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対称図・Nの選択2

2   童顔とわちゃわちゃ

自著のプロットについてのやりとりが一段落した午後、Yから電話がかかってきた。
Yは先般離婚についての相談をしてきたNの相方だ。

「えーとあのすいません忙しかったら断ってくれていいんですが相談っていうかちょっと困ってて今、それで話聞いてもらいたいかなって…」
「いいよ」
「あっまじすか助かりますえっとできたら早めでお願いしたいんですけど時間とか場所とか」
「今空いてる。うちに来て」
「えっそんな悪いです今ってありえなくないです? それに自宅って、それちょっとなー。てか夕方からどこかでメシとか」
「基本、夕方から夜にかけては出かけられない。午後5時から1時間おきに仕事の連絡待ちしてるから。あなたの相談ごとならうちでもいいでしょ。今から3時間以内だったら仕事止めて待てる。夕方以降は塞がってる」
「はぁ」
「来れるの?来れないの?」
「行けます」
「何分で来る?」
「えっ、案外積極的なんすね先生…そいで、えーと時間…は」
とりあえず、エアで一発殴る。
「4時とかどうですか」
「話せる時間1時間くらいしかないよ。それでいいならどうぞ」
「あっ、そうか、そかそかそか…あ、えっと、あの、すぐ行きます今から」
「手土産持ってこないでね」
「えっ」
「無駄遣いするなってことですよ」
「まじすか…」
「それと先生って言うのやめて」
「なんで?」
面倒臭い。向こうも同じように面倒臭いと思っているのがわかる。双方向同時めんどくせ〜現象が発生していた。
 面倒臭すぎるけれども、Nに関わる話なら会ってしっかり聞いておかなければ。
「そいじゃ今からこっち出ます。40分くらいで」
「今どこにいるの」
「うち」
公共交通機関だなと察した。
1時間後、Yはクッキーの詰め合わせちなみにコンビニ品を持ってわたしの家のインタフォンを押した。

「Nが最近、子どもを虐待してるんじゃないかって、心配なんですよ」
Yはそう切り出した。
「虐待の種類は?」
「ちゃんと世話してないっていうか、なんて言ったっけなあれ、えーと」
「ネグレクト」
「あ、それですそれです」
 うーむ。それはちょっと疑わしい。
「あ、こんなこと先生に言ったっていうことは、Nには」
「うん。言わない言わない。大丈夫。で、ネグレクトの実例をあげてみて」
「保育園に迎えに行く時間が他の親に比べて遅いらしいんですよー」
遅い『らしい』。
正確さに欠ける情報。
「それ、誰に聞いたの?」
「園長です」
Y自身がNの行動をネグレクトだと判断したわけではないのか、やはり。
「遅れた理由は?」
「仕事?」
「遅れた回数は?」
「うっわなんか取り調べっぽい。先生、今もしかして刑事物とか書いてるんですか」
「軽いエロ描いてるし刑事も犯罪者も出ないよ。Nが園でのお迎え時刻に遅れる頻度、週に何回あり、平均して他の親たちより何分遅いか、遅れてることについて園の先生方がどう言ってるか、そのあたり詳しく」
「えーとエロっていうとどの方面の…」
エアで殴る2回目。
「食虫植物と巨大昆虫の百合で三角関係のエロだ。もう一度聞くね。Nがお迎えに遅れる頻度は?」
「食虫植物って何それキモ…」
「スマホ貸して」
「えっ」
「保育園に直接聞くわ」
「あっそれはなーちょっとなー自分でかけて聞きますよ。えっと、何でしたっけ?」
小首を傾げて軽く笑んで聞いてくるからほんっとタチ悪いこの童顔。
「Nがお迎えに遅れた頻度」
Yは園に電話をかけた。
「あっすいませんAの保護者のYなんですが、園長先生お願いします。はい。さっきお会いしたばかりなんですがもう一回確認したいことあって。あれ?そうなんですか?あ、じゃAの担当の先生お願いします、あっ、すいません、わーほんっとすいませんアッハ初めまして先生、Aの保護者です、はい。はい、いつもお世話になってます、あっすいませんえーとですね」
すいません過剰分泌か。
「うちがお迎えに行くのがいつも遅いって園長先生から教えてもらってですね。週にどれくらい遅いかお聞きしようかなと。何度も遅れるようなら何か考えなくちゃと…え? あれ?そうなんですか? おかしいな…園長先生からたしかにお迎え遅かった件、注意あったんだけど。ハイ。ハイ。あ、ハイ。そういうことで。わっかりましたぁ。ありがとうございました」
待て待てまだ園に確認したいことがある。あっ、早々と通話終えちゃってもう。
Yはどこか腑に落ちない顔でスマホをテーブルに置いた。
「で? どうだったの」
「お迎え別に遅くないって担当の先生は。むしろいつも定時で助かってるって」
「園長の言ったことと矛盾してるね」
「でも嘘言わないでしょ普通こういうことで。園長ですよ?」
「その話を園長から聞いたときの状況を詳しく。それと、あなたが何故、お迎えでもないのに園へ行ったのか、その理由を」
「なんですかそれ。園へ行っちゃいけないんですか親なのに」
「わたしに言いたくない理由で園に行ったわけだね」
Yは数秒のあいだ、少しばかり無表情になり、それから軽くため息をついた。

