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EYE OF THE CAT(1969)

デヴィッド・ローウェル・リッチ監督の1969年作品「EYE OF THE CAT」を見た。猫がいっぱい出てくる映画。欧州版Blu-rayで見たのですが、見事にレストアされた映像はとても綺麗で古さを感じさせません。

肺気腫で肺の2/3の細胞を失って酸素ボンベが手放せず、車椅子生活を送るお金持ちの未亡人がおりました。甲斐甲斐しく彼女の世話をしているのは甥のルーク。だけど、未亡人は(こんなに世話になってるのに)ルークが大嫌いで、遺産は全て飼っている愛猫に遺すのだそう。

そんな未亡人がある日、行きつけの美容院で発作を起こして死にそうになった姿を見た美人美容師は、未亡人が溺愛するもう一人の甥、叔母の金を盗んで家を飛び出したまま消息不明だったワイリーを探し出す。未亡人が大好きなワイリーを連れ戻し、遺産相続の相手を猫からワイリーに書き換えさせた上で殺し、遺産を山分けする企みなのだ。(金は盗むわ、自分の世話は一切してくれないわの不良甥っ子に未亡人はベタ惚れしている様子…)

彼女といちゃいちゃしているところに突然不法侵入してきた美人美容師に驚くこともなく「わお、美女がやってきた。楽しそう♪」と、彼女を捨ててホイホイついていくワイリー。美容師の話に「面白そうじゃん。乗る、乗る!」と調子いいのですが、彼にはひとつ大きな弱点がありました。なんと彼は"猫恐怖症"で、部屋に猫が入ってくるだけで身体が動かなくなってしまうのです。

猫の姿は見えずとも気配だけで恐怖におののくワイリーと、それを真剣な面持ちで受け取める美容師。可愛い猫の映像にジェイソンかフレディが表れたかのような恐怖の効果音が被さります。ドドーン!! うむむ…。

何年振りかでワイリーが姿を現し「猫さえいなけりゃ家に帰るよ」と言われるや、ルークに「猫、全部遠くに捨ててきなさい!」と命じる未亡人。猫よりワイリーの方が断然好きなんですね。

屋敷に戻ったワイリー、足の悪い未亡人が階段を上がれないことから監視を兼ねて上の階に潜入した美容師、急に戻ってきた兄に警戒するルーク、陰謀を知らずにワイリーが戻って浮かれる未亡人。そして、屋敷から追い出された猫。役者は揃った!

ここから財産目当ての完全犯罪は成立するのか、身体が不自由な未亡人は憐れにも殺されてしまうのか…というサスペンスが展開するのですが、"猫映画"だけに一筋縄ではいきません。

良いところ:スプリットスクリーンを多用するオープニングがカッコいい。ゲイル・ハニカット演じる美容師の、美しくもどうしようもない悪女っぷり。美容師と元カノの女子トイレでのキャットファイト(←必要だったのか!?)。坂道で車いすのブレーキが壊れるシーンの迫力!

困ったところ:猫が"殺人鬼"扱い。だが、映像は可愛いキャット。"猫恐怖症"に真顔で付き合う登場人物たち。けっこう無理やりな猫との闘い。

アルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」の脚本も書いたジョセフ・ステファノによる物語は、遺産相続を巡るサスペンスに、(同じくヒッチコック監督の「鳥」がウケたからか?)動物パニック要素を加えたらイマイチ変なブレンドになってしまったようなシロモノですが、かつて見たことのない変わり種であり、一応ちゃんとひねりのある脚本にはなっているので、これはこれで良しとしましょう。



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