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ショートショート広場

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一話完結〜数話完結の短編集を載せています。 あなたの息抜きのひとつに添えて頂けたら嬉しいです。
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2024年4月の記事一覧

【小説】 勿忘草を探して 【ショートショート】

 庭に咲く季節の花々は、朝から気持ち良さそうに顔を並べている。  妻の趣味で我が家の庭に…

大枝 岳志
1か月前
8

【小説】 父と私の土曜日 【ショートショート】 

 三ヵ月ぶりに危急の用件で実家に帰ることになった。キッカケはマネージャーを通して伝えられ…

大枝 岳志
1か月前
15

【小説】 衛星が通過します 【ショートショート】

 それはふた昔も前の、初夏の出来事だった。  田代町の住民は人を絶望的な恐怖を与える「衛…

大枝 岳志
1か月前
13

【小説】 子供に注意 【ショートショート】

 地方再生の一環として造られた老齢村へ取材へ行くために、私はハンドルを握っていた。  地…

大枝 岳志
1か月前
17

【小説】 芥地獄の観音様 【4万字】

 歯痒い季節なんてのはよ、とっくの昔に過ぎ去っているんだ。  俺の人生はこの歯と同じよう…

大枝 岳志
1か月前
16

【小説】 あたらしい生き物 【ショートショート】

 ついに、念願の茶釜を手に入れた。清水風芳作のこの茶釜を、私は長年に渡り探し求めていたの…

大枝 岳志
1か月前
5

【小説】 スーサイド・トライアングル 【ショートショート】

 誕生日プレゼントに何が欲しい? って聞かれたらから、私はお母さんに念願のスマホをせがんでみた。  すぐに「いいよ」とは言われなかったけど、お母さんは腕組したまま私の目をじーっと見つめてから、首をゆっくりと縦に振った。 「ねぇ遥、これだけは約束して。危ないサイトは見ない、ゲームの課金はしない、ギガが足りなくなったらお母さんに相談。いいわね?」 「分かってるよ。私だってもう中学二年だよ? クラスでスマホ持ってないのなんて、私だけなんだから」  私は嘘をついた。だって、本当は

【小説】 病名「いい人」 【ショートショート】

 浜本青年には幼い頃から決して揺るがない、とある信念があった。  それは、いつどんな状況…

大枝 岳志
2か月前
10

【小説】 遠くの箱庭 【ショートショート】

 列に並ぶ人の顔はどれもこれも、杞憂を塗りたくったような蒼ざめたものだった。  コンクリ…

大枝 岳志
2か月前
14

【短編小説】 瞬きする魚 

 アパートへ帰る途中、フードを被った黒ずくめの怪しげな青年と擦れ違った。  青年の目は魚…

大枝 岳志
2か月前
20

【短編小説】 不慮の事故 

※怒鳴る系のパワハラ、及び出血を伴う残酷描写があります。 心の臓が弱い方は、是非ご遠慮下…

大枝 岳志
2か月前
13

【小説】 骨枯らす風 【ショートショート】

 到着を知らせるチャイムが延々と続いているが、一分近く経っても目的の電車はホームへ姿を現…

大枝 岳志
2か月前
10

【小説】 壁の名は 【ショートショート】

 スーパーで冷めた半額弁当を買って、鼠小屋みたいなワンルームに今日も帰って来た。  容器…

大枝 岳志
2か月前
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【短編小説】 サラマンダー広田 

 幼い頃、夕方のテレビ画面に映るトカゲマスクの巨体を見るたびに僕は震えていた。  鉄パイプや鋏攻撃、相手選手への複数名でのリンチなど数々の反則攻撃。極悪非道の限りを尽くすトカゲマスクの「サラマンダー広田」は国民にとっての悪の象徴だった。  時は流れて僕は彩夏と出会い、恋に落ちた。そして互いに働き始めて結婚が見えて来た矢先。僕は彼女からとある秘密を打ち明けられた。 「拓斗。近いうち、うちのお父さんに会ってみる?」 「うん。そろそろ、ちゃんと挨拶しないとな」 「実はね……うち