シン・ニッポンの経営者 2023.01.09 3/3
日経ビジネスの特集記事 54
シン・ニッポンの経営者 2023.01.09 3/3
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
「シン」という形容詞がつくタイトルを時々見ますね。
「シン・ゴジラ」という映画のタイトルに使われてからでしょうか?
今週号のテーマは
「今、ニッポンの経営は変わりつつあり、新タイプの経営者が出現してきている」
というものです。
CONTENTS
PROLOGUE 危機に歯止めをかけた3人衆 圧倒的なやり抜く力果敢に事業を再構築
PART 1 古びた経営をつくり直す「個の力」 欧米に学び、殻を破る リスクを取る新世代
PART 2 「オールドニッポン」も続々復活 100年企業にも改革者 危機が促す大転換
INTERVIEW 岡本准・KPMG FAS執行役員パートナーに聞く 「低成長・低収益」事業はベストオーナーへ
若林秀樹・東京理科大学大学院教授に聞く 事業は「製品サイクルと台数」で見極めを
PART 3 シン・ニッポンの経営者のつくり方 社長の器は仕組み次第 理念に従い、針路を示せ
第3回は PART 2と INTERVIEW を取りあげます。
PART 3 シン・ニッポンの経営者のつくり方社長の器は仕組み次第 理念に従い、針路を示せ
前回は、「オールドニッポン」と見られる企業の中からも改革を推進する経営者が出現したという話題を取り上げました。改革は「痛み」を伴うものですが、それを恐れていてはトップとしての責任を果たしたことにはなりません。現状では「あなた」しかいないのです。腹をくくって、決断する覚悟が欠かせません。
最終回は、「シン・ニッポンの経営者のつくり方」について取り上げます。「シン・ニッポンの経営者」は放っておけば自然に出現すると考えるのはあまりに楽観すぎます。
やはり、経営陣が「シン・ニッポンの経営者」に相応しい人物を抜擢し、育てていかなければなりません。それが現経営陣の責務です。
最近、時々目にする略語があります。VUCA(ブーカ)です。
VUCAとは?
VUCAをもう少し詳しく定義しますと、次のようになります。
では、このVUCAがシン・ニッポンの経営者のつくり方とどう繋がっていくかを見てみましょう。
社長を鍛える
つまり、ただ社長を育てるのではなく、鍛えるということです。
東証プライムに上場しているLIXILグループの「お家騒動」を例にとって、日経ビジネスは社長を鍛える仕組みについて解説しています。
LIXILグループの「お家騒動」
外部から新しい血を入れると、創業家と争いが勃発する、というよくあるケースです。こうした争いは従業員や株主にとっては迷惑なことです。
仕組みで社長を鍛える 「お家騒動」後の信用回復へ 外部の元経営者が規定見直し
こうした事態に陥った原因は、「トップ選任などに関わるガバナンスの仕組みを整備しきれなかったこと」(p.027)にあると、日経ビジネスは断定しています。
そこで第三者を外部から招聘し規定の見直しに取り掛かりました。
具体的に行なったことは次の図表をご覧ください。
こうした取り組みが奏功し、「騒動から約4年、LIXILのガバナンスに対する評価は徐々に高まりつつあるという」(p.027)ことです。
日経ビジネスは次のように結論づけています。
一件落着といったところでしょうが、LIXILグループにとっては厳しい教訓になったことでしょう。
サンクゼールのケース
サンクゼールという企業名を見聞きしたことがありますか?
サンクゼールは2022年12月21日に東証グロース市場に上場した企業です。
久世福商店という名前なら聞いたり、利用したことのある人もあるでしょう。私も利用したことがあります。小瓶入りの「ジャム(あまおう)」と、同じく小瓶入りの「こしあんバター」を買いました。美味しかったですが、少量なのですぐになくなってしまいました。
この企業の株主構成を見てみましょう。すぐに気がつくことがあります。
大株主の多くが久世家に関わる人たちで構成されていることです。
日経ビジネスの記事に戻りましょう。
現社長の久世良太氏は2代目です。ただし、「久世氏はもともと、セイコーエプソンで携帯電話の液晶ディスプレーの開発などに携わるエンジニアだった」(p.028)そうです。
その当時の経験が現在に生きています。
久世社長の前職での経験が生きる
具体策(1)指名・報酬委員会の設置 透明性や客観性の担保
具体策(2)ビジョンをリポートで提出、360度評価
現在、日本企業で360度評価を実施しているところはどのくらいあるでしょうか? あまり聞いたことがありません。
360度評価とは?
