NHK朝の連続テレビ小説「おむすび」について
はじめに
去る9月30日より放送が始まったNHK朝の連続テレビ小説「おむすび」。
大まかなストーリーは、平成最初の日(1989年1月8日)に生まれたヒロインが、阪神・淡路大震災で被災したのを機に父親の故郷である福岡県糸島に帰郷。その後18歳でかつて住んでいた神戸市に戻り、管理栄養士を目指すという内容です。
今回はこの「おむすび」の序盤のみどころやキャストへの思い入れについて熱く語らせていただきます。
1.「おむすび」序盤の見どころを振り返る
「おむすび」ことヒロイン・米田結を演じるのは橋本環奈さん。
ドラマは2004年、ヒロインが地元の県立高校に入学した場面から始まります。
序盤の福岡編では、当時の福岡ダイエーホークスや、平成のギャル文化、浜崎あゆみさんの楽曲など、近年の他の朝の連続テレビ小説と比べても親しみを覚えやすい題材が随所に散りばめられており、毎回観るのが楽しみでした。
また、鉄道ファンの視点でいうと、糸島地域と天神・博多を結ぶ重要な足である筑肥線の103系1500番台と一貴山駅がたびたび登場するのも嬉しかったです。神戸編では、1994年当時のマルーン一色の阪急6000系・7000系も再現されていました。
そして、忘れてはいけないのが、ヒロイン一家が阪神・淡路大震災で被災して神戸から父・聖人の実家のある福岡県糸島地域に移住しているということ。
第4週あたりから、阪神・淡路大震災発生直前に神戸市灘区で理髪店を経営していた当時のヒロイン一家の様子が回想シーンとして登場するようになりました。
ブレイク直前だった安室奈美恵さんの楽曲に親しむヒロインの姉とその親友、神戸を本拠地としていたオリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)のユニフォームを着た近所の男性、アニメ化され人気沸騰中だった「セーラームーン」の真似をして遊ぶ5歳当時のヒロイン。
いずれも、当時小学5年生だった私がリアルタイムに親しんでいた事物であり、時代考証の精度の高さに感動しつつ、この幸せな日常が震災で一瞬で破壊されたという現実を否応なしに追体験させられました。
この阪神・淡路大震災で当時住んでいた店舗兼住宅が全壊、さらには姉の親友・渡辺真紀が自宅でタンスの下敷きになり犠牲になったことは、ヒロイン一家のその後の人生に大きな影を落とすことになります。
ちなみに第1~5週の時代設定は2004年。その後2005年3月には福岡県西方沖地震が発生し、ヒロインが暮らす福岡県糸島地域と、ギャルサー「博多ギャル連合(ハギャレン)」の本拠地である福岡市天神エリアに大きな被害をもたらしており、このエピソードもおそらく何らかの形で描かれるのではとされています。
日本に生きる私たちとしては、常々向き合わないといけない大地震の記憶。本作はそうした大地震の被災経験や犠牲になった方々のことを今一度思い出すこと、そして次の世代に継承していくことの大切さを語りかけている作品と言えます。
2.新旧のアイドル・モデルが勢揃い
平成のギャル文化を題材の一つとしている作品、注目の若い女性タレントさんが数多くキャスティングされているのも魅力的です。
とりわけ、私が最近気になっている山本舞香さん、SKE48の一推しだった松井玲奈さん(兵庫県生まれ)がキャスティングされたのは朗報でした。
山本さんはヒロインの専門学校の同級生・矢吹沙智を、朝の連続テレビ小説出演3作目になる松井さんはヒロインの姉の友人・相原三花を演じます。
このところ、「ちむどんどん」の川口春奈さん→「舞いあがれ!」の山下美月さん・福原遥さん→「らんまん」の浜辺美波さん・山谷花純さん→「ブギウギ」の伊原六花さん→「虎に翼」の古畑奈和さんという具合で、朝の連続テレビ小説に推しメンの出演が続いているのは嬉しい限りです。
AKB48グループ関係者としてはもう1人、婦人警官・川合彩香を演じる兒玉遥さん。
言わずと知れたHKT48発足時のエースで、在籍末期に療養のためしばらく休まれていた時期がありましたが、現在は女優やグラビアの仕事に復帰されており、ほっと一安心というところでしょうか。
ギャルサー「ハギャレン」のメンバーを演じるのは岡本夏美さん、みりちゃむさん、谷藤海咲さん、田村芽実さん(元アンジェルム)。
岡本さんは女優だけでなく「non-no」の専属モデルとして活躍しており、以前から注目していました。
田村さんは昨年の「らんまん」以来2作目の朝の連続テレビ小説出演となり、こちらも気になる存在です。
仲里依紗さん演じるヒロインの姉・歩のライバルだった、大河内明日香を演じているのは、グラビアアイドルとしてブレイクした女優の寺本莉緒さんです。
あと、忘れてはいけませんが、実はヒロインの祖母・佳代役の宮崎美子さんも、40年以上前はグラビアの仕事で活躍していました。
母・愛子役の麻生久美子さんは、ギャルのカリスマだった浜崎あゆみさんと同い年です。
3.男性陣、福岡・神戸の人々も豪華な布陣
ヒロインの父・聖人を演じる北村有起哉さんは、東京のご出身ですが、以前に関西を舞台にしたドラマで主演されたこともあり、関西弁が自然な感じです。
人情味のある祖父・永吉を演じる松平健さんも、博多弁が巧みで、シリアスな場面に癒しを与えてくれるのが推せるポイントです。
そして、ヒロイン一家を見守るスナックママのひみこさんを演じる池畑慎之介さん(ピーターさん)、ヒロインを巡って争うであろう菅生新樹さんと佐野勇斗さんあたりからも目が離せないです。
また、神戸編のキャストに神戸市出身の新納慎也さん、洲本市出身のキムラ緑子さん、明石市出身の平祐奈さん、宝塚市出身の相武紗季さん、姫路市出身の内海崇さんがキャスティングされているのは、地元民としては嬉しい限りです。
ちなみに福岡県糸島市出身の内場勝則さんは、福岡編ではなく吉本新喜劇の本拠地に近い神戸編での出演という形になりましたが、本場の神戸弁でいい味を出しています。
おわりに
阪神・淡路大震災を題材にした朝の連続テレビ小説としては、過去に「走らんか!」、「ふたりっ子」、「甘辛しゃん」、「天うらら」、「わかば」がありました。
このうち、震災発生からまだ間もなかった時期に放映された「走らんか!」、「ふたりっ子」では被災者の感情を配慮してか、震災への言及は最低限に抑えられていました。その後、1997~98年の「甘辛しゃん」。2004~2005年の「わかば」では、ヒロインの自宅兼仕事場が倒壊する、ヒロインの身内に死者が出るという設定が加えられています。
阪神・淡路大震災から30年という節目に放映される「おむすび」が、どのように震災を描くことになるか、まだ全体像は見えていませんが、一震災経験者として、一視聴者として静かに見守ろうと思います。
最後に、日本の近現代史において大きな転換点の一つとなった阪神・淡路大震災は、数多くの文学作品や映像作品の題材になってきましたが、これは「震災文学」というひとつのジャンルを形成しているように思います。
この「震災文学」についても、いずれ論じる機会を作りたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?