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夜と霧(1955)

アラン・レネ監督が1955年に発表した32分のドキュメンタリー映画「夜と霧」は、アウシュヴィッツ強制収容所を扱った最初の映画の一つと言われているらしい。

冒頭、現在の強制収容所を穏やかな"風景"としてカラーで静かに映しながら、「この恐怖を、映像で表現できるのか?」とまずは疑問を投げかけてみせる。 ほどなく、画面はかつての資料映像と写真をモンタージュしたモノクロの映像に変わり、あまり抑揚のない男性ナレーションがかつて強制収容所で行われたことを淡々と語り続ける。その内容は、凄惨極まりない。 (この、モノクロ映像に淡々とした男性ナレーションは、「去年マリエンバートで」を彷彿とさせる。)

強制収容所で10年ほど前に行われていたことをモノクロで、現在の穏やかな風景をカラーで交互に見せながら、"戦争"の意味とその責任を観客に問う。語り口が感情的にならない分、逆にずっしりと重さがのしかかる。

「戦争は終わっていない。収容所の跡は廃墟になり、ナチスは過去となる。だが900万の霊はさまよう。我々の中の誰が戦争を警戒し、知らせるのか。次の戦争を防げるのか。我々は遠ざかる映像の前で希望が回復した振りをする」という言葉は、映像の前にいる我々を貫く。


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