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【回想録 由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い 第51回】

🔷 「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(4)を掲載します。🔷

 『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)
2016年1月25日 発行 
著者   藤巻 隆 
発行所  ブイツーソリューション

 ✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第51回)✍

「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(4)を掲載します。


入院

由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録(4)

入院 十三日目(八月二日 日曜日)

 午前中、由美子の最後の給料をサークルK舞岡町店へ受け取りに行ったが、店長に反故(ほご)にされた。私は怒った。従業員に店長を呼び出させ、一時間後に店頭で給料の支払いを確約させた。二度手間となった。

 十四時二十分頃、正彦さんが見舞いに来た。兄妹だけで話をさせよう、と一瞬思ったが、その場に立ち会った。由美子は今までの経緯を正彦さんに語った。「乳がん」になったことも。私は、正彦さんに最後まで「手遅れ」であることを伝えることができなかった。

 「体重が八キロ減って、三十六キロになった。頬がコケ、喉が細くなった。おばあちゃんみたい」と由美子が呟く。黙って聞いていた。


入院 十四日目(八月三日 月曜日)

 足のマッサージを左右交互に施した。


入院 十五日目(八月四日 火曜日)

 看護師の卵の女の子が看護に来た。由美子の話によると、サークルKのお客さんの娘さんということで、お互いに顔見知りのはずだが、一切そのことに触れなかったということだ。職業に徹しているということだろう。


入院 十六日目(八月五日 水曜日)

 K(M)さんから新潟の「茶豆」が届いたことを由美子に伝える。彼はいつも心遣いの出来る人で感謝している。夜眠れないという由美子の訴えで、睡眠薬が投与された。

(PP.118-119)



➳ 編集後記

第51回は「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(4)を書きました。

サークルKは今ではファミリーマートに代わっています。

由美子の給料支払いの件は、前もって店長に日時を伝えてありました。約束を破ったため、私は怒ったのです。

由美子はこの頃から徐々に意識が混濁し始めました。覚悟はしていましたが、現実を受け入れるということがいかに大変なことなのかを突きつけられました。



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