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ペイン・アンド・グローリー(2019)

ペドロ・アルモドバル監督「ペイン・アンド・グローリー」を観た。

成功した映画監督である主人公は、歳と共に脊椎の痛みが取れなくなり、母親の死のショックも相まって引退同然の生活を送っている。薬を飲んで横になっては、幼少時代のこと、母のこと、昔の恋人のこと…と回想に耽り、痛みを和らげるために麻薬にも手を出す。

そんな彼のもとに、32年前の作品の上映と主演男優との対談の依頼が届く。これをきっかけに閉じていた主人公の人生が再び少しずつ動き始める…といった内容。 監督自身の想い出を反映した半自叙伝的な作品とのことです。

歳をとり、身体の自由が効かなくなり、生きる目的を見失ってしまった主人公を描くと映画全体のトーンが暗くなりそうなところを、本作はスペインの明るい風景、監督らしい極彩色を散りばめた舞台装置によって見た目に明るくしているので、観ていてもさほど沈まない。 そんな中で、監督の人生の苦しみと挫折と再生を静かに見守るのも悪くない。

また、主人公を抑えた演技で体現したアントニオ・バンデラスも素晴らしい。

静かに人生を振り返る良作。

(2020/7/11記)


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