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堀 紘一 名言集 『リーダーシップの本質』(11)

『リーダーシップの本質 真のリーダーシップとは何か』(11)


 『リーダーシップの本質』(初版 2003年6月26日 ダイヤモンド社)は、堀 紘一氏が満を持して上梓した優れたビジネス書です。

 略歴は著者紹介に譲るとして、堀 紘一氏はボストンコンサルティンググループ日本法人代表、ドリームインキュベータ創業者となり東京証券取引所に上場させた、単なる経営コンサルタントではありません。

 優れたビジネス書を数多く執筆しています。


社長の仕事はつねに全体最適ということを考え、あらゆる決定をしなければならない。

 
 社長の仕事はつねに全体最適ということを考え、あらゆる決定をしなければならない。ところが部長は一部門の長だから、部門最適を考えながら仕事をする。営業部長だった人が、製造部門のことも研究開発のこともすべて考え、そのバランスをとっていかなければいけなくなる。
 会社の将来を考えて全体のバランスを変えることも当然あり得る。そのとき彼は、そのことで社員全員が納得するよう説得しなければいけない。縮小される部門は当然強硬に反対するだろう。その抵抗を打ち破って、会社を進むべき方向に引っ張っていかなければいけない。
 これまでいろいろな会社を見てきた経験からいえば、これからの日本の大企業では、若いときに子会社の社長を経験させてから、本社の社長にしていくやり方が、社長を育てる方法としては一番いいと思う。

『リーダーシップの本質』 堀 紘一の名言 1 <31>     



組織とは何か。組織が成り立つためには、二つの条件を満たす必要がある
第一の条件は、これを構成する人間が三人以上いることである
第二の条件は、目的を持つということである

 
 組織とは何か。組織が成り立つためには、二つの条件を満たす必要がある
 第一の条件は、これを構成する人間が三人以上いることである。会社は二人でもつくれるが、一対一の関係は集団となる以前の形態であり、この関係を超えて初めて、組織としての共通性も生まれてくる。
 第二の条件は、目的を持つということである。もともと組織とは、何かをするという目的を達成するための人が集まり、体制を整えるものである。

『リーダーシップの本質』 堀 紘一の名言 2 <32>     



これからは、企業自身が「わが社は何のために存在しているのか」と企業目的を意識、確認し、自問する時代になるだろう

 
 これからは、企業自身が「わが社は何のために存在しているのか」と企業目的を意識、確認し、自問する時代になるだろう
 同じように、企業に就職を希望する学生の基準にも変化が現れてくるだろう。勤務時間はどれくらいか、給料は高いか安いかという、いわば刹那的な条件よりも、企業の目的を選択の条件として重視し始める。
 「このように素晴らしい目的をもったいない会社なら、ぜひ参加して仕事をしたい」「そういう社会的に意味のない事業をしている会社には入りたくない」といった具合に、企業も企業に入る人も、ともに企業目的の有無、その内容の是非にこだわる時代が来るだろう。

『リーダーシップの本質』 堀 紘一の名言 3 <33>     



✍ 編集後記

🔶  『リーダーシップの本質』は堀氏の経歴に違わない内容の本です。重要な点は「本質」です。すぐに廃れてしまうハウツーものとは根本的に違います。

私たちは新奇さに目を奪われることなく、常に「本質」とは何かに着目する姿勢を貫きたいですね。

勉強は一生続けることが大切です。世の中は常に進歩しているのですから。劇的な変化にも予兆はあります。感度の良いアンテナを張り、見逃し、聞き逃ししないようにしましょう!

