東レ 勝つまでやり切る経営 2014.10.27 1/3 2014-10-29 21:27:29
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
東レ 勝つまでやり切る経営 2014.10.27 1/3 2014-10-29 21:27:29
CONTENTS
PART 1 最後の 繊維メーカー
未来の教科書に載る 世界一の異業種コラボ ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正氏インタビュー
PART 2 石の上にも50年 執念で生き残る
PART 3 たとえ赤字でも撤退はあり得ない 東レ 日覺昭廣社長インタビュー
PART 4 「深は新なり」に潜むワナ
第1回は、
PART 1 最後の 繊維メーカー
未来の教科書に載る 世界一の異業種コラボ ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正氏インタビュー
を取り上げます。
今週の特集記事のテーマは
今年は、東レにとって記念の一年になる。
会長の榊原定征氏が経団連のトップに就任し、
売上高と営業利益が今期、ともに過去最高となる可能性が高い。
世界最大の総合繊維メーカーとして、誰もが仰ぎ見る存在となった。
強さの源泉は長期的な視点に立った素材開発力にあるが、
従来のやり方だけでは市場の変化についていけない面も見えてきた
(『日経ビジネス』 2014.10.27 号 P. 026)
です。
まず下の図表をご覧ください。
売上高・利益共に繊維が基幹事業
●東レの2014年3月期セグメント別業績
連結売上高 1兆8,378億円 (15.4%増)
連結営業利益 1,053億円 (26.1%増)
営業利益 売上高構成比
[繊維] 529億円 41.1%
[プラスチック・ケミカル] 180億 25.6
[情報通信材料・機器] 246億 13.4
[環境・エンジニアリング] 64億 9.8
[炭素繊維複合材料] 169億 6.2
[ライフサイエンス] 56億 3.2
[その他] 20億 0.7
● 東レの2014年3月期セグメント別業績
この数字を見れば、東レは繊維関連の事業で稼いでいることが分かります。
[繊維]+[炭素繊維複合材料]=698億円(連結営業利益)<E>
連結営業利益の構成比で、<E>は実に66.3%(698÷1053×100)を占めます。
東レが世界最大の総合繊維メーカーである、ということを頭に入れておいてください。
PART 1 最後の 繊維メーカー
マレーシアにある東レの衣料用繊維生産・販売子会社、ペンファブリックが紹介されています。
一体どんな位置付けなのでしょうか?
「アクアリアム(水族館)」という名称の部屋で商談している風景が描写されています。
つまり、ペンファブリックは生産・販売がその場でできる「流行の発信基地」になっているのです。
しかも、顧客の要望する製品がペンファブリックの5000点に及ぶサンプルにない場合でも、市場性があると判断されれば、製造することもできるそうです。
東レについて、『日経ビジネス』取材班は次のように解説しています。
これを読むと、東レが世界最大の総合繊維メーカーであることがよく分かります。
次の図表をご覧ください。
東レが繊維業界の「巨人」であることが、一目瞭然です。
東レは繊維事業で圧倒的な“一人勝ち”
●東レと主な合成繊維メーカーとの営業利益比較
ペンファブリックの話に戻りますが、日覺昭廣(にっかく・あきひろ)社長は、ペンファブリックについて、次のように語っています。
ここで、東レの歴史を振り返ってみましょう。
七転び八起きが88年間続いたそうです。
『日経ビジネス』の記事に基づいて、七転び八起きを再現してみます。
[一転] 1963~67年頃 日米繊維貿易摩擦
[ニ転] 1971~72年頃 ニクソン・ショック
[三転] 1973~77年頃 石油危機
[四転] 1983~85年頃 プラザ合意
[五転] 1991~95年頃 バブル経済崩壊
[六転] 1997~2001年頃 アジア通貨危機
[七転] 2007~09年頃 リーマンショック
[八起き!] 2014年(予想)
七転び八起きが続いた88年間
●東レの業績と主な出来事
この88年間に注目すべき点があります。
1967年 ツイッギーでナイロンPR
1968年 水処理膜開発開始
1970年 東レ(元東洋レーヨン)に社名変更
1971年 炭素繊維生産開始
1987~97年(社長)、2002~04年(CEO)
前田勝之助氏が事業立て直し
2003年 ファーストリテイリング(ユニクロ)と
機能性肌着「ヒートテック」を共同開発
2006年 米ボーイングと炭素繊維長期供給契約
「水処理膜開発」や「炭素繊維生産」は、40年以上前から始まっています。
