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伊藤雅俊の商いのこころ 第9回





伊藤雅俊の商いのこころ 第9回

セブン-イレブンの営業権を取得するまでは、紆余曲折があったようです。伊藤さんは腹が座っていました。

自分のことをペシミストと言っているくらいですから、決断までにはいろいろなことが去来したことでしょう。



私は、迷いに迷った末、最悪の場合、一千億円の損失を覚悟して、神様を拝む気持ちで引き受けることにしました

私は、迷いに迷った末、最悪の場合、一千億円の損失を覚悟して、神様を拝む気持ちで引き受けることにしました。

ヨーカ堂グループのキャッシュフロー(現金収支)から計算して、そこまでならば借金をせずに、自己資金で何とか賄えます。

最悪の想定が現実のものになれば、経営責任は免れませんが、会社が潰れるところまではいかないだろうという計算はありました。

『伊藤雅俊の商いのこころ』 p. 132 



サウスランドの再建は想像以上の苦労の連続でした。何とか格好がついて、これでもう大丈夫と安心できる状態にするまでに十年かかりました

一九九〇年にヨーカ堂とセブン-イレブン・ジャパンが折半で、六百四十億円を投資してサウスランドを買収しました。

分家が本家をのみ込む、ヨーカ堂にとってはじめての本格的な企業買収でした。

サウスランドの再建は想像以上の苦労の連続でした。何とか格好がついて、これでもう大丈夫と安心できる状態にするまでに十年かかりました。

『伊藤雅俊の商いのこころ』 pp. 132-133 



土地や株式さえあれば何でも可能になるような傍若無人の「含み経営」を目の当たりにし、そこから最も距離を置いた経営に徹した私に、迷いがなかったといえば嘘になります

土地や株式さえあれば何でも可能になるような傍若無人の「含み経営」を目の当たりにし、そこから最も距離を置いた経営に徹した私に、迷いがなかったといえば嘘になります。

マスコミは、土地の含み益を基盤にしたダイエーの「ストックの経営」と、本業の利益に立脚したヨーカ堂の「フローの経営」を対比して、その時々で優劣を論じたものですが、財テクがもてはやされ、ピークを迎えていた時代です。

自分の常識が世の中の常識からあまりにもかけ離れてしまったため、経営者として失格なのではないかと不安になったのです。

『伊藤雅俊の商いのこころ』 p. 135 



⭐出典元 『伊藤雅俊の商いのこころ』


➳ 編集後記

この記事を最初にアメブロに投稿したのは、9年前(2014-04-29 22:26:10)のことです。

伊藤雅俊さんは2023年3月10日に逝去しました。享年98歳でした。
ご冥福をお祈りします。


伊藤さんは自分のことを評して「ペシミスト」と語っていますが、経営者は最悪のことを頭に入れてじっくり考え、決断出来たら速やかに実行するという責任があります。それができなければ経営者になるべきではありません。

日本株ストラテジストのピーター・タスカ氏の「賢者は最善を望みながら、最悪を覚悟する」という言葉が蘇ってきました。


🔴「私は、迷いに迷った末、最悪の場合、一千億円の損失を覚悟して、神様を拝む気持ちで引き受けることにしました」

「一千億円の損失」と一口でいうことは簡単ですが、莫大な金額です。
いくら創業家の人物だとしても、失敗したら退任することを覚悟していたことでしょう。

いろいろなことが頭の中を駆け巡ったはずです。

最終的に買収を決断したのは、それでも勝算があると確信が持てたからだと推測します。

サウスランド社との交渉を取りまとめたのは、大手出版取次のトーハン出身の鈴木敏文氏でした。後にセブン&アイ・ホールディングス会長兼最高経営責任者(名誉顧問)となりました。(Wikipedia 「鈴木敏文」より)

(1,616文字)


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