「Nがね。浮気してるんですよ」
「ほう」
「驚かないんですね。ってことはやっぱ先生は何か知ってて、隠してると」
「知らないから隠しようがないよ。浮気する人じゃないと思ってるし」
だってね、と、Yは少し真面目な顔になった。
「車買い換えるっていうんですよ。今のを下取りに出して他のにすると」
「車相手に恋をするような人じゃないと思うよ。まぁ、してもいいけど」
「何言ってるんですか、違いますよ。地味な車にして、どこへ行くかってことですよ。今の車だったら目立つから浮気しづらいでしょ」
「どこへって、どこへ?」
「とぼけないでくださいよ」
そうか。
想像はそっちへ飛んだか。
「で?浮気問題と園長に会いにいくことのあいだになんの関係があるわけ?」
童顔に険しい眉間は似合わない。笑い出しそうになるのをこらえつつ、返事を待つ。
「このあいだ、ちょっとね。揉めたんですよ」
「揉めた…とは?」
「Nがプチ家出したんです」
「家出」
「今も思い出すとイラッとするんですよね。ああいう一面があるんだ、嘘だろって思った」
以下、『あの日』のYの述懐である。

その日、夕方から本降りとなった。
降ってるなぁ、ロッカーに置き傘あったかなとYは窓辺で考えていた。
「先輩、定時ですか」
数ヶ月前に入社した新人が明るい感じで近づいてくる。
「うん」
「あれーどうしたんですか、なんかしょんぼりーぬ?」
傘の有無が気になってるだけだったが、それを言うのもダッサ。
「試合どうなるかなぁってね」
「あ、ナンタラーズ戦?」
「それそれ」
「わー、嬉しいなこんなふうに野球の話できるって。ねーねー先発誰になると思います?」
「予想当たったことないんだ」
当たるも当たらないも、野球に興味がないYである。でも話題が進んでしまった今、それを言い出すことができない。
この後輩は同じフロアの新人さんのなかではたぶん人気トップクラスで、ほぼほぼアイドルさんである。
ここでボロ出して自分への評価を地に落としたくはなかった。
「試合始まる前に家に帰れるかなぁ」
と、新人さんが呟いた。
「雨だしなぁ」
「送っていってあげようか」
思いつきで言った。それは認める。多分、遠慮するか断るかしてくるだろうと、思っていたのだ。だが。
パァァと書き文字を添えたいような笑顔で見つめられて、Yは後悔と勝利感が複雑に組み合わさったような気分になった。
「いいんですか?」
「いいよ。定時5分後に正門前で。車はね、黒の」
「あっ、知ってます! 先輩の車! 友達に、あれに乗ってる人が同じ会社にいるんだよ、すごいよって、自慢しちゃったくらい」
「自慢していいよ」
後輩は目を丸くした。直後、ライブで推しに向かってペンライトを振る仕草をした。
車については羨ましがられたことは何度もある。だが、今の後輩の反応は新鮮だった。
「どうしよう夢みたい。夢ならさめないで」
「んな大袈裟な」
「定時5分後ですね!お願いします!」
「はい」
「センパーイもう一個お願いいいですか」
「男装してっていうお願いなら聞かない」
「いやーっ、似合いすぎますそれ。絶対可愛いいい」
「で、何?」
「電話…」
「ほい。これだよ」
「うわーんどうしよう今年の運これで使い切っちゃったかもしんない」
そこまで言う? とは思ったがまぁいっか、気にしないでおこう。
番号登録し終えると笑顔の後輩は離れていきながら振り返っては笑う、を繰り返した。
