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堀 紘一 名言集 『コンサルティングとは何か』(3)




堀 紘一 名言集 『コンサルティングとは何か』(3)

『コンサルティングとは何か』(2011年5月10日 第1版第1刷発行 PHP研究所)は、堀紘一氏が戦略コンサルティングの第一人者として、コンサルティングについて余すところなく書き綴った、優れた書籍です。

略歴は著者紹介に譲るとして、堀 紘一氏はボストンコンサルティンググループ日本法人代表、ドリームインキュベータ(DI)創業者となり東京証券取引所に上場させました。単なる戦略コンサルタントではありません。

DIは現在電通グループ(電通G)の傘下にあり(電通GがDIの株式を20.95%保有しています。 2022年9月30日現在)、堀氏は代表取締役を退任されています。

著名な経営者と「経営の本質」を議論し獲得した知見は類まれなものです。

優れたビジネス書を数多く執筆しています。難しい言葉は極力排除し、エピソードを交え、誰にでもわかるように解説しています。

本当に優秀な人は、難しい内容を平易な言葉を用い、誰にでもわかるように説明できる人です。堀紘一氏はまさにそんな人です。

*<>は堀紘一氏の書籍で、このコーナーで紹介した書籍の中の名言の通し番号です。1冊の中の通し番号ではありません。



¶ 私もさまざまな企業を見てきたが、当時のホンダのトップは、日本的なサラリーマン経営者とは考え方が全く違っていた。日本的な考え方で伸びた会社の代表がトヨタとパナソニックなら、日本にあって非日本的な価値観で伸びた会社の代表がホンダと言える

 今でもつくづく思うのだが、こうした先見性が、ホンダという会社のすごいところだ。私もさまざまな企業を見てきたが、当時のホンダのトップは、日本的なサラリーマン経営者とは考え方が全く違っていた。日本的な考え方で伸びた会社の代表がトヨタとパナソニックなら、日本にあって非日本的な価値観で伸びた会社の代表がホンダと言える。ソニーは一見外国風だが、中身は実に和風な「しょうゆ味」の会社である。
 BCGに入社してから三年間、私の時間の三分の二は、このホンダのコンサルティングに充てられた。アメリカに半年以上滞在して、ホンダのオートバイ販売戦略を作ったこともあった。オープンしたてのBCGロスアンゼルス事務所の創業メンバーでもあったのだ。
 そして、その間私は、クライアントであるホンダから、ハーバードのものとも、BCGのもとも違う、ホンダの経営学、「ホンダイズム」を教わることになった。 

『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言1<160>
 


¶ 首位の座を狙うと宣言し、大規模な攻勢をかけてくるヤマハに対して危機感を抱いたホンダは、ヤマハを叩きのめすために我々BCGを雇ったのである

 当時、ホンダはヤマハと、二輪車のシェア一位の座をめぐって壮絶な戦いを繰り広げていた。世に言う、「HY戦争」である。
 首位の座を狙うと宣言し、大規模な攻勢をかけてくるヤマハに対して危機感を抱いたホンダは、ヤマハを叩きのめすために我々BCGを雇ったのである
 ホンダの二代目社長・河島喜好氏からの命令は、まさに「激烈」とでも言うしかないものだった。
 一、ヤマハを赤字で無配の会社に転落させる
 二、子会社の一社か二社を倒産させる
 三、向こう十年間はホンダの尻尾を踏むのも怖くて何もできない会社にする
 四、そのために多少の無茶も厭わないし、金に糸目はつけない
 この方針の下、ホンダと我々はそれこと無数の戦略を立案していった。 

『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言2<161> 


¶ ホンダの経営学に接することで、ハーバードで学んだ経営学、BCGで身につけた経営学の上に、ホンダの経営学を踏まえた独自のコンサルティング・スタイルを確立することができた

 戦略コンサルティングの理論はアメリカで確立されたものだが、それがそのまま日本で通用するものかどうかはまだ未知数だった。そういった時代にホンダの経営学に接することで、ハーバードで学んだ経営学、BCGで身につけた経営学の上に、ホンダの経営学を踏まえた独自のコンサルティング・スタイルを確立することができたからだ。言うなれば、私のコンサルティングは日米合作、少々大げさな言い方を許していただければ、「太平洋にまたがるコンサルティング」だ。

    『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言3<162> 


✔ 出典元

『コンサルティングとは何か』
2011年5月10日 第1版第1刷発行 PHP研究所


✍ 編集後記

🔶  『コンサルティングとは何か』は堀氏の経歴に違わない内容の本です。堀紘一氏が執筆したすべての書籍の底流に流れているのは、まさに「本質」です。

すぐに廃れてしまうハウツーものとは根本的に違います。

私たちは新奇さに目を奪われることなく、常に「本質」とは何かに着目する姿勢を貫きたいですね。

勉強は一生続けることが大切です。世の中は常に進歩しているのですから。劇的な変化にも必ず「予兆」はあります。感度の良いアンテナを張り、見逃し、聞き逃ししないようにしましょう!

