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水の中のナイフ(1962)

昔々に名画座で観て以来、すっかり内容を忘れてしまっていた、ロマン・ポランスキー監督の1962年作品「水の中のナイフ」を見た。本当に中身をほとんど忘れていたが、20歳くらいで見る本作と歳をとって見る本作は、まるで別の映画のような印象だよなと思った。

裕福な夫婦が週末のヨット遊びのために走らせていた車の前に、ヒッチハイクの青年が飛び出してくる。青年の行動に憤る夫だが、妻の手前もあり、青年を車に乗せてやる。

やがて目的地に到着し、去ろうとする青年を夫は呼び止め、やや強引にヨットに誘う。躊躇するも、この後も車に乗せてもらえるならとヨットに乗り込む青年。しかし、ここから週末のヨットで繰り広げられる3人の関係は波乱含みの微妙な展開を見せる。

モノクロの映像に、クシシュトフ・コメダのジャズが被さって、ときに美しく煌めき、ときに不安を誘う。自分は船長だとやたら偉そうに振る舞う夫と、耐えかねて逆らう青年。そして、青年が手にしている大ぶりなナイフ。

常に何かが起こりそうな不安感と緊張感がピンと張り詰めた中で物語は進行する。美しく、とてもスリリングな心理劇。さすがの傑作です。

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