![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141619248/rectangle_large_type_2_ff23524f228356b4f0d178749054c001.jpeg?width=800)
ものづくりの未来を変える GEの破壊力 3/3 2014.12.22
ものづくりの未来を変える GEの破壊力 3/3 2014.12.22
CONTENTS
序章 共闘する2人の巨人 全産業を変革する
GE会長CEO ジェフ・イメルト/ソフトバンク社長 孫 正義
PART 1 製造業を激変させる 3つの切り札
PART 2 人こそ変革の原動力 企業哲学まで刷新
PART 3 日本企業にも好機 GEを使い倒せ
ジェフ・イメルト会長兼CEOインタビュー
パンチを繰り出し続ける
今週の特集記事のテーマは
絶え間ない自己改革で世界の産業界に君臨してきた米ゼネラル・エレクトリック(GE)。
そのGEにして、今彼らが挑んでいる変化こそ、過去最大と言っても過言ではないだろう。
インターネットとソフトウェアによる、抜本的なものづくりの刷新。
30万人の社員にスタートアップ精神を植え付けるため、企業哲学さえも変えた。
座して製造業の覇権を奪われるくらいなら、自ら破壊者になる
(『日経ビジネス』 2014.12.22 号 p.028)
です。
![](https://assets.st-note.com/img/1716478976965-ujoslTJzbu.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1716478977034-uRIOqXDuGk.png)
(『日経ビジネス』 2014.12.22 号 pp.028-029)
第1回は、
「序章 共闘する2人の巨人 全産業を変革する」
を取り上げました。
第2回は、
「PART 1 製造業を激変させる3つの切り札」
を取り上げました。
最終回は、
「PART 2 人こそ変革の原動力 企業哲学まで刷新」
「PART 3 日本企業にも好機 GEを使い倒せ」
「ジェフ・イメルト会長兼CEOインタビュー」
をご紹介します。
今特集記事のキーワードの一つは、
インダストリアル・インターネット
です。
IoT(モノのインターネット)という言葉が、最近の流行語かと思っていましたが、イメルト氏はその先を構想していたのです。
間違いです。構想ではなく、すでに着手していたのです。
PART2では、GEの真の財産である、「人財」の育成について取り上げています。
GEにおいては、従業員の教育システムは、昨日今日に始まったわけではなく、長い歴史があります。
決して「付け焼き刃」の教育ではありません。
PART 2 人こそ変革の原動力 企業哲学まで刷新
GEの強さはどこにあるのでしょうか?
今まで、多くの学者が研究してきました。
ものづくりのための仕組みができている。
財務基盤がしっかりしている。
経営トップがずば抜けて優れている・・・
この他に、リーダーの育成システムが確立していることも見逃せません。
P・F・ドラッカーは『ネクスト・ソサエティ』の中で、ジェフ・イメルト氏の前任者であった、ジャック・ウェルチ氏について語っていた個所で、GEの優れている点を指摘しています。
GEでは、1920年代に近代的な財務戦略を確立していた。30年代には人材育成の観点からの人事戦略を確立していた。
上田惇生 訳 ダイヤモンド社 p. 135)
「日経ビジネス」は、社員数約30万人の巨大企業GEが、なぜ「常識を破壊するような変革を加速できるのか」(p. 038)という秘密に迫っています。
秘密はGEのリーダーを育てる力にある。
リーダーたちの意識を変え、トップの考えを末端まで浸透させる仕組みこそ競争力の源泉だ。
「GEのリーダーは、経営トップの生の声を聞き、会社が何を目指しているのかを徹底的にシャワーのように浴びる。そんな強烈な伝達システムが存在する」。
こう語るのは日本のGEキャピタルで社長兼CEO (最高経営責任者)を務める安渕聖司氏だ。三菱商事、外資系投資ファンドなどで30年近く働いた後、2006年にGEに入社した。
![](https://assets.st-note.com/img/1716479779846-5KVoMJiY01.png)
直接語りかけ、変革を浸透させる
(『日経ビジネス』 2014.12.22 号 p. 038)
米ニューヨーク州クロトンビルにGEの人材育成の中核拠点「リーダーシップ開発研究所」があることは、広く知られています。