「まだ若いし時間があるからまだいいや」とか「高齢だからもう勉強はしなくていい」という考え方は改めた方が良いです。

勉強は一生を通じて行なうことです。もちろん、読書だけが勉強ではありません。いろいろなことを経験するのも勉強です。

失敗から学ぶことはたくさんあります。失敗は経験したからです。チャレンジしたから失敗したのです。失敗したくなければ何もしないことです。
しかし、それでは何事もなしえません。

書籍は手許に置いておけば、いつでも何度でも参照することができます。
自分で「ここは重要だな」と思った個所に色鉛筆で線を引くとか、付箋を貼るとかしておけば、後で読み返した時、「当時はこんな個所に着目したのだな」と思い出すことができます。

逆に、見落としていた個所や、当時は重要と思っていなかった事柄が重要なポイントだったと気づくこともあります。

「この本は良書だ」と思ったらその本を何度も読み返すことが重要です。

一度読んだくらいですぐに理解できたという著書は、中身は大したことはないと判断するべきでしょう。「韋編三絶」という言葉がありますね。

私がnoteに「名言集」を投稿するのは、ごく一部を切り取って紹介するのではなく、その言葉はどのような文脈で発せられたのかが重要だと考えているため、関連した個所もできるだけ紹介するようにしています。

そして、投稿する際に、堀紘一氏をはじめ、数多の著名な人物の書籍を再読する機会を得ることが私にとって有益だと考えています。

なぜなら、最初に読んだ当時と、年を取ってから再読した時を比較すると、「気づき=重要な点」が異なると思ったことが何度もあったからです。

速読ですぐに読めてしまうような本は中身が薄いと思っています。
例えば、哲学書が速読で理解できますか? じっくり考えながら読まなければ理解のための手がかりさえ見つけることはできないと考えています。

つまり、速読できる本とできない本があると考えています。


🔷「ホンダの経営学に接することで、ハーバードで学んだ経営学、BCGで身につけた経営学の上に、ホンダの経営学を踏まえた独自のコンサルティング・スタイルを確立することができた」

私たち一般人や外部の人たちがホンダに抱くイメージや、経営評論家が示すデータとは大きく異なり、ホンダの内部に入り、経営戦略を立案した堀紘一さんの見解は目を見張るものです。

体験者だからこそ「語れる内容」であり、私たち外部の人間に「実像」を手に取るように提供してくれるのです。

時には内部に奥深く入り込みすぎて、「実像」を見失ってしまうこともよくありますが、堀さんに対しては杞憂であることを証明しています。


🔶「はじめに」にこんなエピソードが記されていました。

 私は、ハーバード在学中の二年間、それこそ毎日休みなく勉強に励んだ。その努力が、ハーバード三〇〇年の歴史の中で、日本人初の金バッジの栄誉へとつながったかと思うと、感慨もひとしおだった。
 ちなみに、ベイカー・スカラーの名は、ハーバードに多額の寄付をしているベイカー氏への謝意を表している。図書館もベイカー・ライブラリーと呼ばれている。東大に多額の寄付をした安田財閥の名を取って、安田講堂と呼ばれているようなものだ。
 晩餐会のさなか、私は二年前に言われたビショップ教授の言葉を噛み締めるように思い出していた。教授は、私をからかったわけでも何でもなかった。「君は最高の学問をしている」という言葉の意味が、「何が問題か」を定義することがビジネスの世界では最も重要な問題であるということが、今の私にははっきりとわかる。そして、教授を訪ねたまさにあのとき、私は深い学びの場にいたということも……。

 『コンサルティングとは何か』堀紘一 
pp. 6-7 

✒ 堀 紘一氏の略歴

ドリームインキュベータ代表取締役会長。
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、1973年から三菱商事に勤務。

ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction (Baker Scholar)を取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。

1989年より同社代表取締役社長。

2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行なうドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。

同社を2005年9月、東証1部(現・東証プライム:注 藤巻隆)に上場させる。

2006年6月、同社会長に就任。

主な著者に、『世界連鎖恐慌の犯人』(PHP研究所)、『突破力』『「真のリーダー」になる条件』(以上、PHPビジネス新書)、『人と違うことをやれ!』『30代から大きく伸びる人の勉強法』(以上、PHP文庫)、『一流の人は空気を読まない』(角川 one テーマ21)、『新版 リーダーシップの本質』(ダイヤモンド社)、『ホワイトカラー改造計画』『「心の時代」の企業革新』『21世紀の企業システム』(以上、朝日文庫)、『一番いいのはサラリーマン』(扶桑社文庫)など多数。
(『コンサルティングとは何か』の著者紹介から)


✒ 堀 紘一氏の略歴補足

2020年に堀氏はDIの取締役を退任し、DIは電通の傘下となりました。
近況は下記をご覧ください。
「セカンドライフ」を謳歌しているようです。



⭐出典元: 『コンサルティングとは何か』



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