3度目の笑顔を受け取ったところで、居室から部内フォンで呼び出しがかかった。Nからの電話だった。
「今日、急に残業になっちゃったんだけど、保育園頼める?」
「無理」
「そっちも残業?」
「みたいなもん。だから今日は勘弁して。どうしても外せない用事がある。保育延長してもらえば?」
子どもを預けてる園へは、最大2時間まで延長を申請できる。延長保育については会社から補助金が支払われていて、社員の子どもの延長が断られることはまずない。
ただし、延長の理由は、仕事のみと定められている。
今日はNが残業だが、Yは違う。多分バレたら訓告ものだ。だが、Yの場合は重要なポジションでもないし、これで勤務評定がランク落ちしたとしてもたいして困らない。
バレたら「すいません」で済ませばいいのだ。
なので定時で社を出て駐車場まで走り、車に乗り込んだ。エンジンをかけると同時に、スマホが鳴った。
「センパーイごめんなさーい」
 後輩からだった。
「お父さんが雨すごいからって心配して迎えに来ちゃったんですー。先輩の車乗りたかったからすごい悲しいんだけど、今日はごめんなさい」
「あ、そうなんだ。いいよ気にしないで」
すごいってほどの雨か? 降ってはいるけど…どうなんだコレ。
「また今度、乗せてくださーい」
「うん」
電話から強めのリズムのラップが聞こえてきていた。お父さんカーステでラップ聴くんか…そうか、お父さんていってもいろいろあるからな。と思いつつ、通話を終える。
しかたがないので、そのまま帰宅した。

帰宅すると同時に、また後輩から電話がかかってきた。
「センパーイ、野球一緒にリアタイして、応援しながら通話アプリで盛り上がりましょうよ」
可愛いけどウザいな。と、正直なところそう思う。
「いいね。アプリ何使う?」
「〇〇〇〇」
「OK。だけど今からいくところでは電源切らなくちゃいけないんだ」
「えっ、試合は?」
「帰ったら観るよ。1時間くらいしたらオンラインいける」
「了解でーす。先輩リアルでも忙しいんですね、さすがです」
何が?
と思わないでもない。
通話を終えて電源を落とし、シャワーを浴びてビールを開けてテレビを観る。特に何が面白いということもない。
小一時間経過したあたりで野球を見始める。チャット機能付きアプリをダウンロードするにはしたが、パスもなしにインはできない。
そもそも後輩と電話以外の連絡方法って共有してない。
取り立てて好きでもない野球をあっちとこっちで一緒に見て、よくわかりもしないのに同時視聴する意味があるのか。
そのためにこっちから電話しなくちゃいけないとか。メールアドレス交換してパスワード送ってもらうとか色々。
面倒臭い。
というわけで、また携帯の電源を落とした。
空腹が堪えるが、もうちょっとすればNが子どもを連れて帰ってくるだろうから、待ってることにしよう。
それまでポテチでもつまんでおくか。
ポテチを開けて、2本目のビールをあける。
なんかなーつっまんないな人生ってやつは。
ていうか、Nは何してるんだ。とっくに1残終わってんじゃないの?
とっくに帰宅していい時間じゃないの? 
とっくに料理の一品二品、テーブルに乗ってていい時間じゃないの?
空腹紛らわせるためにポテチなんか食べてるのがバカバカしくなってくる。
けれどそれからもかなり長い時間、Nは帰ってこなかった。

