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社長が選ぶベスト社長 「永守流」が支持される理由 2/3 2014.11.17 



<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



社長が選ぶベスト社長 「永守流」が支持される理由 2/3 2014.11.17 



CONTENTS

TOP30 CEOs 数字に出ない実力を探る

PART 1 「ミニ永守」自然増殖中

三菱ケミカルホールディングス社長小林 喜光が語る 孫 正義 10年先を行く感性と永遠のハングリー精神

日本電産 永守 重信 × ファーストリテイリング 柳井 正     特別対談 経営は実行なり

PART 2 不確実だから先手を打つ

PART 3 断絶が生んだ新世代



第2回は、

三菱ケミカルホールディングス社長小林 喜光が語る 孫 正義 10年先を行く感性と永遠のハングリー精神

日本電産 永守 重信 × ファーストリテイリング 柳井 正     特別対談 経営は実行なり


を取り上げます。


今週の特集記事のテーマは

どの経営者を高く評価すべきか。業績か株価か、はたまた報酬と成果のバランスか。それぞれ一つの答えだが、数字だけでは語れない部分もある。
本誌はそう考え、シンプルな方法に挑んでみた。社長のことは社長に聞く、だ
 (『日経ビジネス』 2014.11.17 号 p.027)

です。



社長が選ぶ ベスト社長 
「永守流」が支持される理由
(『日経ビジネス』 2014.11.17 号 表紙)


今特集記事は、「社長が選ぶベスト社長」です。

今回、永守重信さんが「社長が選ぶベスト社長」に選ばれました。

永守重信(ながもり・しげのぶ)さんをご存じですか?
ご存じない方が多いかもしれません。

日本を代表する精密小型モーターのメーカー、日本電産(現・ニデック)の創業者にして、会長兼社長です。

日本電産はBtoB(法人向けビジネス)企業ですから、馴染みがないのも無理はありません。

ですが、実は身近なところで、精密小型モーターは使われています。

パソコンやスマホ、iPodには小型モーターが使われていますが、そこで使われる小型モーターで圧倒的シェアを握っています。

永守さんのモットーは「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」というものです。自著のサブタイトルにもなっています。


永守さんが凄いと思うことは、今でも、トイレ掃除を率先してやっていることと、365日休まず(元日の午前中だけ休む)、1日16時間働いていることです。

まさに「率先垂範」しているのです。

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんでも、さすがに365日休みなく働くはできず、永守さんの猛烈な働きぶりには感心しています。

お二人の対談も掲載されています。
今回その内容をお伝えします。
お二人はソフトバンクの社外取締役も兼務されていて、知り合いになったそうです。

「社長が選ぶベスト社長」の2回目は、まず、永守さんに次いで、2位に選出された、ソフトバンク社長の孫正義さんについて、17位にランクインした三菱ケミカルホールディングス社長・小林喜光さんに語っていただきます。

(写真=ロイター/アフロ)
社長が選ぶベスト社長 
「永守流」が支持される理由
2014.11.17


社長が選ぶベスト社長

1位 永守 重信  日本電産会長兼社長

2位 孫 正義   ソフトバンク社長

3位 豊田章男  トヨタ自動車社長


三菱ケミカルホールディングス社長小林 喜光が語る 孫 正義 10年先を行く感性と永遠のハングリー精神


ベスト経営者はソフトバンク社長の孫正義しか思いつかない。ゼロから事業を始めて、最も企業価値を大きく伸ばした経営者だ。従来の秩序を破壊するから評価は分かれるだろうが、他の経営者とはスケールが違う。

感性だけでなく、細かい数字へのこだわりもすさまじい。実績で誰にも負けない結果を出している。

次世代の経営者が学ぶべきは、成功しても、とてつもない金持ちになっても挑戦し続けるところだ。今は、小さな幸せを必死に守る経営者が多過ぎる。

次の孫正義は日本という国にはとどまらないかもしれない。孫正義も高校中退で米国の大学(カリフォルニア大学バークレー校 註:藤巻隆)を卒業し、海外で戦い続けている。

海外で勝つ人材、すなわち「和僑」と呼ばれるような人の中からベスト経営者は生まれるだろう。

社長が選ぶベスト社長 
「永守流」支持される理由 
pp. 034-035
 


日本という縮小しつつあるマーケットではなく、海外(グローバル)で活躍できる経営者が、次世代のベスト経営者となる、と予言しています。

出てきてほしいものです。
小さくまとまらない、スケールの大きな人物に人は魅了されるでしょう。

私が孫さんがすごいと思うのは、何度も失敗を繰り返しながら、大きくなっていくことです。

孫さんは身体は決して大きくありませんが、大きく見えます。失礼な表現かもしれませんが、「小さな巨人」とは、孫さんのためにあるのではないか、とさえ思います。


注:総得点のうち各項目に入った割合
を5点満点で示している。
孫正義社長の場合、「M&A」と
「グローバル経営」が満点。
調査では7項目について尋ね、
得点の高い順から5項目を抽出した


