東レ 勝つまでやり切る経営 2014.10.27 2/3 2014-10-30 18:29:17
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
東レ 勝つまでやり切る経営 2014.10.27 2/3 2014-10-30 18:29:17
CONTENTS
PART 1 最後の 繊維メーカー
未来の教科書に載る 世界一の異業種コラボ ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正氏インタビュー
PART 2 石の上にも50年 執念で生き残る
PART 3 たとえ赤字でも撤退はあり得ない 東レ 日覺昭廣社長インタビュー
PART 4 「深は新なり」に潜むワナ
第2回は、
PART 2 石の上にも50年 執念で生き残る
PART 3 たとえ赤字でも撤退はあり得ない 東レ 日覺昭廣社長インタビュー
を取り上げます。
今週の特集記事のテーマは
今年は、東レにとって記念の一年になる。
会長の榊原定征氏が経団連のトップに就任し、
売上高と営業利益が今期、ともに過去最高となる可能性が高い。
世界最大の総合繊維メーカーとして、誰もが仰ぎ見る存在となった。
強さの源泉は長期的な視点に立った素材開発力にあるが、
従来のやり方だけでは市場の変化についていけない面も見えてきた
(『日経ビジネス』 2014.10.27 号 P. 026)
です。
初回は、「東レが、世界最大の総合繊維メーカーであること」が理解できる内容でした。
2回目は、「東レには、東レの勝利の方程式がある」、ということに注目してご覧ください。
しかも、それは短期的勝利を狙うものではなく、長期的視点に立って勝利を目指すものである、ということです。
PART 2 石の上にも50年 執念で生き残る
「石の上にも三年」ということわざがありますが、「石の上にも50年」という言葉は、聞いたことがありません。
それくらい忍耐強く事業に取り組まなくてはならない、という覚悟を感じさせる言葉ですね。
米ボーイング787の機体に使用された炭素繊維を、乗用車の車体に転用しようという動きが活発化しています。
BMWは、すでに炭素繊維を使用した量産車「i3」を発売しています。
アルミより軽量で、鉄より丈夫な炭素繊維を使用し、車体を作れば、燃費が向上し、商品価値も上がります。
東レは、炭素繊維を使用した試作車を、当社の名古屋事業所の敷地内に建つ、オートモーティブセンター(AMC)に展示しているそうです。
炭素繊維について、解説を読んでみましょう。
BMWが量産車「i3」 に炭素繊維を使用したことで、炭素繊維に注目が集まるきっかけになった、ということです。
世界の乗用車に炭素繊維が使用されるようになると、「目指せ売上高5000億円、いや、1兆円だな」(p. 035)と笑う、複合材料事業本部長の大西盛行・専務も、まんざらではないようです。
前回、東レの歴史の中で、「2006年米ボーイングと炭素繊維 長期供給契約」という注目すべき出来事がありました。
今後は産業用途、特に自動車向けが増える
●炭素繊維の需要推移・予測
炭素繊維が世界中の量産車に使用されれば、市場が拡大する可能性はあります。その規模がどの程度になるかには、不確定要素があります。
ここで、東レの勝利の方程式を概観してみることにしましょう。
ステージ1 用途開発
研究所で開発した先端素材や要素技術の事業化方法を、10年単位で考える
ステージ 2 競合駆逐
先端素材の事業化に成功したら、徹底的なコスト削減と性能向上で競合他社を圧倒する。市場から退場させてシェア増大
ステージ3 最強連合
素材をグローバルに供給できるサプライチェーンを整備。異業種のパートナーと強固な関係を築き、参入障壁を作る
つまり、ブルーオーシャン戦略です。ブルーオーシャン戦略は圧倒的な勝利を収める長期的戦略です。同業他社のみならず、異業種参入も許さない、一人勝ちの戦略です。
ユニクロとは10年以上にわたってパートナーとなり、[ステージ3]最強連合となっています。
東レの凄さは、3つの段階に至るまで、数十年の歳月をかけることをいとわないことです。
『日経ビジネス』取材班の言葉によれば、次のようになります。
それでも、課題は多いということです。高価格と、十分な供給量を確保できるか、という点です。
この問題に対処するため、東レはM&A(合併・買収)を行いました。
こうした積み重ねによって、強みをさらに強化し、事業を盤石にしていく方針を貫いているのです。
さらに、東レの強さの源泉は、研究開発拠点の充実度にもあると考えられます。
「東レ先端融合研究所」は神奈川県鎌倉市にあるそうです。
鎌倉市は、工場というよりも企業が少ない自治体ですから、これは市をアピールする材料になるでしょう。
「東レ先端融合研究所」をよくご覧ください。「総合」研究所ではありません。「融合」研究所です。
この名称が、この研究所の特徴をよく示しています。
次の言葉が東レの特長を物語っている、と思います。
PART 3 たとえ赤字でも撤退はあり得ない 東レ 日覺昭廣社長インタビュー
