「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか 2014.09.08 3/3 2014-09-14 18:01:28
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか 2014.09.08 3/3 2014-09-14 18:01:28
CONTENTS
PART 1 「失敗」を糧に捲土重来を期す
PART 2 経営者が陥る5つの「罠」
PART 3 新たなリスクに立ち向かう
第3回は、
PART 2 経営者が陥る5つの「罠」の後半
PART 3 新たなリスクに立ち向かう
を取り上げます。
今週の特集記事のテーマは
成功は偶然の産物だが、失敗は同じことをすれば
繰り返す。
「暴走」「執着」「隠蔽」「忘却」「慢心」。
過去の事例を振り返り、五つの「敗軍」の法則を
導き出した。
次への一步を踏み出す時ほど、冷静な判断が必要。
今こそ、過去の失敗に学び、前進する時だ
です。
『日経ビジネス』に、長寿コラム「敗軍の将、兵を語る」があります。
「敗軍の将、兵を語らず」という言葉がありますが、あえて敗軍の将に兵を
語らせるという趣向のコラムになっています。
約四十年にわたる連載の中から導き出されたのが、「暴走」「執着」「隠蔽」「忘却」「慢心」の五つの「罠」でした。
これら五つの「罠」の詳細はPART2でご紹介します。
PART 2 経営者が陥る5つの「罠」の後半
日経ビジネスが「経営者が陥る5つの『罠』」と名付けたのは、
法則1「暴走」
法則2「執着」
法則3「隠蔽」
法則4「忘却」
法則5「慢心」
です。
この5つに共通するものは、人の心の問題です。結局、最後は人の問題であることが分かります。
どんなに完璧に構築されているように見えるシステム(仕組み)でも、そのシステムを運用する人によって問題は必ず発生します。
人間は実に弱いものだ、とつくづく思います。
前回は、5つのうち、
法則1「暴走」
法則2「執着」
法則3「隠蔽」
の3つを取り上げました。
今回は、残りの
法則4「忘却」
法則5「慢心」
の2つを取り上げます。
法則4「忘却」
人間には、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という性があります。
ある意味では、人間である以上どうしようもないことなのかもしれません。
但し、個人の問題で済めば、大きな問題に発展することは少ないかもしれませんが、こと組織や企業ぐるみとなると、話は違います。
「忘却」という体質は、連鎖します。そして、重大な事故につながります。そのことを肝に銘じておく必要があります。
もっとも、その気持ちが喪失しているからこそ、「忘却」となるのです。
責任の所在が曖昧という点も見逃せません。
「上司や同僚がやっているから、俺もやってもいいのだ」という意識が
「忘却」を駆り立てます。
Jリーグの浦和レッズのサポーターが、2010年5月15日に外国人選手に対して差別的な暴言を吐いた事件を起こしました。
その約4年後、今年3月8日に浦和レッズのホームグラウンド、埼玉スタジアムで「JAPANESE ONLY」と記した横断幕が掲げられ、外国人排斥とも受け取れるメッセージに、Jリーグは事態を重く見て、リーグ史上初の無観客試合を制裁として科しました。
対戦チームにとっても迷惑な話ですね。
さらに厄介なことは、同様の問題が繰り返されたことです。
日経ビジネスは、なぜ差別的行為が繰り返されるのか、浦和レッズの渕田敬三社長に問いました。渕田社長の回答は次の通りでした。
この回答に、記者は納得せず、再発防止策策を聞きたいと促したそうです。それに対して、渕田社長は横柄な態度を改めず、こう発言したそうです。
記者と渕田社長の一問一答は下記のとおりです。
この一問一答から判断すると、渕田社長は相当感情的になっていて、記者の質問に真摯に答えようとはしていないことが窺えます。
8月23日、Jリーグで再び差別問題が発生しました。
私は横浜F・マリノスが社会人チームの日産自動車の頃からのファンですが、ひとりのマリノスサポーターが、外国人選手に向けてバナナを振りかざしました。
欧州では人種差別問題として大きな問題となっています。
この問題に対し、マリノスの対応は素早かったのです。
事件やトラブルが発生した時、組織のトップがどのような対応をし、再発防止策を具体的に示すかということが重要になります。その後で、それを素早く実行することです。その場しのぎではいけません。
法則5「慢心」
これくらいならいいだろうという「慢心」が大きな事故を起こすのは日常茶飯事です。
これからご紹介するケースも、前回お話した「ハインリッヒの法則」がそのまま当てはまる事柄です。やはり、経験則は生きています。