360度評価のメリットとデメリット
サンクゼールが中期経営計画を策定する際に確認すべきこと
最初から完全なものなどありません。問題が発生した時にいかに迅速にかつ的確な判断を下し、対策を打つには、トップのコミットメントが問われます。
企業理念を最優先に その事業に存在意義はあるのか ブレない軸が競争力の源泉
企業理念や経営の規律を徹底的に追求すること
経営者には2種類あります。オーナー経営者とサラリーマン経営者です。
どう違うのかと言えば、オーナー経営者は経営者であり所有者(筆頭株主であることが多い)です。そのため自分の判断で経営していくことができ、長期にわたってトップに君臨することができます。
オーナー経営者は、例えば、ユニクロやGUを運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長やNIDEC(旧日本電産)の永守重信代表取締役会長兼最高経営責任者、あるいはソフトバンクグループの孫正義代表取締役会長兼社長などがそうです。
サラリーマン経営者は、肩書は確かに代表取締役社長兼CEOといったものになりますが、自社株をほとんど保有していません。つまり大株主ではありません。ですから実権を握っているとは言えません。大株主によって代表取締役解任動議を発動されたら対抗できません。即座に解任されてしまいます。
さらには任期が短いため(長くても6年ほど)、思い切ったチャレンジができないといった点もあるでしょう。オーナー経営者は数十年と比較すれば違いは明らかです。
昔、私は1年にも満たない期間でしたが、サラリーマン社長(雇われ社長)に就任したことがあります。
元の企業が破綻したため、新会社を設立し、破綻した企業の社長の代わりに私が社長に就任しました。役員報酬は0円でした。ボランティアでした。
新会社も事業としてほとんど機能ぜず、私は退任し退職しました。
社長という肩書は、まったくもって形式的なものに過ぎませんでした。何の権限もありませんでした。影武者のような存在だったと言うほうが正しいでしょう。
常にわが身を見つめ直さなければならない
オムロンのケース
子会社の売却か存続かの判断
子会社の売却で腹をくくる
コア事業(中核となる事業)とのシナジーが期待できるかどうかが判断材料
最終的には、「車載事業を日本電産(現NIDEC:注 藤巻)に約1000億円で売却し」(p.031)たのです。
売却して得た資金は「成長領域と位置付けたヘルスケア事業」に充てたのです。
ヘルスケア事業はオムロンのコア事業とのシナジーが得られる領域です。
未来から逆算した長期経営
世の中のルールの激変やゲームチェンジが行われる中で、まず生き残るためには何を優先したらよいのかを考えることで、自ずと解決策は導かれてくる、と私は考えています。
<日経ビジネスの見解> ポートフォリオを絶えず更新する努力が経営者に求められる
🔷編集後記
今週号は、シン・ニッポンの経営者とはどんな経営者なのだろうかというテーマで、シン・ニッポンの経営者と呼ぶに相応しい人物に光を当てて紹介しています。
30年余にわたって日本は低迷の時代を続けてきましたが、今年になりようやく日本の技術力やビジネスモデルが世界で見直される時がやってきたと実感しています。
世界が日本企業の底力に気づくのが遅すぎたくらいに感じています。
いやそれだけではありません。日本のメディアも日本人自身も日本企業のポテンシャルの大きさに気づいていなかった、と私は思っています。
卑屈になっていたのです。縮こまっていたのです。柔軟性を失っていたのです。もっと両手を広げて(ストレッチ)大きく伸びをしましょう!
日本人はもっと誇りを持って良いと思っています!
ウォーレン・バフェット効果と言われる、海外機関投資家による日本株の買い(日本企業の復活を示す現象)が賑わい、日本株の見直しが行われています。日本株は割安に放置されてきたと気づいたのです。一時的な流行に終わらせないためには、日本企業の改革が不可欠です。
経営者も従業員もマインドセットを変える必要があるでしょう。
シン・ニッポンの経営者が日本企業を改革する原動力となり、国内外で「日本復活」を印象づけることが期待されています。
今は無名でも、若き経営者に世界に通じる企業を育てて欲しいと切に願っています。
岸田内閣は、AIや半導体など日本の将来を大きく左右する産業に対し、莫大な投資を行なっていくことになるでしょう。
「日本は必ず復活できる!」と確信しています。
日経ビジネスはビジネス週刊誌です。日経ビジネスを発行しているのは日経BP社です。日本経済新聞社の子会社です。
日経ビジネスは、日経BP社の記者が独自の取材を敢行し、記事にしています。親会社の日本経済新聞ではしがらみがあり、そこまで書けない事実でも取り上げることが、しばしばあります。
日経ビジネスは日本経済新聞をライバル視しているのではないかとさえ思っています。
もちろん、雑誌と新聞とでは、同一のテーマでも取り扱い方が異なるという点はあるかもしれません。
新聞と比べ、雑誌では一つのテーマを深掘りし、ページを割くことが出来るという点で優位性があると考えています。
【『日経ビジネス』の特集記事 】 No.54
⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所や重要と考えた個所を抜粋しました。
⭐ Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。
⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
(プロフィールから)
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