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ウェールズに来て3カ月でのウェールズ語との接触状況

 ウェールズはカーディフに引っ越して3カ月が過ぎた。ウェールズは道路標識などがウェールズ語と英語の2言語表記になっており、電車やバスなどの公共機関、大手スーパーの一部のアナウンスも英語に加えてウェールズ語が流れる。それでも、著者が生のウェールズ語会話を耳にしたのはこの3カ月で1度だけである。たまたま図書館で書籍を探していた際に、職員の方々がウェールズ語で仕事について何かの会話をされていた。こと、首都カーディフにおいては、ウェールズ語よりも、観光客のフランス語やスペイン語、移民と思われる人たちのヒンディー語など“外国語”を耳にする機会の方が多いというのが私の正直な感想である。
 著者の勤務先は南ウェールズに位置する日系企業の製造拠点であるが、500人強の従業員がいる中で、ここでも勤務中にウェールズ語会話を耳にすることはない。職場の飲み会に行けば乾杯の挨拶こそ「Iechyd da(jɛxəd dɑ ヤキーダ)」で始まり、私の上司も「Thank you」の意で「Diolch(ˈdiː.ɔlχ ディオルフ)」とは日常的に言っているものの、それ以上のウェールズ語単語を同僚が発しているのは未だ見たことがない。私がウェールズ語に興味があることを非ウェールズ語話者の社員に話すと「〇〇さんは、ウェールズ語が第一言語だ」という情報をいただくが、紹介されるのは毎回同じ人物である。これぐらいにウェールズ語の存在は外部の人間から見ると“隠れて”いる。
 しかし、著者が隣国のアイルランドに以前は住んでおり*[1]ウェールズ語学習に興味があること、アルファベットの発音規則に慣れてきたこと、「Dwi moyn dysgu Cymraeg (I want to learn Welsh languageの意)」など覚えてきたフレーズを披露することで、少しずつ「冷やかし」や「好奇の目」ではなく、ある程度は情熱を持って当該言語を知りたいと思っていることが浸透し始めた。そして徐々にではあるが情報が入ってくるようになった。肌感覚としては、弊社内でもウェールズの全国統計と一致するように、数十人のウェールズ語話者がにいるようである*[2]。「地元に帰ればウェールズ語を話す」とおっしゃる方もいれば、職場においても、「ウェールズ語話者同士はお互いにウェールズ語を話せることを知っているので、実はウェールズ語で会話している」とのことであった。一人でも非ウェールズ語話者がその場にいれば、英語へのコードスイッチが起きるため、外部の人間(それも見るからに外国人の私)は一向にウェールズ語を耳にする機会に恵まれないのである。


*[1]見るからに外国人の私が「ウェールズ語に興味がある」と突然言うのは、現地の方々からすれば、いささか唐突らしく、私自身も話を切り出しづらいため、「同じケルト系のアイルランドで言語に興味を持った」と必ず前置きを入れるようになった。

*[2] その中には、ウェールズ語話者というよりは、教養としてある程度のウェールズ語の知識があり、蘊蓄を披露できるレベルの方々も混ざる。

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