冷凍食品大手のアクリフーズ(現マルハニチロ)が引き起こした、契約社員が冷凍食品に農薬を混入した事件の背景を次のように述べています。
日経ビジネスは、「『風通し』を良くすることが重要」として、「敗軍」とならないための5つの法則を挙げています。
① 監査・社外役員など「第三の目」を備える
② 主力事業でも大胆に捨てる
③ 社員や役員が相互に監視し合う
④ 「風化」を防ぐ仕組みを二重三重に構築する
⑤ 社外との交流で新たな考え方を吸収
PART 3 新たなリスクに立ち向かう
日経ビジネスは、「早めに問題点を洗い出せる環境作りが重要」だとして、4つのリスクにまとめています。
① 人手不足リスク
② ネット社会リスク
③ 委託・外注リスク
④ 共通化リスク
日経ビジネスが新たなリスクと捉えているのは、まず、「人手不足」です。
牛丼チェーン店「すき家」でワンオペ(ワンオペレーション)が行われてきました。
店員(ほとんどがアルバイト)1名・1時間当たり5000円の売り上げを下回る場合には、1名で店舗を切盛りしなくてはならないという社内ルールです。
このルールのために店員は疲弊していました。退職者が増加し、拡大路線による新店舗増に従業員確保ができなくなっていました。
人手不足は、外食チェーンにとどまらず、航空業界や建設業界でも深刻化しています。
「バイトテロ」という言葉まで飛び出しています。ネット社会リスクです。
こうした措置は根本的な解決にはならない、と私は考えています。
誓約書を書かせようと、根絶させることは容易ではない、と思います。
なぜなら、ツイッターなどのSNSでの反響を面白がる風潮がなくならないからです。
委託・外注リスクとしては、マクドナルドの鶏肉の賞味期限切れの問題と、ベネッセホールディングスの個人情報の流出事件が、その典型です。
「責任までは『委託』できない」という言葉が、すべてを物語っています。責任転嫁することはできない、という意味です。
共通化リスクは、「一部の部品メーカーへの依存度を高めることで、大量調達によるコストダウンを図れる半面、欠陥が見つかった場合の影響は反比例して大きくなる」(p. 045)ということです。
ドライバーや助手席の人を守るはずのエアバッグが、命取りになるかもしれない、という恐ろしい話です。相当、深刻な問題になっていると推測できます。
部品を供給された自動車メーカーがリコール対応に大わらわになるだけでなく、部品を製造したタカタの莫大な損失が生じる可能性が高くなっていま
す。
法則1「暴走」
法則2「執着」
法則3「隠蔽」
法則4「忘却」
法則5「慢心」
の5つの「罠」と、日経ビジネスは捉えましたが、私はこの5つに共通することは「油断」だと思います。危機感の欠如と言い換えても良いかもしれません。
「他山の石」と捉え直すべきです。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-09-14 18:01:28)のことでした。
今回、大幅に加筆修正しました。
多くに事例を紹介してきましたが、これらは9年前のことです。
最近でも、同様な事件が発生しています。
具体的には「寿司テロ」などです。事件を起こした本人は軽い気持ちでしたこともしれませんが、刑事事件・民事事件に問われる可能性があり、仮に刑事事件に問われなくても、民事事件で莫大な損害賠償を請求される恐れがあります。
つまり、9年経っても一向に再発防止策が採られていないことになります。
残念なことです。
今回はリーダーについての話でしたが、無自覚さという点では、リーダーであろうと、そうでなかろうと同じです。責任の重さは異なるでしょうが。
日経ビジネスは、「暴走」「執着」「隠蔽」「忘却」「慢心」の五つの敗軍の法則を取り上げていますが、これらに付け加えるならば、「傲慢」「驕り」です。
権力を持つと、必ずと言っていいほどに「権力必腐|《けんりょくひっぷ》」(権力を持つと必ず腐敗する)に陥ります。人間の弱さでもあります。
自己を律することができなくなります。周りからちやほやされるだけでなく、周囲にイエスマンばかりを配置することで反対意見をシャットアウトしてしまいます。裸の王様です。
企業のトップになる(あがり)と、自分が見えなくなり、自分を律することができなくなり歯止めが利かなくなるのか、あるいは自分は全能の神と思い込むのか、それとも反対するものがいなくなり、独裁者と化すのか。
晩節を汚すことのないようにしてほしいですね。
尚、「敗軍の将、兵を語る」は、現在の日経ビジネスには連載されていません。
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