さて、4位から10位、実際には同点の方がいますので、9位までの顔ぶれを再度、ご紹介しましょう。

4位 鈴木 敏文  セブン&アイ・HD会長兼CEO 95
5位 古森 重隆  
富士フイルムHD会長・CEO 90
6位 柳井 正   
ファーストリテイリング会長兼社長 80
7位 藤森 義明  
LIXILグループ社長 50
7位 高原 豪久  
ユニ・チャーム社長 50
9位 新浪 剛史  
サントリーHD社長 40


いよいよ、おまちかねの永守重信さんと柳井正さんの、白熱した特別対談のもようをご紹介します。

経営は実行がキーワードです。

日本電産 永守 重信 × ファーストリテイリング 柳井 正 特別対談 経営は実行なり


Shigenobu Nagamori 日本電産会長兼社長。
1944年京都府生まれ。
ティアックなどを経て、
73年に日本電産を創業。
今回の調査ではM&Aに
対する評価が集中した。


Tadashi Yanai ファーストリテイリング会長兼社長。
1949年山口県生まれ。
84年に父の後を継いで社長に就任。
グローバル経営やイノベーションへの
評価が高い。


お二人は、ソフトバンクの社外取締役に就任しています。

最初は、お二人の出会いから

永守 柳井さんはソフトバンクが大赤字を出した苦しい頃から続けておられる。社外取締役は会社が赤字になると逃げ出すものですが、そのまま残って発展を支えてこられた。

柳井 自分はもともと永守さんのファンだったんです。本を読んで、お会いしたいなと思っていたところにパーティーか何かでお会いしたのが最初です。その後、僕も講演に行ったし、永守さんにも私の講演に来てもらった。日本の経営者を信用していませんが、永守さんは一生懸命に経営している数少ない人物で、僕にとっては先生です。 

社長が選ぶベスト社長 
「永守流」支持される理由 
p. 036
 


グローバル企業であるにはどんなことが不可欠なのか

永守 我々の業種は世界で一定のシェアを取っていかないと健全な利益が出ないんです。最近はグローバルな供給体制が求められているので、小さな会社でいいということはあり得ない。

ゼロから会社を立ち上げ、今は1兆円に向かっていますが、一番苦しかったのはゼロから10億円の間です。当時は借金したら同額の生命保険に入ったわけで、命が懸かっていました。

1兆円を10兆円にするのもそれほど難しくないと見ています。

柳井 グローバルプレーヤーでなければ生き残れない点は、小売業でも同じですね。働く人も経営者もサプライヤーさんも、成長しない会社に何の楽しみがあるんですか。

それに、規模が大きくなってもやることは変わらないんですね。
孫さんじゃないですが、1兆円、2兆円は豆腐の1丁、2丁と同じつもりでやらないと。

社長が選ぶベスト社長 
「永守流」支持される理由 
pp. 036-037
 


失敗をどう捉えるか。成功するには何が不可欠なのか

永守 柳井さんがよく言われるように、経営は半分近くが失敗ですな。8勝7敗、9勝6敗で勝ち越した会社が生き残っているだけです。だから減点主義で人を見れば、ほとんど失格になる。

柳井 失敗してもそれを認識して行動し、また失敗しても最後までやる。それを早くやれば、絶対に成功するんですよ。

経営は勉強でなく実行です。ビジョンを作って、全社員の力を使って成果を出す。調査や分析が1としたら、実行は30です。自分の頭で考えて、実行できる人。こういうものを絶対に作りたいという理想や希望を持って、人の力を引き出せる人でなければ経営者は務まりません。

永守 経営は気概と執念。絶対に成功させようとか、勝とうとか、いいものを作ろうとか、そういう気概と執念がないと成功しませんわ。

孫さんほどではないけど、ほらを吹き、夢を語る。会社や世の中をもっとよくするんだと楽観的に考えていかないとね。

柳井 つらい時こそ経営者は誇大妄想狂になるべきです。トップが夢を実現しようと言わない限り、社員は信用しないよね。

社長が選ぶベスト社長 
「永守流」支持される理由 
pp. 037-038
 


M&A(合併・買収)について

永守 日本企業が買収に失敗する最大の理由は、買ったら終わりと思うからですね。買うまでが20%で、残り80%を会社をよくしたり、シナジー効果を出すために費やす。トップが「買ったからお前が行ってこい」では失敗します。買ってからトップが最もエネルギーを費やさなきゃいかん段階なんです。

柳井 僕は永守さんと違って失敗率が非常に高い。でも、失敗してすごくいい勉強になった。会社を買うとはどういうことなのか、日本と海外の人間がチームで仕事をするというのはどういうことなのかが勉強できますよね。

社長が選ぶベスト社長 
「永守流」支持される理由 
p. 038
 


M&A(合併・買収)の基準とは?

