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テレビの仕事〜眠れない日々~ 無知すぎた・・・僕

今となっては、働き方改革とやらでブラック的なことはあり得ない話になってきてますが、当時のテレビ業界は寝てない時間が長いのを自慢する傾向がありました。(今考えれば、変な人たちの集まりですが・・・w)
とにかくテレビ業界のことを本当に全く知らないまま入って行ったので、次になにが起きるのか予想すらできなかったんです。ただただ瞬間瞬間で対応していくしかない状況でした。しかも、話して教えてくれる人が本当に少なかったので先輩の仕事を見ながら盗んでいくしかなかった。
そんな状況の中にいるといろんな感覚が鋭敏になってくるんだなってことはその時初めて知りました。

新幹線の『こだま号』を使って駅弁を買ってくるミッションが終わり、かって来た弁当の数は実に300個を超えていました。新大阪→東京間でも、なんとなく融通をきかせていただいた車掌さんに『本来、新幹線は自分が持ち歩ける程度の荷物というのが決まりだから、君のは完全にオーバーしてるよね』と笑いながら言われました。本当にたくさんの人に迷惑をかけて、たくさんの人に助けていただきながら、東京駅につきました。
到着したのは15:00くらいだったと思います。ホームを見てみると迎えに来てるはずのスタッフがいません。今度は清掃の方に手伝っていただいて、弁当の段ボールを6箱電車から下ろし、ホームで待つこと1時間。その間、ホームを利用するお客さんたちには白い目で見られ続けました。
そもそも入って2日目なので誰がどの位置のスタッフかなんて全くわかりません。当時は携帯電話なんぞなかったので黙って待つしかなく、電話をかけにいくにも遠くて弁当から離れるわけにもいかないし、なんて状態でした。
『あ〜!ごめんごめん遅れちゃって。ロケが押しちゃってさ、お待たせ!わりーねわりーね』
『・・・いえ』
こいつ、口から生まれてきたに違いないと思ってしまうくらい高いトーンで喋るし、止まらない。その時僕は、『いえ』と『はい』しか言ってなかったはず。

とりあえず買って来た弁当は、(今思えば、この時初めて乗った)ロケバスに乗っけて局内のスタッフルーム(←番組生放送の準備をするための部屋で翌日放送を迎えるスタッフが基本使うところ)のある曙橋まで移動。
前日の昼間、かけずっり回ってた曙橋が、違う景色に見える・・・。

とにかく疲れた。
さすがに今日は早く帰りたいな・・・、と思っていた。
入り口に6箱の段ボールが積まれると、各曜日担当のADさん達が送りくる。『うわ!なにこの量』『全部撮るんだよね?』『終わったな』『ギャハハハハ』・・・会話の意味がわからないし、全く入って来ない。
『ナベさんが、すぐはじめてって〜!』
遠くの方でそんな声が聞こえて、そのリアクションがいくつか聞こえた。
なにを始めるのか、自分はどうしたらいいのかわからないでいると、直属の浜谷さんが僕を呼ぶ。
飛んでいく!
『みんな昼から何にも食べてないから、吉野家大盛り買ってきて25個。はい!』
と言って、僕の手にお金を握らせる。
また、弁当。・・・ちょっと笑っちゃった僕がいた。

吉野家を買ってきた僕は、各スタッフに弁当を届ける。
一人として、誰だかわからないけど愛想よく、意味もわからないけど『食事です。お願いします』と言って渡していった。
その時の光景は、大人が何人も小さな真っ暗な部屋にこもってなにをしてるんだろうと思っていた。部屋と言っても4つに仕切っただけの空間なだけで黒い布で仕切ってあるから部屋みたいに感じる。何をしていたのかというと、弁当を一個一個撮影していたのだ!
僕が買ってきた弁当を一つ一つ丁寧に、撮影の仕方を駆使して4人のディレクター達が放送を明後日に控えた曜日担当のチーフディレクターのナベさんを助けるべく集結し、力を貸していたのだ。その時・・・すごい結束力とすごいパワーを感じたのを覚えている。
その各部屋にいたのは、あとでわかったのだがカメラマン・照明さん・そしてディレクターの三人。
そこにディレクターについているADさん達が(いつの間に持って行ったのか)局の巨大冷蔵庫に入ってる弁当を次々渡し、撮影し終わったら綺麗に包装し直し冷蔵庫に戻す。
今更ながら、そういえば『次〜!』『はーい!』『どうやって撮る?』『これ橋みたいだから、ヘリコプターになった気分で』『なるほどね。おい!プロクサー』『見てて。こんな感じは?』『いいねえ。それで!!』『はい!じゃあ本番』『OK!』って会話が各部屋から聞こえていた。
これが一晩中続いた。
つまり、僕は帰れなかった。でも、何してたか記憶がない・・・。唯一記憶に残ってるのは、コピー機の前に大半居たこと。今のコピー機のようにエラーも起こさずにさくさくコピーできるものではなかった。すぐに紙詰まり起こすし、あっという間にトナーがなくなるし、そればっかり直してた。
日をまたいで、ディレクターたちは、10:00くらいに帰っていった。各々の曜日の企画も進行しているんだけれど『1回目の放送が失敗に終わるわけにはいかないからみんな手伝ったんだ』と、後々各ディレクターが言っていた。

徹夜1日目、11:30。
ナベさんに呼ばれ、荷物を山ほど持たされ二人で局に向かう。
向かう道すがら『とんでもない世界にきたな。大丈夫か?』『はい!』。
口をきいたのはこのふた言だけだったが、なんか熱かった。
その時、ナベさんと一緒に行ったのはタイトルルーム・美術センター・
もち道具を置いてある部屋・それとメイクさんの部屋。
みんなに
『明日の放送で使うので、よろしくお願いします。それとこいつ中村って言います。ちょいちょいお邪魔すると思うのでお願いします。』
『あいよ!ナベちゃんの愛弟子?ハハハハハ・・・よろしくぅ〜!』
『中村です。お願いします!』
この挨拶をたくさんやった。

朝10:00からはじまる生放送、前日の夜。
この前の記憶がない。
それでも地獄は、まだまだ続く。

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