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盛田昭夫 『21世紀へ』(011)

盛田昭夫 『21世紀へ』(011)

2014年2月7日付の新聞報道によると、ソニーはパソコン事業をファンドに
売却することが、明らかになりました。

パソコン事業は利益を生み出すことが、できなくなったのです。
IBMからパソコン事業を継承した、中国のレノボが世界一のパソコン
メーカーになりました。

それまで世界一のパソコンメーカーだったデルも、かつての勢いは
ありません。

ソニーからVAIOがなくなるのです。悲しむ人は多いことでしょう。
パソコン事業から撤退することに伴い、約5000人が削減されるそうです。

ソニーに限らず、NECもISP(インターネット・サービス・プロ
バイダー)のBiglobeの売却を検討していることが、明らかになりました。

経営トップの最も難しい決断の1つは、事業からの撤退時期です。
赤字を垂れ流している事業は、売却するか、縮小するか、連結決算対象外の会社に分離するか、しかありません。

撤退の時期が遅れれば、本体の命取りにもなりかねません。

ソニーは売却の道を選択しました。
この選択が、後世から見て「正しかった」と、評価してもらいたいものですね。

『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次

はじめに

第1章 経営の原則

第2章 人材の条件

第3章 マーケットの創造

第4章 国際化への試練

第5章 経済活性化の原理

第6章 日米関係への提言

第7章 変革への勇気

第8章 日本国家への期待

第9章 新世界経済秩序の構築

あとがき



第2章 人材の条件

「学歴無用、実力勝負」(1966年)から


ソニーの場合、社内で、文科系の人に理科系の教育を、理科系の人に文科系の教育をしている

 ソニーの場合、社内で、文科系の人に理科系の教育を、理科系の人に文科系の教育をしている。われわれのところにも多くの文科系の人たちがいるが、技術を主体とした会社である以上、文科系の学校を出てきた人でも、ある程度の技術知識を持っていないと仕事がしにくい。

21世紀へ 盛田昭夫 031  p.64         



社員は誰でも、その専門が何であろうとも、経理データを理解する知識を持つべきである

 会社はお金を儲けるのを目的としているのだから、経理数字は会社内の仕事を計る物差しである。だから社員は誰でも、その専門が何であろうとも、経理データを理解する知識を持つべきである。

21世紀へ 盛田昭夫 032  p.64         


新しい、いいと思ったことは実行する勇気が必要である。それはいい考えだとなったら、多少の無理はあってもいいから、それをいかにしてやるかを考える、それがソニーの方針である

 新しい、いいと思ったことは実行する勇気が必要である。ソニーはアイディアがいいといわれるが、じつはアイディアはそれほどずば抜けてよくはないのである。

 アイディアのいい人は世の中にたくさんあるが、いいと思ったアイディアを実行する勇気のある人は少ない。われわれはそれをがむしゃらにやるだけである。

 それはいい考えだとなったら、多少の無理はあってもいいから、それをいかにしてやるかを考える、それがソニーの方針である。

 そして、こういうことのできる人材をわれわれは開発している。企業間の流動性を高めるために、それぞれの経営者が、自分の持っている能力と権限を大いに活かし、それぞれのフィロソフィーにもとづいて広く人材の開発にあたってくださることを望んでやまない。

21世紀へ 盛田昭夫 033  pp.65-6         




盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田さんが、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという悲痛な気持ちが伝わってくる本です。

盛田さんの「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。
盛田さんの慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

アマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられるでしょう。


🔴「新しい、いいと思ったことは実行する勇気が必要である。それはいい考えだとなったら、多少の無理はあってもいいから、それをいかにしてやるかを考える、それがソニーの方針である」

部下にチャンスを与えることのできる上司が社内にいるかいないか、は大きな差です。そもそも個人レベルではなく、チャレンジを後押しする社風(企業文化もほぼ同義)が醸成されているか否かは雲泥の差です。

チャンスを与えるということは、失敗する可能性が当然あるわけです。それでもチャレンジさせることには大いに意義があり、経験したことから学ぶことは多くあります。「失敗から学ぶ」ことができます。

一例を挙げると、あなたも使っているかもしれない「Post-it」の誕生ストーリーが有名ですね。

スリーエムの研究員のスペンサー・シルバーが強力な接着剤を作ろうとしたら、よく付くけれど剥がれてやすい性質を持ったものが出来上がってしまったのです。当初は失敗作と思われていました。

彼は「これが何かに使えないか」と社内中に伝え回ったところ、アート・フライが使えそうだとスペンサーに話しました。

アートは教会で賛美歌を歌う時、挟んでおいたしおりが何度も落ちてしまうため、何か方法はないか考えていたのです。

そして2人はひらめいたのです。その接着剤をしおりの代わりに使おうと思いついたのです。

言うまでもなく、しおりの代わりだけではなく、貼ってはがせるという性質を持つ接着剤を使って「Post-it」が完成しました。

このエピソードは下記のウェブサイトに詳しく紹介されています。


頭で考えただけで実行した時には、想定外のことが次々に発生し、パニックになることもあります。「こんなはずではなかった!」と。

しかし、実行したことが重要なのです。

優秀と言われる人たちの中には、できない理由を並べ立てて実行しない人がいます。失敗を恐れているのです。失敗すると自分の評価が下がることを危惧しているのです。それでは何もできません。

今まで先輩たちがやってきたことをそのまま行ない、安全策を採っているのに過ぎません。それでは進歩がありません。企業は発展していきません。



盛田さんは、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンでもありました。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。
さらに、ここ数十年で業態を変えてきましたね。
ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。
ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。
スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで9年前(2014-07-06 21:31:26)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1  



ソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元



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