そろそろ野球中継終わるんじゃないか。っていう時間になって、玄関を開ける音がした。
「ごめんね寒かったね。すぐお風呂しようね」
Nの声が聞こえてくる。
ただいまも言わないんだなぁ、軽んじられてるなぁと感じたが、そのまま言うのもダサいから黙っておく。
数分経ってから、Nがダイニングに入ってきた。
ベージュのコートの裾まわりが焦茶になってる。なんだそれ。泥遊びでもしてきたのか。
こっちは腹減って限界だっていうのに。まぁ仕方ないか。とりあえず今1番の問題として、この空腹をなんとかしてもらいたい。
「メシは?」
「どうしても外せない用事っていうのはもうかたづいたの?」
なにそれ。
あ、そうか。後輩を送っていくつもりだったので保育園お迎えを断ったんだった。
結果として「ごめんなさーい」&「また今度」で決着ついちゃってるし、それ以上何かあったとかいうわけでもないし。お迎え断った件について、こっちが後ろめたく思う必要はない。よね?
それにしたってNのこの時間に帰宅って遅すぎないか。
しかも、野球見てたんだよってふうに言ったとたん、Nの顔がフリーズした。
え。
何。
なんでそっちが怒るわけ。
空きっ腹で何時間も待たされたこっちが怒りたい。
でも、おとなの良識としてこういう状況に対して怒ったりはしないんだ。
だから何か食べようよと提案した。怒ってるだけじゃ腹は膨れないからね。
Nは返事もしない。
黙って浴室へ行ってしまった。お湯張りをします音声が聞こえてくる。子どもも浴室。
待って。風呂はあとでもよくないか?
最悪、1日くらい風呂抜いても死なないぞ?
浴室からは子どもの歌声が聴こえてくる。
…ありえない。
しばらく待っていると、Nも子どももダイニングへ戻ってきた。
キッチンでごそごそ始めたから、今度こそ調理かと思ったら、スーパーの袋から何かを取り出してゴミ箱に捨て始めた。
怖い。
なんだろう、今日のN。
もしかしたらNじゃなくて、何かに侵されて思考言動を支配された異生物かってくらい、行動がおかしい。
数分待ってから、もう一度、メシはどうするのかと聞いたら、Nは無表情×3+冷淡みたいな雰囲気で
「サンソ。あるあるだから好きにして」(みたいな感じの言葉)
そう言って、子どもを連れて家から出て行ってしまった。

エイリアンに乗っ取られてるなあれ。と、本気で思うくらい、気持ち悪い行動だった。
少ししてから電話してみると
「吐きそう。メシは自力でどうにかしろ」
みたいな返事で、ほんっとどうかしてるとしか言いようがない。
しかたがないから、冷蔵庫開けてみたら、なんだよあっためるだけで食べられる春巻あるじゃんか。
レンチンして食べて、歯磨いてベッドに入ったけれども寝付けない。
Nの言動がおかしいっていうことが気になるというよりかは、不気味過ぎて笑えない。みたいなことを考えちゃって寝られたもんじゃない。
真夜中になってNは帰ってきた。
どこへ行っていたのかとか、さっきの態度がおかしかったこととか、聞きたいことはいくつもあったけれども、正直もう面倒くさ過ぎて話す気力がなかった。
なので、黙って寝た。

で、朝起きたらNがキッチンにいて、
「おはよう」
って、至って普通。昨日の異様な感じは消えてたけれどいつものN過ぎて、余計に怪しい雰囲気。
Nと子供と自分とで車に乗って、まずは保育園。それから出社。
駐車場で車を降りるとき、Nのビジネスバッグのサイドポケットから本の一部がはみ出していて、何気なく見て驚いた。
「最後までキレイに!パーフェクト離婚」というタイトルだった。

