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【第29話】深夜の火葬場でカメラをのぞき込む謎の異形!元職員が語る本当にあった怖い話【下駄華緒の弔い人奇譚】


―第29話―

今でも考えると怖くなるのですが、ある日上司と二人で残業…というか自主的に夜の火葬場で掃除やら片付けやらをしていた時の話です。

「普段出来ない所をやろう」
という名目の元、2人で残っていたのですが、実質半分はこの仕事に対する意識や取り組み方などをお互いに語り合う為だったような気もします。
そろそろ22時を過ぎそうだなということで2人ともキリの良いところで切り上げ休憩室に向かいました。

埃まみれ(とはいえ骨の粉)の作業着を脱ぎシャワーを浴びてお互い私服に着替え終わったのが23時。そこからさらに「もっとこうすれば、このやり方は合っているのか?」などコンプライアンス的な話に花が咲き、気がつけば24時を過ぎていました。
次の日もお互い出勤なのでそろそろ帰らないと…と思っていましたが、まだまだ話し足らなさそうな上司の話を聞きながら、なんとなく休憩室のテレビのモニターをぼんやり見ていました。

このテレビのモニターには昼はもちろん鮮明なカラーで、そして今の様な夜はしっかりと白黒で映し出される監視カメラの映像が映っており、自動で「煙突」「駐車場」「火葬場入口」「炉前ホール」の四箇所を10秒間隔でパッパと切り替えて録画する優れものでした。

煙突、駐車場、火葬場入口、炉前ホール、煙突、駐車場、火葬場入口、炉前ホール…え!?
と、何周目かわかりませんが炉前ホールの映像になった時に、画面の右下の方から防犯カメラのレンズを直接間近で覗き込んでいるような大きさの、人の顔のような縦長の丸い黒い影がヌゥっと現れ3~3秒くらいでまたヌゥっと消えました。

それを見てしまった僕は固まってしまい、そのままパッパと切り替わる映像をずっと見続けていました。ふと気がつくと上司に「おい、おい」と声をかけられていて「そろそろ帰るか」ということで2人で早々に火葬場を後にしました。本当に早々でした。不自然なくらいです。さっきまであんなに熱弁していた上司が急に言い出したので変だなあと思っていましたが、謎が解けました。
「下駄くん、見た?」
上司も同じ映像を見たんだなということがその時理解出来ました。
今思えば絶対にこれは心霊的な事だとは言いません、もしかしたらカメラのレンズに虫がいたのかも知れませんしなにかの不具合かも知れません。
ですが、防犯カメラの映像にヌゥっと丸いものが数秒現れたこと、それを2人で見ていたこと、これは紛れもない事実です。

著者紹介

下駄華緒 (げた・はなお)

2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。2020年末に初の単著を上梓予定!!

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