そこに、「イメルトCEOは月に2~3回足を運び、経営幹部に直接語りかける」(p. 039)そうです。
GEのリーダーには「3分の1の時間をトレーニングや評価など人材育成に割かなければならない」というルールがある。リーダーは研修で学んだことを部下に伝えて、変革に巻き込む。
GEにおいては、リーダーの仕事は、部下の管理だけではありません。また、自分の担当する仕事をこなすだけではすみません。
部下の育成が大きな仕事なのですね。
そして、部下を育てたことが評価の対象となるのです。
手柄は独り占めし、失敗の責任は部下に転嫁するどこかの企業とは、一線を画します。
GEがすごい会社であることは他にもあります。
企業文化(コーポレート・カルチャー)さえも変革してしまうのです。
GEは企業文化そのものにもメスを入れている。GEの社員が重視すべき価値として知られる「GEグロースバリュー」。
「明確で分かりやすい思考」 「想像力と勇気」「専門性」といったGEの優秀なリーダーが共通して持つ5つの特徴で、社員はそれらを体現することを求められてきた。
だが、インダストリアル・インターネットやファストワークスで、ビジネスや働き方が変化する中で、GEは、社員が重視する価値観も変えなければならないと考えるに至った。
こうして2014年に生まれたのが「GEビリーフス」だ。ビリーフは信念という意味で、「バリュー=価値よりも、人々の内面に入り込んで、自分自身のものにできるパワフルな言葉だから選んだ」(イメルトCEO)。
価値観を変えて人を動かす
●GEの社員が重視すべき5つの価値
![](https://assets.st-note.com/img/1716703313257-5qSjFS3pNE.png)
5つのキーワードがあるそうです。
1つ目はお客様に選ばれる存在であり続ける
2つ目はより速く、だからシンプルに
3つ目は試すことで学び、勝利につなげる
4つ目は信頼して任せ、互いに高め合う
最後はどんな環境でも勝ちにこだわる
イメルトCEOがやろうとしていることは、次のことです。時間がかかることです。
経営手法を変え、企業文化を変え、人も変える。イメルトCEOは130年以上の歴史がある巨大企業を土台から創り直そうとしている。
これが実現できた時、イメルト氏はGEの歴史に輝かしい1ページを刻むことになりましょう。そして、「名経営者」と呼ばれることになります。
GEにとって「最優秀製品」とは何か、についてGEのリーダー育成担当副社長のラグー・クリシュナムーシー氏は次のように語っています。
意外と言いますか、これまでの流れから推察すると必然とも言えそうです。
GEの最優秀製品は何かと問われると「リーダーシップ」だ。ジェフリー・イメルトCEOだけでなく、何万人もの優れたリーダーたちが、社内で変革を加速し、会社の成長を牽引している。
GEの企業文化の特徴は、常に変化していることだ。大企業でも非常にスピード感がある。
ファストワークスでは顧客が何を求めているかにフォーカスして、商品やサービスを迅速かつ継続的に進化させる。
変革の原動力となるのは、やはりリーダーたちだ。
GEの社員が重視すべき価値である「GEバリュー(価値)」 を「GEビリーフス(信念)」に変更したのは、経営手法だけでなく、社員の意識も変えることが重要だからだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1716708026552-Py2nXgWoJp.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1716708117137-QaI8tBWZg5.png)
PART 3 日本企業にも好機 GEを使い倒せ
PART2まで、GEの強さの源泉や、変革を浸透させようとする、全社的
取り組みについてお伝えしてきました。
このような考え方や仕組みは、日本企業にも導入できないのか、と思いますよね?
そんな取り組みの例をご紹介します。
例によって次の図表をご覧ください。8社が掲載されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1716708268742-Z5wpeTUWlq.png)
基本的には、主要部品(ハード)の開発・製造・販売で提携しています。
ソフトバンクだけは、序章でお伝えしましたように、インダストリアル・インターネット用ソフトの外販で提携しています。
GEが日本企業に期待を寄せる理由は、どこにあるのでしょうか?
