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親愛なる同志たちへ(2020)

アンドレイ・コンチャロフスキー監督「親愛なる同志たちへ」を観た。

1962年、フルシチョフ政権下のソ連では物価高騰と食糧不足で民衆は苦しんでいた。そんな中、共産党市政委員会のメンバーである女性リューダは、党の特権で贅沢品を手に入れたりしつつ、老いた父と18歳の娘スヴェッカと3人で穏やかな生活を送っていた。

娘は共産党の政治に懐疑的だが、リューダはいかに共産主義が素晴らしくソ連が誇れる国家なのかを語り、親子間には隙間風が吹いている。

そんなある日、物価高騰に加え給料を1/3にカットされた機関車工場の従業員が大規模なストライキを起こす。

うまく機能しているはずの国家でこのようなことが起きてはいけないと、モスクワのフルシチョフ政権は、スト鎮静化と情報遮断のために高官を現地に派遣する。彼らが沈静化のためにとった行動は、デモ隊や市民を狙った無差別銃撃と、この事件を知った人々の口をつぐませることだった。

この大混乱の中で愛娘が行方不明になったリューダは、その身を案じて広場を駆けずり回り、その後も病院や死体置き場に至るまで娘を探し続ける。

自分が長らく忠誠を誓ってきた共産党や国家がとったこの行動は何なのか? リューダが信じ守ってきたものは何だったのか?

「同士」と呼ぶ国民のことより国家体制の維持を重視し、都合の悪いものは握りつぶす。それは、もはや共産主義や民主主義という思想の問題ではない。

いったい何が正しいのか? どうしてこうなってしまうのか?

2022年、現在の世界の状況を感じながら見る1962年に起きたこの事件は、とても昔の出来事とも他人事とも思えない。

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