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ホワイト・ノイズ(2022)

ノア・バームバック監督のNetflix映画「ホワイト・ノイズ」を見た。よくわからん… かなり奇妙な映画だった。

原作は、現代社会と人々のありようを鋭い視点で描くというアメリカの作家、ドン・デリーロによる小説。デヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化した「コズモポリス」も氏の原作だった。そう捉えると、この映画が変わってるのは原作によるものなんだろうね。

主人公のジャックは「ヒトラー学」の教授で、4番目の妻バベットと4人の子供たちと一緒に暮らしている。ジャックとバベットはお互いに「相手のいない人生には耐えられないから、相手には自分より早く死んでほしくない」と言い合っている。

ある日、有害化学物質を運んでいた列車の大事故によって「空媒毒物事象」が発生。避難途中に立ち寄ったガソリンスタンドで、給油のため車外に"2分半"出たジャックは毒物の混じった雨に濡れて、避難所で「2分半も雨に濡れたなら、やがて死ぬでしょう。よくわからないけど…」みたいに言われて、死の恐怖から逃れられなくなる。

一方でバベットも自身の体調不良から「死への恐怖」が募り、治療のための謎の臨床試験に密かに参加し、「ダイラー」という薬を手に入れるために薬の開発者に身体を要求されていた。

映画のアタマから見ていくと、ジャックが独特の「ヒトラー学」熱弁で人々の心を掴んだかと思いきや、「空媒毒物事象」で街中がパニックになってみんなで避難し、これはゾンビ映画みたいになるのか…と思ったら、実は毒物はなんてことなかったので街に戻ってOKってなって、そしたらバベットの臨床試験がバレて、さらに死の不安に怯えるジャックがバベットが使った謎の薬「ダイラー」を手に入れようとして…みたいにコロコロと主題が変わり、終わったことはスルーされていく展開。

一貫しているのは、主人公夫婦が「死への恐怖」に取り憑かれて、最初から最後までバタバタしているということかな。

平穏な日常の象徴として、物語はスーパーマーケットに始まり、スーパーマーケットに終わる。ラストのスーパーマーケットでの買い物客のダンスは、この映画の不条理さを極め付けに見せてくれるが、観客はポカーーーンとするしかない。

こんなヘンテコな展開の映画を、それでもちゃんと引っ張ってみせた主演のアダム・ドライバー&グレタ・ガーウィグ(「バービー」の監督だよ!)は、ある意味凄い。

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