何歳でも、何歳からでも勉強はできます。書籍を手許に置いておけば、いつでも何度でも参照することができます。

「この本は良書だ」と思ったらその1冊の本を何度も読み返すことが重要です。

一度読んだくらいですぐに理解できたという著書は、中身は大したことはないと判断するべきでしょう。「韋編三絶」という言葉がありますね。


🔷 「社長の仕事はつねに全体最適ということを考え、あらゆる決定をしなければならない

この言葉で思い出すことがあります。
サラリーマン人生で、20年近くと最も長く在籍した会社で体験したことです。

すでにその会社は消滅しています。
洋書や洋雑誌を輸入卸する会社でした。他に国内の出版社から外国語関係の書籍や雑誌も仕入れていました。

取り扱っていた商品は、海外から直輸入したReader' DigestやTIME、Newsweek、ELLEなどの雑誌やBantamやPenguin、Random Houseなどの洋書でした。

Amazonが日本に上陸するまでは商売は順調に推移していました。

その会社の創業者が高齢になったため、後継者を決定しなければならなくなりました。社内には後継者候補が何人かいたはずでしたが、その中からは選ばず、息子を後継者に指名しました。

その人は、東京大学経済学部を卒業後、三菱商事のロンドン支店に勤務していました。彼は、父親の会社を引き継ぐことを長い間固辞していましたが、最終的には引き受けました。

後継者になったことが彼と会社の運命を決めたのです。
結果的に、彼は一部門の責任者にはなれても、小さくても会社全体を司る社長には相応しくなかったのです。

私が言うのははばかれることですが、残念ながら、社長の器ではありませんでした。

マーケットは日本国内にあるのに、販売に熱意が感じられず、年中海外出張していました。米国や英国、ドイツ、フランスなどに出かけていました。

それらの国々には、確かに当社が輸入している本や雑誌の出版社がありました。それらの出版社との関係を良好に保つことは大事ですが、当社は仕入れる側です。販売先ではありません。

トーハンや日販などの取次や、紀伊國屋や丸善、三省堂、有隣堂などの全国の書店に卸すのが本業でした。後継社長は販売先との関係を密にすることにはあまり熱心ではありませんでした。

私は入社以来、経理部門に在籍し、日常業務から決算業務に至るまで一通り担当していました。そのため、当社の業績が年々悪化していくことを目の当たりにしました。

経理部には国内経理(販売と仕入)と外国経理(仕入)の2つの部門がありました。

私は、直属の上司(取締経理部長)と最終的な決算業務を毎年行っていました。決算書の作成と各種資料の作成も担当していました。

会社は年々売上が減少し、このままでは単独では生き残れなくなりました。
そこで、同業他社と合併することになりました。同業他社のほうが規模が小さかったのですが、小が大を飲み込む合併となりました。

つまり対等合併ではなく、吸収合併となりました。
合併後、私は経理部門を解かれ、商品管理部門へ左遷されました。

新たな経営陣は、会社の裏表を把握している私が邪魔になったため、島流しをしたのでした。左遷から1年半が過ぎた頃、会社都合で解雇されました。

退職後、3年ほど後にその会社は破綻しました。
日本の洋書業界の地図が書き換えられることになりました。


✔ 出典元

『リーダーシップの本質 真のリーダーシップとは何か』

2003年6月26日 第1刷発行 ダイヤモンド社



✒ 堀 紘一氏の略歴

ドリームインキュベータ代表取締役社長。

1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業。ハーバード大学大学院経営学修士(MBA with High Distinction)。読売新聞、三菱商事、ボストンコンサルティンググループ(BCG)社長を経て、2000年にドリームインキュベータ(DI)創業。

BCG時代には、金融、ハイテク、消費財、Eコマース、中期戦略など数多くの戦略策定及び実行を支援。

『知恵は金なり』『強い会社はこうしてつくれ』『成功する頭の使い方』(PHP研究所)、『人と違うことをやれ!』『どんな「壁」でも突破できる』(三笠書房)、『挑戦! 夢があるからビジネスだ』『脱皮できない蛇は死ぬ』(プレジデント社)、『できることから始めよう!』(ダイヤモンド社)、『ホワイトカラー改造計画』『21世紀の企業システム』(朝日出版社)など著書多数。

(『リーダーシップの本質』の著者紹介から)


✒ 堀 紘一氏の略歴補足

2020年に堀氏はDIの取締役を退任し、DIは電通の傘下となりました。

近況は下記をご覧ください。

「セカンドライフ」を謳歌しているようです。



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