以上があの日の午後5時から翌朝9時までのあいだに、Yに起きたことがらである。
「で? パーフェクト離婚と浮気疑惑と車の件を結びつける思考は理解できる。でもネグレクトは関係ないと思うよ」
「でも園長が」
「そう、それ。まさにそこだ。あなたは何故、園長に会いに行ったのかな」
「パーフェクト離婚、ダウンロードして読んでみたんですよ。離婚に際して準備することのひとつに相手の行動の…えーと」
「看過できなかった問題行動について、できるだけ具体的な内容を証拠として用意しておくこと。画像、録音音声、第三者の証言等が効く。ってあたり?」
「それです」
「ねえ、聞いていい? 離婚したいの?」
「したいわけないじゃないですかーもうやだ。今まで先生ったら話ちゃんと聞いてなかったんですか」
あのね。
「大事なことなのでもう一度聞くよ。あなたが園長に会いに行った理由は何?」
「子どもを養子縁組したときの保証人だったからー」
「だったから?」
「いざってときの味方的なー」
「いざっていうのは具体的に?」
「相手に責任があったとしても、こっちとしては許すよ、みたいな何かを用意しとくというか…」
「つまり、Nの落ち度探し?。それを許す自分に惚れ直せ的な戦略?」
「言い方」
「浮気は憶測止まりで証拠なし、ネグレクトは園長の話と先生の話に齟齬ありで証拠とするには弱過ぎ」
「捨てられたくないんですよ、なんでわかんないかなこの不安」
「話しあったらいいんじゃない?」
「Nと話し合って勝てると思いますかあの頭脳に」
「さて」
「でしょ。もうね、最初っから見えてるんです、どうあがいたって勝てないって。こっちが下だって。ニンゲンの器としても、アタマの中も、仕事でも、給料も、評価も」
「見た目と愛嬌は勝ってると思うよ。ごめんこれセクハラだ。申し訳ない」
「セクハラ以外で褒められるとこないっていうのが、ホントもう無理」
「君らなんで結婚したんだっけ?」
「結婚しようって言われたから」
「あなたがイエスと言った理由は?」
「やったーゲットだぜ。みたいな?」
「そっか」
可愛いってだけで、そして童顔で単細胞っていうだけで、Nが Yを選んだとは思えないが、まぁそのあたりは推測で決めつけたらいかん。

「あなたは基本は善人なんだよね。ただし想像力の及ぶ範囲が自己基準で、ちょっと狭い。Nは問題解決能力がずば抜けてるけれども、他人も自分と同じ能力を持ってるはずと考えてるふしがあるから、あなたの言動および思考の無邪気さ拙さを理解できない」
「何語?」
「あなたはいい人だよね、Nもいい人だよって話」
「褒められてる感じゼロ」
「提案1」
「お願いしまっす」
「今後1週間、掃除洗濯メシの支度と子どもの世話を従来より10%増しで、できるだけ丁寧にこなす。失敗しても投げ出さない」
「えー」
「提案2。来週20%増し」
「うげげ」
「提案3」
「30%?」
「違う」
「50%かー」
「違います。それはね。Nが家事をしてるとき、あなたのために車のドアを開けてくれたとき、Nが子どもを抱いて帰ってきたとき、Nが子どもをお風呂に入れたとき、あなたたちが夜眠りに入るとき、その他にも何かしらあると思うけど。そのたびに、ありがとうと言う。1日最低でも10回」
「家事なんてやって当たり前のことなのに。なんでありがとうって言わなくちゃいけないのかわかんない」
「あ、そ。Nに電話するわ。離婚しろ絶対だぞって」
「待って待って待って」
「ありがとう1日10回。1週間後に進度報告して」
「はぁぁ疲れた…」
エアで殴る3回目を発動し損ねた。そしてあらためてYの下がり眉の防御力に感嘆した。

続く




















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