永守 これまで五十数社買いましたが、ほとんど成功していると思います。それは、「こういう会社しか買わない」という条件を決めているからなんですよ。どんなにいい話でも、条件に合わないものは買わない。

柳井 我々の産業はローテクで、そこで働く人々、経営者の考え方が合わないと絶対に一緒に仕事ができないんですよ。

社長が選ぶベスト社長 
「永守流」支持される理由 
p. 039
 


後継者がなすべきことと、創業者のあり方について

柳井 後継者候補には「自分のようにやると失敗する」と言っています。僕は創業者でCEOだから人々が言うことを聞くんですよ。同じことを後継者が言ったら誰も聞かないですよね。歴史を全部知っている僕より強いことをやろうと思ったら、チームを作るしかないでしょう

永守さんも孫さんも同じことを言っているんですけど、創業者は絶対に引退できないんですね。引退できないけど、迷惑をかけないことだけは気を付けないといけない。

だから創業者は自分を引き継いでくれるチームと、そのリーダーを任命しないといけない。

永守 私が辞めたらワンマン経営はもうできませんから、集団指導体制になる。その組織をこれから10年、15年かけて作っていく。

集団指導体制は小さな規模でやっても機能しないでしょう。1兆円くらいではまだ早い。3兆円なのか10兆円なのか分かりませんが、そのくらいまで持ち上げた後に、組織に渡していく。それが、創業者が残っても欠点が出ない形でしょう。

そこまでは自分がやっていくと。私は日本の企業をずいぶん研究したんですけど、創業者が最後まで残っている会社が強い。名誉会長みたいな立場で口を出すのはよくないので、最後の責任は自分が持つという姿勢でいこうと思っています。 

社長が選ぶベスト社長 
「永守流」支持される理由 
p. 039
 


永守さんも柳井さんも異口同音に述べています。後継者は「チーム」「集団指導体制」で行うことになると。単独ではもはや経営できないと。


対談中で、柳井さんは「経営は実行」と語っています。この言葉は、先にご紹介したキーワードです。

そして、まさに経営は実行というタイトルの本が11年前に出版されています。

『経営は実行 明日から結果を出すための鉄則』
ラリー・ポシディ ラム・チャラン チャールズ・バーク
日本経済新聞社 2003年2月12日 第1刷


この本の内容の一部をご紹介します。
経営は実行とはどういうことなのか、に重点を置いてお伝えします。

実行とは何かを理解するうえで、念頭においておくべき点が三つある。

・実行とは体系的なプロセスであり、戦略に不可欠である。

・実行とはリーダーの最大の仕事である。

・実行は、企業文化の中核であるべきである。

『経営は実行 明日から結果を出すための鉄則』 
 pp.26-27  


実行するには、事業、その事業に携わる人材、事業を取り巻く環境を包括的に理解する必要がある。ただひとり、それができる立場にいるのがリーダーだ。そしてリーダーだけが、実行の中身に、時には細部にまで深く関与することによって、実行力を発揮させることができるのである。

『経営は実行 明日から結果を出すための鉄則』 
p.30 
 


ビジネスの仕組みの本質は、人材、戦略、業務という三つのプロセスがいかに結びついているかにある。リーダーは個々のプロセスと、それが全体としてどう関連し合っているかを学ばなければならない。それが実行という体系の基礎であり、戦略を策定、実行するうえでの柱になる。それらが、競争相手に差をつける手段になる。

『経営は実行 明日から結果を出すための鉄則』 
p.295
  


最終回は

PART 2 不確実だから先手を打つ

PART 3 断絶が生んだ新世代


をご紹介します。


🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは、10年前のことで、アメブロでも10年前(2014-11-20 21:08:15)のことでした。

大幅に加筆修正しました。

永守重信氏と柳井正氏という二人の稀代の経営者による対談は、10年経った今、読み返してもとても面白く、興味深いものでした。

創業者で、経営者という立場で語られる言葉には重みがあり、納得してしまいました。実績に裏打ちされた言葉には力があります。言霊が存在します。

お二人とも75歳~80歳になられ、後継者問題が現実のものとなってきました。

ニデック(旧日本電産)は、永守重信氏の後継者として岸田光哉氏が最高経営責任者社長執行役員に就任することが決定しました。

社長交代および代表取締役の異動等に関するお知らせ

ニデック
社長交代および代表取締役の
異動等に関するお知らせ
2024年02月14日


一方、ファーストリテイリングは、柳井さんの後継者は確定していません。お二人のご子息が役員に就任していますが、柳井さんは「後継者にはしない」と公言しています。果たして後継者選びはどうなるでしょうか?

ファーストリテイリング(9983) 役員等 マネックス証券


ところで、お二人とも現在ではソフトバンクグループの社外取締役は退任しています。

ソフトバンクグループ(9984) 役員等 マネックス証券


(6,228 文字)


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