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経営チーム内の心理的安全性を保つために実践したいこと

武末(@takesue1011)です。

スタートアップに限らず、全ての企業において、取締役会を含む経営チーム内の心理的安全性はとても重要です。一方で、その『心理的安全性』のための参考情報は恐ろしいほどに少ないように感じます。

私自身いくつかのスタートアップの経営チームにこれまで所属してきましたし、戦略コンサルタントとして上場企業の経営チームとご一緒させていただく機会を頂戴しましたが、驚くことに経営チームにおいて交わされる会話は企業の規模や設立年数を問わず、共通している部分が多いです。

「彼は売上のことしか考えていないので、人には興味がないんですよ」
「それぞれが管掌領域のことしか言わないので議論が空中戦になりがち」
「社長はある日突然前置きなく提案してくるから困っている」 等など

そこで今回のnoteでは、経営チーム内の心理的安全性を保つために必要なことは何なのか?という点について、まとめたいと思います。

経営チームにおける心理的安全性の重要性

健全な経営チーム運営が重要である理由は2つに集約されると思います。

1. 経営チームの「スピード」が事業の成否を分けるため
2. 経営チームの健全性は一度失われると巻き戻しが難しいため

順を追って、それぞれの理由について解説したいと思います。

私は事業における「スピード」は①意思決定の速さ、②実行の速さ、③改善の速さ、の3要素に分けられると思っています。

②と③を生み出すのも経営チームの大きな役割ですが、極論すれば②と③は「オペレーション構築」と「文化形成」がなされていれば、一定組織全体で維持することが可能だと思います。一方で①については、経営チームが維持しない限り非常に難しいというのが実態です。しかし、この決断の速さは、経営チーム内の心理的安全性が担保されないと「先送り」「議論不能」という形で一気に低下します。

また、経営チームは当然ですが「人」によって構成されています。経営チームとは、非常にストレスフルな状況下において、人間関係を維持することが求められるチームと言っても過言ではありません。こうした中で、「ミッション達成のため」「会社のため」という大義名分があろうとも、「信頼を置けないと思ってしまった人」と再度ともに働こう!と巻き戻すことは非常に困難です。

以上の理由から、経営チームの健全性を担保し、巻き戻しが効かない状況になる前に対応をし、適切な議論によって事業スピードを緩めないことは非常に重要です。

経営チームが心理的安全性を失いがちなパターン

心理的安全性を担保する上での誤解

1. 議論準備は重要だが、全てを解決しない

議論をしていてもなかなか結論が出せない場面が続く時に、アジェンダや前提情報の整理に活路を見出すことも多いと思います。

徹底した準備は良い議論をし、ファクトベースでの建設的な議論をする上でとても重要ですが、準備が全てを解決するわけではありません。なぜならば、いくら準備をしても、心理的安全性は生まれないですし、問題は他者と自己の相違によって生じる部分が多いからです。

2. 相手の主張を理解することは簡単ではない

議題について、そのまま議論に入る場面がほとんどだと思いますが、その議題の背景にある相手の主張を理解することは簡単ではありません。

一方で、時間が限られる中での意思決定が求められる経営チームでは、相手の主張を短時間で理解することが求められることもあり、拙速に議論をしがちです。拙速になりがちであることを認識した上で、相手の主張の背景を理解するよう心がけることが重要だと思います。

3. ファシリテーション ≠ 司会進行

議論をする際に、ファシリテータを設ける場面も多いと思いますが、司会進行だけになっていないか注意が必要です。

ファシリテーションは「議論を進め結論を出す」ことを目的とした役割で、傾聴・深堀り・止揚を使いこなしながら結論に導く必要があります。従って、ファシリテータを設けて議論しているにもかかわらず、良い議論ができていないと感じる場合は、議論メンバー個々に目を向ける前に、ファシリテータが本来の目的を達成できているのかを見直す必要があると思います。

心理的安全性を担保するために実践したいこと

1. 議論の前の徹底した「主張の前提理解」

議論にいきなり入る前に、「主張の前提理解」を徹底する必要があります。前提理解をせずに議論する先には、誤解の積み重ねが生まれ、各自の心理的安全性を徐々に低下させていってしまいます。

「主張の前提理解」に面倒くささを感じる人もいますが、「主張の前提理解」を繰り返せば、相手の思考プロセスや気にするポイントが分かってきます。目指すところは「意思決定」スピードの劇的向上であり、それを実現するための阿吽の呼吸の第一歩が「主張の前提理解」を徹底して積み重ねることなのです。

参考までに、各フェーズでよくある「主張の前提理解」がない場合とある場合のコミュニケーションを以下に記載します。補足すると、「主張の前提理解」を加速させるために、共有している前提が以下の観点で機能しているかを確認するために、社外取締役やアドバイザーをうまく活用することも有効だと思います。

・客観的に違和感のない内容か?(バイアスが著しく入っていないか?)
・相手にとって受け取りやすい内容か?(単なる批判になっていないか?)

2. 「アウフヘーベン(止揚)」という技術

司会とファシリテーションの違いで触れた止揚=アウフヘーベンは、ファシリテーションを行う上で最も肝であり、最も習得が難しい技術です。

アウフヘーベンとは、ヘーゲルの弁証法にて登場する概念ですが、「意見Aと意見Bを足して、より上位の意見Cを生み出す」と紹介されますが、イメージが難しいです。一方で、このアウフヘーベンができないと、以下のような場合に対応できません。

・人事に関する議論をしている場合
 ・管理部門は労務観点から意見を言う(営業のことはよく分からない)
 ・営業部門は売上観点から意見を言う(労務のことはよく分からない)
・プロダクトに関する議論をしている場合
 ・開発部門は技術観点から意見を言う(集約のことはよく分からない)
 ・マーケ部門は集客観点から意見を言う(技術のことはよく分からない)

 等など、経営メンバーにおける議論はそれぞれの管掌領域に依拠した意見がベースになるため、平行線のまま意見がすり合わせないということがよくあります。

アウフヘーベンを実践する上で、私はパターンが大きく2つあると考えています。1つは、両者の意見を要素分解して共有部分を軸に議論する「共通要素抽出」、もう1つは、両者の意見をより抽象化させて上位概念で提示し議論する「上位概念提示」です。参考までにファシリテーションイメージを以下に記載します(なかなか言葉にするのは難しいなとつくづく、、)

3. ファシリテーションができる社外取締役等の活用

「主張の前提理解」でも記載したように、社内の所属を持たない社外取締役やアドバイザーは経営チームにて心理的安全性を担保した議論をする上でとても効果的です。

但し、注意が必要なのは、社外取締役やアドバイザーが、皆ファシリテーションに長けているわけではないという点です。ファシリテータには、アウフヘーベンできる技術を持った人が必要であり、この技術は皆が持っているとは言えません。ファシリテーションを依頼する際には、その技術を持つ方に依頼するよう注意しましょう。

さいごに

昨今、起業家のバーンアウトに関して注目が集まっていますが、バーンアウトは起業家だけではなく、経営メンバーにも起こり得ますし、それは事業以上にチームに関することが起因する場合も多いです。

経営メンバー内での心理的安全性を保ち、建設的な議論を積み重ね、運命共同体として、真に背中を合わせてミッションの達成に向かえるチームが増えることを願っています。

個別のお悩みについては、私も勉強させて頂きたいと思いますので、気兼ねなく、Twitter(@takesue1011)のDMなどでご相談ください。

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