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溶解人間(1977)

ウィリアム・サッチス監督&脚本の1977年作品「溶解人間」をスティングレイ発売のBlu-rayで観た。

土星探査に向けて有人宇宙船が発射されるところから物語は始まります。そして、「土星の輪から太陽が見えます」とか報告していると、放射線の影響か何かわからないけど、「ぎゃーーーっ」…

ミッションは失敗。唯一生き残ったスティーヴが陸軍病院の一室で目を覚まし、全身を覆う包帯をほどくと、そこには醜くただれた顔があった。特殊な宇宙線の影響で肉体が溶解しつつあったのだ!

ここから先は、病院を抜け出して彷徨うスティーヴと、スティーヴと出くわした人々がスティーヴに襲われる様子が、ぐだぐだとだらだらと延々と描かれます。

本作の特徴として、酷過ぎて逆に可笑しい無駄な長回し&スローモーション、2つの場面の執拗な繰り返し、長すぎて薄まり過ぎたそれぞれのシーン、スティーヴがウロウロしてるだけの映像(時間)が多すぎなどさまざまな"そもそも映像作品としてダメだろう!"要素が満載なのですが、それを補って余りあるのがリック・ベイカーによる特殊メイク!!!

実際この映画は、人間がドロドロと溶けていく様子を見せるためだけに作られたと言っても過言ではない作り上がりで、作品が進むにつれて段階的にどんどん体が溶けていくこだわりっぷりと完成度は凄いのです。(この頃はある程度成功していたので、低予算ホラー映画は断ろうと思って高めの予算をふっかけたら、その金額を支払うというのでやるはめになったと、インタビューでリック・ベイカーさんが語っておられました!)

なので、物語や演出や演技には目を瞑って 、CGもない時代に、"特殊メイクの神様"リック・ベイカーが 84分かけて人間が溶けていく様子を手作りで見せてくれた記念碑的作品として大切にBlu-rayを保存しておきたいと思います…(が、二度と見ないかもなぁ……)

以下、ネタバレ気味に映画の中のいくつかの場面を紹介します。

病院でスティーヴに襲われたナースが逃げるシーン。廊下の奥から手前に向かって全身を揺さぶりながら迫ってくるナースをカメラ固定で超スローモーションで見せる演出には彼女の動きも含めて途中から笑いが止まらなくなります。最後に彼女がカメラをよけるのも面白すぎ!

スティーヴに襲われた釣り人が首をもぎ取られ…(ここまではホラーなんですが)、川に投げ込まれた首が川の流れにたゆたう様子を、これまたスローで長々写してクスクス笑いを呼んだあげく、首が(小さな)滝から落ちて頭がかち割れるというマジかギャグかわかんないオチを付けるのも笑撃的。

他にも、夜道を車で走ってる老齢のカップル、ヘレンとハロルドの漫才としか思えない会話のやりとりや、突如ヒステリックに怒り出す女性や、キッチンでスティーヴに襲われるも反撃して追い出した後の女性の恐怖に慄く様子を「まだまだ、もっともっと!」と延々と映しているところなど、「なんなんだ、この映画…」と苦笑するしかない面白シーンは満載です。

それでも最後の15分くらいに立て続けにホラーっぽい見せ場を作っているのは、なかなか。だけど、この見せ場も結局はリック・ベイカーさんのお仕事ですね!

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