ポジティブとネガティブ

2016年9月1日にガン(肺癌ステージ4)が見つかってから、僕は意識を“ポジティブ”に持って、“ネガティブ”を見ないようにしていました。

今から振り返ると、ネガティブを見てしまうと、耐えられなかったからでしょう。

振り返れば、足元は断崖絶壁。

奈落の底が口を開けている。

後ろは見ない。

足元も見ない。

前しか見ないんだ!

そう、前だけを見ていけ!!

ですから行動や発言も常に“ポジティブ”。

しかし…

“ポジティブ”の背後には必ず“ネガティブ”が存在するのです。

ポジティブに意識を保っていられる間はいいのですが、気づくと、“ネガティブ”に取り込まれている自分がいました。

せいぜい想像出来るのは1ヶ月先まで。

3ヶ月先は全く想像出来ませんでした。

人は常に“意識的”でいることは不可能です。逆に“無意識的”な時間の方が多いのです。

ですから、“意識的”よりも“無意識的”の方が強くひっぱる力を持っているのです。

いくら“意識的”に「絶対治る!」と思っていても、無意識で「治らないかも…」と感じていたら、そちらの方が強くなることは、今ならよく分かります。

医者から「あなたは肺がんステージ4で、治りません。延命しか出来ません」と言われ、それでも“無意識的”に「絶対に治る~」と思うことは、僕には不可能でした。

そんなに強い人間じゃありません。

癌宣告された9月は、年内のことは全く想像できず、

ふと気づくと「年内、生きているかな? 生きて年越し出来るかな?」

と考えていました。

年を越すと

「桜は見れないだろうな」

教えていた選手の5月の試合が決まった時や、応援していたボクサーの試合が決まったときも

「生きてるかな? 見れるかな」。

当時見ていたドラマの続編が半年後の11月から始まるとの情報に

「11月じゃ、見れないな…たぶん」

見ていたアニメの終了が6月じゃなくて9月いっぱいだと知ったとき

「最後まで見れないのか…」

当時大学3年生だった長男の就職活動用のスーツを買いに行ったとき

「ああ、彼が社会人になる姿は見れないんだな…」

少し涙が出てしまいました。

とまぁ、こんな感じです(笑)

どんなに頑張っても、どんなにポジティブに意識を持っていっても、無意識のネガティブには敵いません。

ポジティブとネガティブは、同じ線上の右と左です。

意識の力で右に持って行っても、無意識に左に振り戻されます。

そのふり幅が大きければ大きいほど、エネルギーを使うので、ヘロヘロになります。本当に疲れます。

本当の安定性は、ポジティブ、ネガティブの二元性を超えて一元性へ到達しなければ、得られないのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?