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テレビの仕事〜怒涛の日々は続く・・・

 そうなんです。前日の夜、浜谷CADに「明日福岡行って、明後日帰ってきて。」と言われた僕は、右も左もわからずにテレビ業界に昨日入ってきたズブの素人です。
 朝10:00に会社に来た僕は、昨日からの仕事に必死でした。弁当屋さんにこれでもかというくらい電話しなきゃいけなかったので。
 電話しましたよ。30社くらい。気付けば夕方4時になり、浜谷CADは僕に言いました。
「中村、そろそろ行かないと間に合わなくなるから」
「はい。じゃあ、いきます。」
「いーなー」とまだ会話すらしたことないスタッフが何人も僕に言ってくる。リアクションの取れない僕は、愛想笑いをするしかなかった。会社を一人出た僕は、もう一度確認しようとチケットの入った封筒を開く。・・・飛行機だよ!危ねえ!東京駅に行くとこだった。
 早とちりは気を付けないといけないと思いながら、僕はモノレールで羽田へ。実は、北海道に行った時以来飛行機に乗るのは3度目。その時は、父に任せきりだったので、乗り方なんか全く記憶にない。あるのは父親が「飛行機に乗る時は、ちゃんと靴を脱ぐんだぞ」と言われたことだけ。とはいえ、困ったら聞けばいいわけで、右往左往しながらもチェックイン、無事に完了!
 機内では、何をしていたのか、これまた記憶が全くない。一人ぼっちで遠いところに行くのもほぼ初めて、九州に行くのも初めて、ビジネスホテルと言う宿泊施設に一人で泊まるのも初めて(旅館と観光ホテルは、昔泊まった経験がある)。初めてづくし極まりない。四国より西には行ったことなかったしね。
 あー、それから一番緊張していたのは大金を持ち歩いていたこと。当然、お弁当を買って帰るには現金が必要と言うことで、封筒に聖徳太子(当時の一万円札の肖像画はこの人でした)が30人入った封筒をごく普通に「はい。これ」と渡され、中身を確認したら、両眼が飛び出るくらいの衝撃的景観。『守らなければ』しか思わなかった。
 福岡空港に到着。
 今となっては、中心地に近くて、こんなに便利な空港はないと思っていますけど、当時降りた瞬間の感情だったり動きは、看板多いな、福さ屋ってなんだ?一番目立ってるってことは、儲かってるんだろうなあ、腹減ったなあ、初九州上陸だよ、どっちいけばいいんだ?わかんないから、自腹覚悟でタクシーに乗っちゃえ。乗車。タクシーの運転手さんに行き先を伝え、ホテルに到着。
 チェックイン。部屋に入ると尋常じゃないくらい狭くて、窮屈な空間が目の前に出現。これがビジネスホテルかあ。入り口も貧乏くさかったもんなあ。また、九州弁聞いてないな。
 初めての九州で、初めてひとりで仕事しなくちゃいけなくて、明日の朝5時に起きなきゃいけなくて、万が一寝坊しようものなら洒落にならないなと思った僕は、20時にはベッドに入った。
 九州は福岡で、豚骨ラーメンも水炊きももつ鍋も何ひとつ食べたり、飲んだりすることなく、そして九州弁を聞くこともなく、ただただ九州に来ただけの夜は、冷たくて小さく、カッチカチの枕とマットレスのベッドの中で更けていきました。今思えば、もったいないことをした。

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