技術力もさることながら、実は日本社会の深刻な問題とも関連しています。
GEが日本に期待するのは技術だけではない。
「他の先進国に先駆けてエネルギー不足や高齢化問題に直面する日本は、“世界の実験室”だ。GEにとって極めて重要な市場であり続ける」。
GEのジェフ・イメルトCEO (最高経営責任者)はこう断言する。
日本GEの熊谷昭彦・社長兼CEOは次のように語っています。
「我々が担うのは、成熟市場でGEが成長を続けるためのロールモデルになること。そして、日本の技術革新を世界に発信することだ」。
GEは自社の強みを抱え込むことなく、社外に広めることにも熱心なのは評価に値することだ、と思います。
自前主義とは無縁
●GEが世界から公募する技術分野と具体例
![](https://assets.st-note.com/img/1716708713910-w4TcwSiyG3.png)
ジェフ・イメルト会長兼CEOインタビュー
パンチを繰り出し続ける
ここでは、インタビューの中でイメルトCEOが語った、とりわけ印象的な言葉を選択して、ご紹介していきます。
断片的な表現になるかもしれませんが、ご了承ください。
![](https://assets.st-note.com/img/1716709259933-CYUX3STfB9.png)
(写真=竹井 俊晴)
![](https://assets.st-note.com/img/1716709367053-YwMJWELR3f.png?width=800)
かつて我々は、GEがソフトウェアやデータ解析の企業になるとは夢にも思いませんでした。
今は違います。様々な機械からデータが集まり、製品の持てる力を最大限に生かせる環境があるのですから、GEもデータ解析能力を高める必要がある。私は5年ほど前にそう考えるようになり、データ解析に多額の投資をしてきました。
ソーシャルメディアの世界では、消費者同士がつながることで莫大な価値が生まれます。
一方、インダストリアル・インターネットの価値は、タービンや油田プラント、医療機器、航空機エンジンが互いにつながることで得られる、産業に関する深い洞察です。
新しいアイデアを顧客に示し、生産性の向上によって生まれる利益を共有する。それがGEの重要な役割だと考えています。
デジタル時代になり、多くの人はものづくりがどれほど大変なのかを忘れてしまっています。
ジェットエンジンや火力発電のタービンを作るのは本当に難しいのに、それに対して十分な敬意が払われていない。
逆にGEの立場からすれば、機械を進化させるのと並行して、データ解析の能力を磨くことで、世界をリードできるチャンスが生まれます。
データ解析だけを手掛ける企業はありますが、機械のことを深く理解していないケースも少なくない。実際に様々なハードを作っていることが、GEの競争優位性になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1716710458763-ckgWJQlY7s.png)
先日、電気自動車を手掛ける米テスラ・モーターズCEO (最高経営責任者)のイーロン・マスク氏が同様の発言をしていました。「実際にクルマを作るのがいかに大変かを人々は十分に理解していない」と。
私は彼とも面識がありますが、全く同感です。
しかし同時に、産業機器メーカーが未来を切り開く唯一の道は、ハードを提供するだけでなく、ソフトを活用し、膨大な情報を解析できる企業になることです。
私は心からそう信じており、これから何が起きようとも、この方針にコミットしていくつもりです。
カギとなるのは、変化を加速させるリーダーシップです。GEの全てのリーダーが変革に参加し、その活動を支援できるようにする必要があります。それは、私も例外ではありません。私自身、月に2~3回は、幹部や社員を直接研修で指導しています。
世界の変化に合わせて、GE自身も絶えず進化する必要がある。このため、社員が重視すべきバリュー(価値)も見直すのです。
ビリーフス(信念)はバリューよりももっとパワフルな言葉だと判断しました。「価値」は、何かを判断するような意味合いの言葉ですが、「信念」は人の内面に入り込み、自分自身のものにできる、よりシンプルな概念なのです。
私は企業文化を変えるために重要なポイントが2つあると思っています。ハードとソフトです。
ビジネスの仕組み(ハード)を大きく変える際には、ソフトも変える必要がある。
ビリーフスはソフトに当たり、変化を加速させる際に重要な役割を果たします。
GEにとって日本は極めて重要です。とりわけ強調したいのは、私は日本の将来に対して非常に楽観的であることです。