日覺さんが、「有望だと確信すれば、数十年待つこともいとわない」と言う、東レのブレない方針が実を結んでいる、と言えます。
「小さく産んで大きく育てる」ということなのでしょう。
じっくり育てるという精神です。
長年の研究に裏打ちされた技術力と、製品の市場性を見据える目がなければ、不可能なことです。
ファーストリテイリング(ユニクロやGU)と協業を開始した経緯について、ご紹介しましょう。
柳井さんも前田さんも、お互いに大人物だ、と思います。
「私は、『ユニクロの専門部署を社長、もしくは会長直轄で作ってほしい』とお願いした」(p. 032)という、柳井さんの思い切った申し出だったのです。
柳井さんは、いくら自信があるとはいえ、相当度胸が据わっていなければできない、大胆な申し出をしたのです。
一方、前田さんは、相手がたとえ“格下”であっても、柳井さんの真剣さと、経営者の器の大きさを認めることができたのです。
これまた器の大きな人物だったからでしょう。
プロの経営者同士が、認め合ったと推測できます。
当初は、お互いにお手並み拝見といった風情であったかもしれませんが。
ここで注目すべき点は、東レとユニクロは合弁会社を設立したわけではない、ということです。
あくまで業務提携です。
その理由は、
「両社のトップが共に『運命共同体』と言うほど緊密な関係だが、常に緊張感が漂うパートナー同士で」(p. 032)あり続けたい、と考えているからです。
未来の教科書に載る 世界一の異業種コラボ ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正氏インタビュー
柳井さんは、東レとのパートナーシップについて、インタビューでこう述べています。
柳井さんは、上記のように語った後、さらに注目すべき発言をしました。
ここまで、一歩も二歩も踏み込んだ発言をしたことはないかもしれません。
少なくとも、こうした発言を見聞きしたのは、私は初めてのことでした。
次回は、
PART 2 石の上にも50年 執念で生き残る
をお伝えします。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-10-29 21:27:29)のことでした。
大幅に加筆修正しました。
現在でも東レについて知っている人はあまりいないかもしれません。
東レと言えば、航空機の機体や自動車のボディなどに使われている炭素繊維が有名です。炭素繊維は軽量で強度が強い素材です。
今回の記事に掲載されているようにファーストリテイリング(ファーストリ)と組んで、高機能・高価値繊維を製造しています。
ユニクロの「ヒートテック」や「エアリズム」は多くの方がお持ちかと思います。
フリースが爆売れしたことは記憶に新しいことです。
「どんな相手が入ってきたとしても、東レと我々が運命共同体であることは変わらない。それだけの信頼関係を10年かけて築き上げてきた」(p. 033)
と柳井さんは述べていますが、お互いをベストパートナーと考えていることが分かります。
この記事が掲載されてから9年が経った現在の東レとファーストリの企業業績を見てみましょう。
ただし、ここでは東レがテーマですので詳細データは東レをメインとします。
まず、東レから。
🔴2024年3月期の業績予想は増収減益です。厳しい状況にあります。
次に売上構成等を見てみましょう。
繊維事業の売上構成比は40.14%ということが分かります。機能化成品は36.53%で、炭素繊維複合材料は11.32%です。この3事業で約88%を占めています。
この9年で炭素繊維複合材料の売上が大きく伸びたことが分かります。
東レの公式ウェブサイトからデータを引用します。
事業別売上と利益
東レの主要事業分野
次にファーストリ。
🔴2024年8月期の業績予想は増収増益です。2020年8月期から毎期増収増益を続けています。
とりわけ、2023年8月期が売上高・営業利益・経常利益・最終利益・最終1株益のすべてで過去最高でしたが、2024年8月期は更新予想が出ています。
東レとファーストリを比較してみます。
決算期は前社が3月で、後社は8月です。
東レの予想では売上高と最終利益、最終1株利益の3項目しか出ていませんので、ファーストリもそれらの3項目を表記します(単位:百万円)。
売上高 最終利益 最終1株利益
東レ 2,540,000 71,000 44.3
ファーストリ 3,050,000 310,000 1,010.9
時価総額を比較しますと、
東レが1兆1,804億円に対し、ファーストリは11兆2,141億円です。
ファーストリは東レの約10倍です。
業種が異なるので、一概には言えませんが、時価総額で大差が出ています。
(6,042 文字)
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