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【第9話】ネットの噂に要注意! コロナ患者の葬儀についてのウソとホント【下駄華緒の弔い人奇譚】


―第9話―

昨今のニュースでは新型コロナウイルスの話題で溢れていますが、多くの方々が今回のパンデミックに対して意識が変わった転換期の出来事といえば著名人の感染、そして亡くなったという知らせを聞いた時ではないでしょうか?

しかもご遺族でさえ故人の顔を見ることが出来ずに、最終的には遺骨になって初めて帰ってきた…という。

ですが、ネットを中心に情報が錯綜して何が本当で何が間違いなのか分からなくなってしまっている現在の状況を、ここで改めてハッキリとわかりやすく説明出来れば、と思います。


まず新型コロナウイルスに限らず、例えば結核などの感染症で亡くなったご遺体についてはそもそも手袋やマスクを着用し、運用することになっています。僕自身も火葬場職員として働いていた時は結核などに感染して亡くなったご遺体については手袋などを着用して、それ以外はいつも通りの運用で火葬をしていました。

新型コロナウイルスに関しても基本は同じです。ただ、感染症には第一類、第二類とレベルがありまして、第一類にはエボラ出血熱などの大変致死率の高い感染症が認定されています。今回の新型コロナウイルスは一応、第一類として扱われていますが、他の第一類の感染症と比べると致死率も含めそこまでのものではないようです。
しかしながら、このパンデミックが始まった時はこの新型ウイルスがどのようなものか全く判断ができなかった為、第一類感染症として一先ず扱いましょう、という運用になった経緯があるようです。

その為、新型コロナウイルスに感染したご遺体については納体袋(刑事ドラマでよく見る遺体を納める袋)に納めた上、業務用の大きいサランラップで包み、葬儀屋や火葬場職員は手袋や防護服を着用の上、ご遺体の搬送、火葬を行う事になっています。
ご遺体は当然、咳をすることはないので、どちらかというと遺体から滲み出る体液からの感染を防ぐための処置になります。ですのである意味、感染リスクは当然低くなります。火葬の方法などは通常と全く変わりません。

しかしご遺族がお骨あげに立ち会えない、というのは事実です。これは何故か? という事にお答えします。


先ほども言った通り、ご遺体からの感染リスクは低くなります。それなのに遺族は立ち会えないのか? というお話ですが、これはご遺体からの感染というよりは、ご家族(もしくは濃厚接触者)と葬儀屋又は火葬場職員との接触を抑えるという意味合いがとても強いのです。ご遺体が感染源のような情報をたまに散見しますが、これは全くの誤解です。

火葬場に限って言えば、当然毎日さまざまな方が来られる施設なのでそこからの集団感染を防ぐ、という理由によるものです。ときたま、ご遺体からの感染を必要以上に恐れているような情報を目にしますが本当の理由はそこではない、ということです。

何も恐れずに対策をしない事はもちろんいけない事ですが、「無用に恐れる」事もまた、避けるべきだと思います。是非「正しく恐れる」ことを忘れずに乗り切っていきましょう。

(※編集部注:各葬儀社、火葬施設によって運用方法が異なる場合がございます。)


著者紹介

下駄華緒 (げた・はなお)
2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。

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