Sex, Drugs and Murder / 被害規模がわからない新型ドラッグの脅威とマイノリティ【イギリス テレビ日記】
イギリスのゲイコミュニティの間で急速に過剰摂取事故(overdoes)が増えている通称「G」なるドラッグ(GBR)にBuzzFeedの記者が迫る特集番組。
『Sex, Drugs and Murder: Channel 4 Dispatches』(Channel 4)https://www.channel4.com/press/news/sex-drugs-and-murder-channel-4-dispatches
番組の一部は下記のページからご覧いただけます(演出の一部を手がけたデザイナーのポートフォリオのページのようです)https://medioto.com/dispatches-chemsex/
「G」と呼ばれるドラッグによる致死事故が近年急速に増えている。セックスパーティで酒に混ぜて使用されることが多いとされるが、そもそもドラッグもセックスパーティも表で語られるものではないことから、被害の全容をつかむことが困難を極めてる。効き目の強い薬物であり、作用としては一度眠りに近い状態に入った後に、死に至らしめることから、周囲の人間も異常に気付きにくい。
番組は「G」の使用により息子を亡くした両親の取材から始まる。危篤状態で男性が搬送された病院では、容態が悪くなった原因がわからず、医師も匙を投げかけていた。患者の家族が息子がゲイであり「G」の噂を耳にしていたことから、医師にその旨を申告し、ようやく原因が判明した。「G」は専用のテストを行わなければ、検知されない薬物であり、このように医師や家族がピンと来て検査を行わない限り見つからないのである。実際、今日時点で死亡鑑定のチェックリストに「G」のチェックは含まれていない。
ロンドンのとある病院では、連日「G」が原因で患者が運ばれてくるという。数的な状況は全く把握されていないが、インタビューベースでヒアリング調査を行う限り、かなり広範囲で「G」は使用されているようである。これにはいくつか背景がある
1)「G」はコカインや大麻よりもはるかに効き目が高い強い薬物でありながら、所持・販売による刑罰は英国の法律では「ランクC」にカテゴライズされており、前述の薬物よりもはるかに刑罰が低い。ゆえに、罪の意識が低いままに流通されている
2)ゲイコミュニティがまだまだ社会に認知されていないことも、過剰摂取事故の発生に拍車をかけているとされる。カミングアウトしている・していないに関わらず、ゲイの人々は日々、社会からの圧力によりストレスを感じており、それゆえに、セックスパーティーのような特異なコミュニティにも入ってしまいやすい。さらには日頃の不安感からドラッグの使用、中毒、過剰摂取に陥るのも、理解に苦しくない。
番組が調査を進める中でインタビューした新聞記者は「Gに関しては”みんなやっているじゃん”というのが印象」「激務の影響もあり、ハマりやすかった」「やめるまでに7回は病院に搬送された」と語る。
断薬物コミュニティ(※日本でいうダルクのようなコミュニティ)でも、この薬物汚染の解決策は残念ながら分かっておらず、「薬物を使用するに至らせる”トラウマ”を根本からなんとかする」ぐらいの治療しか見出せていない。
2016年には「G」常習者による連続殺人犯も検挙された。
「G」は表面的には薬物の問題であるが、ゲイに対する社会の認識が絡む根深い社会問題であるということだと思います。ストレスを貯めやすく、たまたま大きなグループになっていたゲイコミュニティで薬物汚染が入り込んできたというのは現代的な現象にも感じます。
また、この番組で「イギリスって、すごいな」と思うのが、医者も、「G」で息子を失った両親も、薬物から足を洗った新聞記者も、連続殺人犯にレイプされた男性も、「G」の売人だった女性も、ほぼ全ての取材相手が「顔出し」でテレビに出ているところ。これがイギリスでは当たり前なのか、出演者がみんなこの問題の解決を望んでいるからなのか、理由は定かではありませんが、陽の当たらないところの問題を表に出してきているという点で非常に画期的な番組だと感じました。
※フルで番組を日本から観られるサイトは見つけられませんでしたが、前述のリンクにテキストで番組内の情報が細かく記載されておりますので、関心のある方はぜひお読みください。
↓イギリスにいらっしゃる方はこちらから
いやぁ、正直テレビ観ている時間が一番楽しい♪