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花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 1/3 2014-10-15 15:33:51




<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 1/3 2014-10-15 15:33:51



CONTENTS

PART 1 「2月4日」の変 役員総辞職ににじむ覚悟

データで見る「逆境の25年」

PART 2 内弁慶、海を渡る 動き出したアジア総力戦

PART 3 盤石をもっと強く 成熟する国内市場を深掘り

PART 4 「技術の花王」再び 原点回帰は懐古か、挑戦か



第1回は、

PART 1 「2月4日」の変 役員総辞職ににじむ覚悟

データで見る「逆境の25年」


を取り上げます。


今週の特集記事のテーマは

米P&Gに勝つことを夢見た中興の祖、丸田芳郎氏の社長退任から来年で25年。海外事業で思うように伸ばせず、アジア攻勢でライバルのユニ・チャームに先を越されている。
国内では、カネボウ買収で2006年に24期連続増益は途絶え、昨年は白斑問題が深刻化した。
そして今年2月、澤田道隆社長を残してすべての取締役が退任する異例の決定を下す。
「技術」か「マーケティング」かという二項対立を超えた「超・技術経営」。再攻の狼煙は上がった。


(『日経ビジネス』 2014.10.13 号 p. 026)

です。



花王 奪還「失われた25年」 
2014.10.13号の表紙


まず、今年(2014年)2月に行われた異例とも言える決定を振り返ってみることにしましょう。

PART 1 「2月4日」の変 役員総辞職ににじむ覚悟


写真=左から4点:時事、
右上:読売新聞/アフロ、
左下:清水 盟貴、
中下:大槻 純一、中上:EPA=時事、
右上・背景:ロイター/アフロ、
右端:時事通信フォト
花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13


国内トイレタリーメーカーのトップに君臨する花王に、何が起こったのでしょうか?

2014年2月4日。沈黙を守ったまま、1人の経営者が表舞台から消えることを決定した。

2004年から花王の社長を務め、2012年にその座を澤田道隆に譲って会長に退いていた尾崎元規、64歳(当時)。この日の取締役会で退任を決め、3月28日の株主総会で正式に退いている。

やや異例なのは、尾崎と共に、社長の澤田を除く全ての社内取締役が一斉に退任したことだ。その数、尾崎を含めて6人。1人の例外も許さない尾崎体制の「総辞職」だった。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
p. 028 


何があったのでしょうか?
そして、その後、澤田さんはどんな方向へ舵を切る決意を固めたのでしょうか?

その点に着目して、ご覧ください。

新体制では、社内と社外の取締役を同数の3人とし、議長は社外取締役の元マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアパートナー、門永宗之助が務める体制とした。取締役会における社外取締役の発言力は、相対的に大きく強まった。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
p. 028 


以前から、『日経ビジネス』は社外取締役について、何度も取り上げています。

欧米では普通のことですが、しがらみのない社外取締役が、取締役会で歯に衣着せぬ発言をし、鋭い質問を浴びせます。

その一番大きな理由は、株主の存在です。
コーポレート・ガバナンス(企業統治)の問題があるからです。

企業統治とは、平たく言えば、「会社は誰のものか?」ということです。

企業のステークホルダー(利害関係者)には、株主、顧客、取引先、従業員、社会などがあります。

ですが、欧米では、利害関係者は「株主」である、という考え方が一般的です。

日本では、前述したすべてが利害関係者と考えるむきがまだ多いように思います。

ただ、日本企業の株主には、外国人投資家が多く、発行済株式数に対する持株比率が、10%を超える企業は珍しくありません。

「もの言わぬ」日本人投資家と違い、「もの言う」外国人投資家は、配当金の増額や株式の値上がり益に、常に関心があります。

昔は、株主総会での「総会屋対策」が大きなテーマでしたが、現在では外国人投資家の鋭い質問への対策が重要なテーマになっています。

花王の外国人持株比率を調べてみました。せいぜい30%くらいかと思っていましたが、何と約50%でした。
アメブロに投稿した当時の花王の外国人持株比率のデータが掲載されていたウェブサイトが削除されていたため、日経の記事に変更しました。

花王は外国人投資家の持ち株比率が6月末時点で約5割と高い。今回、消却に踏み切った背景には、外国人投資家が資本の効率性を重視している点もあるとみられる。

花王、自社株1200万株を消却 
資本効率高める
 
 日本経済新聞 2014年11月20日 23:05
 


私が説明したことに納得していただけましたでしょうか?

