設する場合と改修では、どれくらいの違いがあると思いますか?

想像がつかないですよね?

数ある製鉄設備の中で最も投資が大きいのが高炉だ。新設には1000億円かかると言われるが、八幡の高炉改修費用は約340億円。改修を重ねて使い続ける方が、アジアで更地から製鉄所を造るよりもはるかに安い。

しかも、新日鉄住金が長い歴史とともに蓄積してきた改修技術によって、改修後の高炉は世界最高水準の生産効率と品質を実現する。 

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110年にわたってノウハウの蓄積があるので、新興国の追随を許さない地位を築いていることになります。

「知のケイレツ」を育んできたと言えます。

強い工場の条件についても書かれています。

「強い工場の条件の一つが、歴史があること。つまり古いことだ」と東京大学の松原宏教授は指摘する。設備の償却が終わっている上、操業や修繕などのノウハウの蓄積がある。

地域と育んできた人材によるところも大きい。

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こうして長年にわたってノウハウを蓄積してきた結果、高業績を上げるようになりました。

新日鉄住金は2014年3月期に、経常利益で世界最大手の欧州アルセロール・ミタルや中韓勢を抑えてトップに立つ見通し。

八幡の改修により、収益力がより強まる可能性がある。

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(注:新日鉄住金は2014年3月期業績見通し、
ポスコと宝山鋼鉄は2013年12月期実績。
会計基準の違いにより、新日鉄住金は売上高経常利益率 出所:各社資料から作成)
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マツダ 工場が開発する

「スカイアクティブテクノロジー」によって、低燃費と高出力を両立させたクルマの開発に成功したマツダは、勝ち残るために「知のケイレツ」化を推進しています。

先日、トヨタ自動車は世界生産台数が1000万台を超えた、と発表しました。

一方、規模の小さなマツダはトヨタ自動車と同じ戦略をとっていては、勝ち残ることはできません。

そこで、考えだされたのは、「生産ラインの効率追求をやめる」ことでした。試行錯誤の末に決断したことだ、と推測します。

2008年からは、生産技術部門の新入社員をまず開発部門へ3年間預けた後に、戻して配属させるなど、人事交流も活発にした。「生産技術と開発が同じ土俵で話すことで、新しいモノ作りが見えてきた」
(菖蒲田清孝・常務執行役員)。

「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場 2014.04.28・05.05
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知のケイレツ化が進むと、好循環を生み出すようです。

マツダの2013年の国内生産台数は96万台で、トヨタ自動車の3分の1にすぎない。

輸出が8割を占め、為替に左右されやすい面はある。

だが、仮に再び円高が襲っても「最低でも85万台の国内生産は維持できる」と山内孝会長は言う。

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「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場 2014.04.28・05.05


新日鉄住金もマツダも勝ち残るために、「知のケイレツ」化を進め、独自の戦略を打ちたて、愚直に実践することが大切であるということを教えている、と感じました。


次回は、

「PART2 ケイレツは『血』より『知』」


をお伝えします。


🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-06-01 22:11:57)のものです。加筆修正してあります。

2023年に入り、鉄鋼業界は長きにわたる雌伏の時代を過ぎ、復活の息吹が感じられるようになってきました。

「鉄は国家なり」「産業のコメ」などと言われてきた鉄鋼でしたが、主要取引先である自動車業界の厳しい要求に屈してきました。

しかし、遂にトヨタをはじめ、自動車業界に鉄鋼の値上げを認めさせたのです。

このあたりの経緯は下記の記事の中で解説しています。



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