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炎のいけにえ(1974)

アルマンド・クリスピーノ監督の1974年作品「炎のいけにえ」を再見。オリジナル・カメラネガからの2Kスキャン&レストアの高画質Blu-rayにて。

この映画の最大の見どころで、めっちゃ胸糞悪いオープニング・シーケンスは、何度見ても気分悪い。なんかちょっと頭がおかしくなった風に、人が次々と自殺する異様な光景。そこからスパッと切り替わって、死体置き場での検死解剖現場になるのですが、ここでまた死体が起き上がってとんでもないことをやらかし、甲高い笑い声をあげる。

ここまでが、この映画がもっとも異彩を放つ狂気的なシーンなのですが、この先は自殺と見せかけた連続殺人が続くサスペンススリラー(ジャッロというほどはえげつなくない)となります。

オープニング・シーケンスの意味するところは、あまりの猛暑が続くローマでは異常な自殺が相次いでいる。これは、この映画のアイデアが太陽活動と自殺の増加との関連性から発想されたことからきていて、映画の原題は「太陽黒点」。

その次の死体置き場のシーケンスは、主人公の検死医シモーナがそんなこんなで次々と運ばれてくる変死体の検死解剖に追われ、しかも猛暑もあって疲れ切っており、精神的にも参っちゃって奇妙な幻覚に取り憑かれている様を現している。

そんな前提ありきで、この後に続く"自殺"(いや、他殺?)や、シモーナの周囲で起きる"出来事"(いや、幻覚?)を描いていくのだ。

さらに言えば、他殺にしても犯人に影響を与えているのはこの太陽なのではないか?とも読み取れる。だって、殺人が起きる前には必ず太陽のプロミネンスの映像が入るのだもの。

冒頭シーケンスを除けば、殺人シーンの演出を派手に見せるでもなく、犯人の動機もなんだかなー、刑事が犯人を推理することもなく犯人は自ら耳の聞こえないおばさんに動機を語って終わりなど、ちょっとなんだか困ってしまう。

しかし、実は冒頭シーケンスだけでなく、この映画には多数の死体写真やその手のオブジェが登場し、作り手の"悪趣味さ"は映画全体に散りばめられている。

また、主人公やパートナーとして動く牧師の直情的でヒステリックな行動は犯人より怖かったりもする。

そんな見ていて精神的にしんどくなっちゃう内容を、女性の喘ぎ声のような音が混じった奇妙な音楽が包み込むのだけど、この音楽がまた御大エンニオ・モリコーネ!

こうして振り返ると意外と見所があるような気になってきたのですが、まとめると、観客の方も狂ったような暑さの中で嫌な幻覚を見てしまったよ…みたいな一作。

でも、妙に後を引くかも!? いろいろ気持ち悪いけど。


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