このパートでは日覺 昭廣社長へのインタビュー内容を一気にご紹介します(抜粋)。
日覺 昭廣(にっかく・あきひろ)氏 [東レ社長]
今回の編集長インタビューは、特集「東レ 勝つまでやり切る経営」のPART3として構成されています。
その意味で、通常号のインタビューとは異なります。
東レと言いますと、すぐに思い浮かぶのは、ユニクロ(ファーストリテイリング)との事業提携です。
『ヒートテック』は、東レと共同開発した素材で、革新的です。
少し古い話ですが、ユニクロの柳井正会長兼社長が、『柳井正の希望を持とう』(柳井正 朝日新書 2011年6月30日 第1刷)の中で、『ヒートテック』について書いています。
日覺社長は、東レの裏打ちされた実績を背景に、強気な発言が多かったですね。
技術力と、その技術を生かす市場を的確に見据える目が備わっている、ということでしょう。あるいは技術力によって、新しい市場を創造できる、と考えているのかもしれません。
また、日覺社長は、「小さくてもキラリと光るものがあればいい」とも話しています。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という言葉に近いでしょうか。
これらの言葉は人間にも当てはまります。
「小さく産んで大きく育てる」という言葉も産業界ではよく使われます。
ですが、ことは簡単ではありません。
人間でも同じですが、大きく育てる(もちろん、身体だけを言っているのではありません)ためには、重要な点があります。
育てる側には、育て抜く強い意思と、根気がなければなりません。
一方、本人には「ひとかどの人間」になろうとする向上心・向学心と行動が不可欠です。
育てる側、本人のどちらかが、「もうこれでいい」と思って気を緩めてしまえば、その瞬間に成長は止まります。本気度が試されることになります。
「長い目で見る」度量が必要ですが、東レにはありそうです。人材が人財に育つのを待つ余裕を感じました。
それにしても、日覺社長の考え方=現在の東レの戦略は凄いですね。
「有望だと確信すれば、数十年待つこともいとわない」というブレない方針は、様子見をし、同じ行動をとりがちな日本企業にあって、特異な存在だ、
と思いました。
「市場が存在し続ける限りは、撤退なんてあり得ません」と言う日覺社長の自信に満ちた言葉に、東レの先端技術は廃れることはない、と確信しました。
そして、トップに危機意識があるところに、重要なポイントがある、と思いました。
「勝って兜の緒を締めよ」といったところでしょうか。
油断してはいけないこと、「成功の復讐」に遭遇しないことを常に意識しているからだ、と思います。
この特集記事の最終回は、
PART 4 「深は新なり」に潜むワナ
をお伝えします。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-10-30 18:29:17)のことでした。
大幅に加筆修正しました。
現在でも東レについて知っている人はあまりいないかもしれません。
東レと言えば、航空機の機体や自動車のボディなどに使われている炭素繊維が有名です。炭素繊維は軽量で強度が強い素材です。
今回の記事に掲載されているようにファーストリテイリング(ファーストリ)と組んで、高機能・高価値繊維を製造しています。
ユニクロの「ヒートテック」や「エアリズム」は多くの方がお持ちかと思います。
フリースが爆売れしたことは記憶に新しいことです。
「どんな相手が入ってきたとしても、東レと我々が運命共同体であることは変わらない。それだけの信頼関係を10年かけて築き上げてきた」(p. 033)
と柳井さんは述べていますが、お互いをベストパートナーと考えていることが分かります。
日覺社長の「市場が存在し続ける限りは、撤退なんてあり得ません」という強い意志と執念のようなものを感じました。
決してあきらめないという精神は東レの中に綿々と受け継がれてきました。
東レは強く逞しい企業です。株式に関して言えばもっと高く評価されてよいと思っています。
今回読み返してみて、鎌倉市に「東レ先端融合研究所」があることを思い出しました。
私は横浜市に住んでいますので、鎌倉市は隣の市です。鎌倉市には神社仏閣が多く、鎌倉の大仏や鎌倉八幡宮、竹林の報国寺、あじさい寺(明月院)等が有名です。
そんな鎌倉に東レが先端融合研究所を設立していたとは。
次のような解説が書かれています。
先端融合研究所は、バイオテクノロジーおよびナノテクノロジーを中心とした先端的基礎研究を強力に推進していくため、2003年5月に設立され、バイオ生産(バイオマス変換プロセス)、革新的癌免疫治療薬、バイオツール(DNAチップ、多項目タンパク質チップ)、ナノ材料などの研究を行っています。
研究方針
新しい価値の創造のための本質的な先導的研究
外部との連携による研究の視野拡大(異分野融合と自前主義脱却)
自由な発想での研究推進
(7,814 文字)
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