では、このような状況を踏まえた上で、『日経ビジネス』の記事を読んでいくことにしましょう。

花王関係者にはカネボウの買収に対し、快く思っていない人たちがいたということです。

そうした「空気」が尾崎前会長に退任の決断をさせたのではないか、と日経ビジネス取材班は推測しています。

花王OBには、そもそも社内風土がまるで異なるカネボウの買収を快く思わない者、約4000億円という買収金額を「高すぎる買い物だった」と考える者などが少なくない。

尾崎は、そうした声に押し切られるようにして退いたのではないか。尾崎を支えた当時の取締役の1人も、「(2月4日の取締役会における)ガバナンスを巡る議論の背景に、カネボウ問題があったのは間違いない」と話す。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
p. 029 
 


花王が以前、フロッピーディスクを生産していたことをご存じでしょうか?

フロッピーディスクの時代から外付けハードディスクへ、さらに外部サーバー(クラウドコンピューティングなど)へと外部記憶装置は移行してきました。

花王は86年、自社の化学品部門が持つ界面活性剤の技術を生かし、化粧品などに並ぶ新たな収益の柱を育てるべくフロッピーディスクなど情報事業に参入した。技術力を武器にシェアを伸ばし、一時は世界三強の一角を占めた。新事業育成は成功したかに見えた。

しかし、台湾勢などの参入で価格は急速に下落し、利益を確保するのが厳しくなっていく。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
pp. 029-030 


新規事業に船出する決断よりも、既存事業の撤退を決断することの方が、ずっと難しいのです。

長年携わってきて愛着があり、その部門の従業員の処遇をどうしたらよいか、ということに頭を悩ませ、なかなか決断できず、ズルズル先延ばししてしまい、大きな損失を被ることはよくあります。

後藤(卓也)は98年、情報事業からの撤退を決めた。

経済成長の波に乗ってひたすら事業を拡大していた「成長期の経営」から、経営資源をより効率よく配分して利益を稼ぐ「成熟期の経営」への転換だったと言えるだろう。

役員が一斉に退任したのは、その2年後のことだった。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
p. 030 

後藤卓也: 尾崎の前任の社長


日経ビジネス取材班は、もう一歩踏み込んで、次のように考えました。

経営が大きな節目を迎える時、経営陣を一新し、ガバナンス体制を強化する。これと同じことが2014年2月に再び起こったとすれば、今、花王はまた大きな節目を迎えているのではないか。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
p. 030 


花王が深刻に受け止めているのは、海外事業を展開する時期は決して他社に
遅れていたわけではないのにもかかわらず、いまだに国内ほどにはうまくいっていないことです。

花王は、国内市場に徹底して事業構造を最適化し、かつてP&Gなどの海外勢の日本進出に対抗した。だが一方で、国内を主とし海外は二の次という意識から抜けられなかった。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
p. 031 

下の図表をご覧ください。
「海外売上高比率の推移」を示しています。
青線はP&G、黄線はユニ・チャームそして緑線は花王です。

2006年に、ユニ・チャームは花王を抜き去り、その差を広げ、P&Gに接近しています。


注:決算期は花王が2011年度まで3月期、
2012年度以降は12月期。
ユニ・チャームは3月期。
米P&Gは6月期
写真=China Photos/getty images
花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13


データで見る「逆境の25年」

1990年代後半から成長が鈍化
●花王の連結売上高の推移

写真=左から:時事(2点)、
清水 盟貴(2点)、北山 宏一
花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13


利益の半分を洗剤などで稼ぐ
●花花王の連結営業利益の事業別構成比

注:花王の決算期は2012年度に
12月期に変更。
連結営業利益は2013年12月期
花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13


有利子負債はカネボウの買収をきっかけに膨らんだ
●花王の有利子負債の推移

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13


花王にとって厳しい現実を突き付けられている図表があります(下の図表参照)。

縦軸に売上高、横軸に営業利益率という重要な2つの指標に基づいて、どこに位置付けられているかがひと目で分かるように出来ています。

当然のことですが、できるだけ上で、さらにできるだけ右によっていることが2つの指標で優っていることを示します。

P&Gは圧倒的なトップ企業です。
時価総額は24.8兆円、売上高は9.0兆円、営業利益率は18.4%です。

2位はユニリーバで、それぞれ順に、13.0兆円、6.8兆円、15.1%です。

3位の花王と4位のユニ・チャームは接近しています。

花王は、2.2兆円、1.3兆円、9.4%です。
一方、ユニ・チャームは1.5兆円、0.6兆円、11.2%です。

収益力と時価総額で世界トップとの差は歴然
●花王と競合各社の連結売上高・営業利益率・時価総額

注:業績は米P&Gは2014年6月期、
英蘭ユニリーバと花王は2013年12月期、
ユニ・チャームは2014年3月期。
時価総額は2014年10月1日時点。
ユニリーバの時価総額は英国本社と
オランダ子会社の合算。
1ドル=108.7円、1ポンド=175.3、
1ユーロ=137.4円で換算
花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13


