ドント・ルック・アップ(2021)
アダム・マッケイ監督の2021年作品「ドント・ルック・アップ」を観た。
現在の世の中における、地球の存続を脅かす社会課題に対する国の代表、科学者、メディア、企業、一般大衆にいたるまでさまざまな立場の人々のスタンスや行動を、"いま地球を破壊する彗星がやってきたらどうする?"というフィクションの形で描いて見せる社会風刺コメディ。
ある日、地球に衝突する巨大彗星を発見した天文学者と大学院生は、地球に迫りくる危機を知らせようと躍起になるが、大統領と補佐官に半笑いで適当にあしらわれ、そうなればやむを得まいとテレビ番組に出演してみれば、「みんな死んじゃう!」と必死に訴えた大学院生は"ヒステリー女"としてSNSを中心に嘲笑の的となり、学者の方は何故か"セクシー教授"として人気者になってしまう。
そして、ほとんどの人が2人の訴える地球の危機をまともに聞き入れない。
地球温暖化やウイルスの脅威に対して国やメディアや個々人が現実に取っている行動や発言を、ここぞとばかりに全部ぶち込んで、いかに人類が近視眼的で自分勝手で愚かなのかを徹底的に皮肉って見せる。
たぶんこの映画のテーマに共感してなのだと思うが、アカデミー賞受賞者を多数含む豪華キャストがこの狂騒の舞台で、それぞれに達者な演技を見せているのも何気に凄い。豪華キャストがバカを演るノリはティム・バートン監督「マーズ・アタック」にも通じるが。
前半、結構笑える小ネタをバンバン挟んでくる割に、後半は(人間の愚かさを描くトーンは変わらないが)だんだんシリアスな展開になってコメディ色が消えていくのがちょっと残念だが、最後の大統領にまつわる伏線回収もあったりするから、まぁいいか…。
「Don't Look Up」は、「現実を直視するな」という意味合い。僕らが目の前にある(個人じゃどうにも出来なさそうな)現実から目を逸らして生きていることを痛切に皮肉っている。
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