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イルカの午睡
2024年4月27日 21:22
“さ”は宛らのさ短編集の著者校を終えたのは金曜の夕方だった。次のエッセイの締切はいつだったかなと、スケジュールアプリを開いたとき、着信があった。知らない番号だ。不審。知らない誰かに番号を知られるようなことはないはず。思い当たるふしがなかったので、着信拒否に回した。何かお腹に入れておこうかなと冷蔵庫を覗いたとき、また着信があった。先般押しかけ相談に来たMの番号だ。依頼された件
2024年4月25日 21:56
対角線上の電子key午前10時前は電話には出ない。健康管理は大事。自己管理も大事。だが。室内に鳴り渡るドアフォンの音、玄関の向こうから聞こえてくる「ねーねー! いるんですよね、センセー!」という呼びかけの繰り返しには負けた。画面のなかの来訪者の顔に見覚えがない。誰だろう。いつもは見知らぬ誰かの予告のない訪問などは無視するのであるが。「わたしー、Yさんの同僚でーす!
2024年4月13日 22:11
3 キレイにキレそうな何か執筆に集中したかったのでドアフォンの子機をクローゼットの奥の密閉式コンテナに放り込もうとしたまさにそのとき。フォーン。と子機が鳴った。私の舌も鳴った。チッ…訪ねてきたのはNとYの子が通っている保育園の園長E氏だった。先般、Nが子を迎えに来るのが遅いとYに伝えた御仁である。面識はある。NとYが子を養子として迎えるとき、第二保証人になった人物だからだ。ち
2024年4月11日 12:48
2 童顔とわちゃわちゃ自著のプロットについてのやりとりが一段落した午後、Yから電話がかかってきた。Yは先般離婚についての相談をしてきたNの相方だ。「えーとあのすいません忙しかったら断ってくれていいんですが相談っていうかちょっと困ってて今、それで話聞いてもらいたいかなって…」「いいよ」「あっまじすか助かりますえっとできたら早めでお願いしたいんですけど時間とか場所とか」「今空いてる
2024年4月13日 16:39
1 名前を言ってはいけない車について雨の夜、それもかなり遅い時刻になってNが子連れで訪ねてきた。長い付き合いの友であり、人となりは知っている。夜間&子連れで訪ねてくるのはよほどのことと察して招き入れた。以下、Nの来訪の理由及び述懐である。午後5時近く、定時間際になってNに残業1時間相当の仕事が急遽持ち込まれてきたという。もとは同じフロア別の誰かしらが担当していた仕事だが、急用ができた