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テレビの仕事~はじまりの歌~

テレビ業界に入ったのは・・・もう30年も前の話ですやん!びっくりしたその頃の写真をお見せしようと思ったんですけどその頃は、まだドデカ携帯持ってる人がみんなに「すげぇ!」って言われてた時代なんでポケベルすら持ってなかった気がします。
 外に出るときどうしたって?ホワイトボードに行き先書いて、戻り時間も書いて出るんですよ。1時間に一回会社に電話して、「なんか入ってますか?」ってデスクに聞く。帰りが遅れそうになったり、次の打ち合わせに行くことが決まったりしたら、また会社に電話するんですよ。公衆電話でね。もう10000円のテレホンカードがあっという間になくなるのね。
 初日。今はなき制作会社に出向で行ったんです。仕事は、フジテレビの10:00からの生放送で、「生島ヒロシのおいしいフライパン」という番組。月曜班だったかな?確か。
 ぶっちゃけ右も左もわからんまま入ったんですけど、
 
偉い人「お前の担当は、4月から始まる生放送だから」
 
 いきなり偉い人に言われて、
 
僕「あ、はい!」
偉い人「お前がつくディレクター紹介するわ」
 
 無言のまま、僕は偉い人の後をついていく。
 
偉い人「君大卒?」
僕「あ、はい」
偉い人「ああ、そう。頑張ってね」
 
 全く興味ないのに、質問。そして、スタッフルームというところに連れて行かれた僕。
 
偉い人「おー!お疲れ。どーだ?渡辺順調か?」
渡辺D「はい!大丈夫っす」
偉い人「頼むぞ」
渡辺D「はい」
偉い人「それからな。こいつ新人。名前中村だっけ?」
僕「あ、はい」
偉い人「中村ちゃんだ。お前につけるから、あと頼むな」
渡辺D「はい!」
偉い人「あとよろしく!」
 
 って、行っちゃったんですよ。すると、渡辺Dが
 
渡辺D「浜谷くーん!」
 
 おそらく浜谷くんが僕の後ろから登場。この人が直接の上司になる、チーフのADさん。僕はぺーぺーのADさん。
 
浜谷CAD「はい」
渡辺D「この人、中村くん。うちの班だから頼むね」
浜谷CAD「は〜い。あ、渡辺さんデスク僕の隣でいいですか?」
渡辺D「空いてるならいいんじゃない?」
浜谷CAD「わかりました。中村くん、よろしくね。きて」
僕「あ、はい」
 
 僕はこの日、まだ「あ、はい」しか発言していない。
 
渡辺D「中村く〜〜ん!」
 
 よくわからない機械だらけの部屋から叫んでる渡辺D。
 
浜谷CAD「でかい声で返事!」
僕「はい!」
 
 ダッシュ。
 
渡辺D「中村くんさぁ、大山のぶ代さんて知ってる?」
僕「あ、はい」
渡辺D「大山さんの『大山のぶ代の酒肴辞典』っていう本買ってきてくれる?」
僕「あ、はい」
 
 浜谷CADのところに戻り、その故を伝えると
 
浜谷CAD「ふーん、じゃあ買って来て」
僕「あ、本屋さんは近くにありますか?」
浜谷CAD「フジテレビ下通りにあるよ」
 
 って、言い放ってどっか行っちゃったんです。
 
 僕の初仕事は、「大山のぶ代の酒肴辞典」という本を買ってくること。これがあんな一大事になるとは思いもよらず、曙橋の麓にある会社を飛び出して、ダッシュでフジテレビ下通りへ!行こうと思ったんですが、どっちに行けばフジテレビ下通りかも分からない。地獄の半日がスタートしたんです。

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