「新解釈・三國志」(その2)

「新解釈・三國志」感想その2です。

この映画を特徴づける要素として「人が死なない」ことが挙げられます。

三国志の物語は人が死にます。嫌になるほど死にます。戦乱の時代を扱った歴史劇である以上、致し方ないとは言えますが、「実写化」の大きな壁には違いありません。

アニメ・マンガ等であれば、かなり直接的な描写であっても、何故か非難される度合いが薄いような気がするのですが(「鬼滅の刃」とか)、実写はまあ厳しい。三国志関聯でいえば、昨年公開された「影 SHADOW(邦題「SHADOW 影武者」)」はPG12でしたし、CCTVの「三国 Three Kingdoms」(2010)が地上波放送されなかったのも、戦闘描写の苛烈さと無関係ではないのかも知れません(まぁ数字が取れない、というのも大きいでしょうが)。

ところが「新解釈・三國志」では、人が殺される/死ぬ映像が驚くほど少ない。名前の与えられている人物としては貂蟬と糜夫人くらいでしょうか?(董卓はある意味ナレ死ですし)

この選択をどう考えるかは、それこそ解釈が分かれると思います。ただ、観客の絶対数を増やすための方策としては理解できる。血飛沫の飛ぶ戦闘シーンは耐えられない人も多いでしょうから、その点においては誰にでも安心してオススメできる三国志映画です。

これは授業教材等で、三国志の映像作品を頻繁に扱う人間にとってはかなり切実な問題です。昨今では、凄惨なシーンを含む挿話を扱う際には、かなりの配慮が必要になっていますので……

人形劇三国志やアニメ横山光輝三国志を使えば懸念は薄れます。しかし人形劇やアニメは臨場感の点で、(少なくともこれまで作られてきた作品に限れば)実写に大きく劣る。歴史と物語を行ったり来たりする内容の場合、受講者の受け取り方が大きく違うのです。この点に鑑みれば、実写がベターというのが長年の経験ではあります。

まぁ、かなり特殊な視点ではありますが、「安心して見せられる実写三国志映画」という点でも「新解釈・三国志」は貴重である、と。

無論、その分、人の死が軽くなっている、という非難はされると思います。糜夫人の死の描写は非難囂々になるのが当然なのかも知れません(どういう死に方かは語りませんが)。



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