GEは、様々な課題はチャンスであると考える企業です。課題はソリューション(解決法)を生み出すきっかけになる。日本は高齢化やエネルギー不足など、世界の最も先端的な問題に直面しています。
だからこそ、優れた技術を効率的なエネルギーや医療の低コスト化などに役立てる巨大なチャンスがあるのです。
最大のリスクは、同じ場所に立ち止まったまま、「日本は成長率が下がっている。だから日本を諦めよう」という姿勢です。マクロ的な変化を注視することはもちろん必要ですが、パンチを繰り出し続けるべきです。ですから、私が考える最大のリスクは行動しないことです。
今特集は、非常にボリュームがあり、まとめるのに時間と手間が普段以上にかかりました。
相当圧縮してお伝えしようと努力を重ねましたが、なかなかうまくいきませんでした。
記事を読み進んでいくうちに、「ここも大切だ」「ここは外せないな」「これを入れないと流れがつかめないな」などと考え始め、結局、通常通り3回に分けて投稿しましたが、1回毎のボリュームが通常の2倍から2.5倍くらいになってしまいました。4回以上に分けたくなかったからです。
誰が言ったのか忘れてしまいましたが、「今日は時間がないので、短い文章は書けない」という言葉を、ふと、思い出しました。
(もっとも、私の場合は時間がないからではなく、うまくまとめる能力が乏しいだけだったのですが・・・)
お疲れ様でした。
特に、スマホの場合は読むのが苦痛に感じたかもしれません。PCやタブレット端末でも、頻繁にスクロールしなければなりませんでしたので。
最後まで読んでいただき、本・当・に、ありがとうございました。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、10年前のことで、アメブロでも10年前(2014-12-26 20:08:25)のことでした。
大幅に加筆修正しました。
当時のGEにはまだ勢いがありました。しかし、栄枯盛衰は世の常で、経営トップの経営戦略と現場の実践、社会の変化等によって良くも悪くもなります。
昔のGEは、原発の製造において大きな地位を築いていて、日立製作所に勤務していた大前研一さんは「日本企業は原発の設計は、GEの仕様に従わざるを得なかった」と回顧していました。
大前さんは、早稲田大学理工学部、東京工業大学大学院(修士)、MIT(=米マサチューセッツ工科大学大学院、博士)へと進学し、MITでは原子力工学で博士号を授与されました。原発の専門家で、高速増殖炉もんじゅの設計に携わっていたそうです。
インタビューの中で、次のような一節がありました。
先日、電気自動車を手掛ける米テスラ・モーターズCEO (最高経営責任者)のイーロン・マスク氏が同様の発言をしていました。「実際にクルマを作るのがいかに大変かを人々は十分に理解していない」と。
私は彼とも面識がありますが、全く同感です。
10年前にアメブロに投稿した当時、テスラ・モータースについてもイーロン・マスク氏についても知りませんでしたし、あまり関心を払っていませんでした。まさか今のようにメガカンパニーになるとは夢想だにしませんでした。
GEの現状
![](https://assets.st-note.com/img/1716711597248-icfOYHss42.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1716711682191-q5BKzJF1RJ.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1716712134383-x8ZI98At10.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1716713605066-s8p2q7Ee37.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1716713410402-Wq0ubIP9Oe.png)
直近の5年間の業績推移を見ますと、売上高はあまり増加していません。事業の売却や分社化が関係しているのかもしれません。純利益は大幅な赤字があると思えば、大幅な黒字もあり、年によってかなり業績に波があります。
株価推移を見ますと、右肩上がりの上昇を続けています。
(7,174 文字)
クリエイターのページ
日経ビジネスの特集記事(バックナンバー)
日経ビジネスの特集記事
日経ビジネスのインタビュー(バックナンバー)
5大商社
ゴールドマン・サックスが選んだ七人の侍
サポートしていただけると嬉しいです。 サポートしていただいたお金は、投稿のための資料購入代金に充てさせていただきます。