花王はユニ・チャームと比べ、時価総額では約1.5倍、売上高では2倍以上ですが、営業利益率では2%近く劣っています。

P&Gは花王と比較すると、時価総額で10倍以上、売上高で4倍以上、営業利益率は約2倍となっています。その差は限りなく大きい。
容易にその差を埋めることができないのは、誰が考えても分かります。

中興の祖と言われた丸田芳郎さんは、次のように願い続けたそうです。

「国体(国内市場)で勝ち抜いて、オリンピック (グローバル市場)に挑戦しよう」。花王の黄金時代を築いた丸田芳郎元社長は、この言葉を好んで用いた。海外進出の進まない「内弁慶」企業。それを変えたいと願い続けた。

花王 奪還「失われた25年」 2014.10.13 
p. 033
 


しかし、それからおよそ25年経った現在でも状況は変わっていません。

「少なくとも、新しい稼ぎ頭が生まれていないのは確かだ」(p. 033)という指摘が、的を射ていると思います。

当事者である花王は、その事実を骨の髄まで感じているはずです。

いつかは現状を打開し、P&Gやユニリーバに対抗できる日が来ることを願ってやみません。


次回は、

「PART2 内弁慶、海を渡る 動き出したアジア総力戦」

をお伝えします。



🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-10-15 15:33:51)のことでした。

大幅に加筆修正しました。

花王の社名の由来をご存じでしょうか?

次のようなエピソードがあります。

「花王」の由来は、同社が1890年に発売した高級化粧石鹸「花王石鹸」で、当時、洗濯用石鹸が「洗い石鹸」、化粧石鹸が「顔洗い」と呼ばれていたことから、「カオ(顔)石鹸」と名づけることとし、「香王」「華王」「花王」などの候補中から「花王」という文字が選ばれ名付けられた。

「花王」の由来 ブランド・社名・ロゴマーク由来辞典 


花王は日本の株式市場で数少ない連続増配をしている企業としても有名です。花王は33年連続増配で1位です。

「連続増配株ランキング」ベスト20![2023年最新版] 33期連続増配の「花王」、24期連続増配で利回り3.6% の「三菱HCキャピタル」など、おすすめ増配銘柄を紹介 【2023年11月1日更新!】

お金の総合サイトZAI ONLINE


花王の詳細を見てみましょう。

お金の総合サイトZAI ONLINE


34年連続増配となりそうですね。

しかし、株価の推移を見ると芳しくありません。

花王(4452)株探 2023/11/17
花王(4452)株探 2023/11/17


直近の約3ヵ月の株価推移を丹念に見ますと、5500~5600円くらいのところでウロウロしています。


花王(4452)株探 2023/11/17


増収減益が続いています。

花王は連続増配で日本で1位ですが、米国ではどうでしょうか?

米国には「配当王」「配当貴族」等があるそうです。
「配当王」とは50年以上連続増配している銘柄です。

配当王とは?銘柄リスト一覧&25年間の長期リターンを独自計算した結果

配当王とは、50年以上連続で1株あたりの年間配当金を増やし続けている銘柄のことです。英語ではDividend Kingsといいます。
50年以上の連続増配というのは、数多くの不況を乗り越えて増配し続けなければ達成できない偉大な記録です。まさしくキングの名にふさわしい銘柄たちです。

複利のチカラで億り人 


配当王として知られる一部の銘柄

Bing AI Copilotの回答

上記5銘柄のうち、The Coca-Cola Company(KO)はウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーが運用しているバークシャーハサウェイに長年組み入れられていることで有名ですね。

少し古いデータですが、下記の図表が参考になります。
アップルへの投資が突出しています。構成比率が42.79%です。
コカコーラは6.82%です。

【最新】バークシャーハサウェイの保有銘柄
上位20銘柄(22年1Q時点) 2022年5月21日


連続増配株の条件とは?毎年増配しなくてもOKな理由を解説
2023年11月2日

連続増配株の種類 複利のチカラで億り人


(6,043 文字)


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