見出し画像

「伝える力」って必要?

プロとして舞台に立つためには、観に来てくださるお客様に
作品のメッセージを正確に伝えられる「技術」が必要です。

「技術」と一言に言っても、呼吸や滑舌、読解力、身体表現など…
挙げだすとキリがないぐらい多くの技術が存在します。

今日はその内の一つ、
「伝染力」のお話。

「伝える力」ではありません。
「伝わる力」です。


いきなり本題に入りますが、皆さんは
「客席にいるお客様が、どんな表情で舞台を観ているのか?」
って知ってますか?

実は、作品に集中しているお客様のほとんどは
パフォーマンスをしている人間と同じ表情をしています。

感染力の高いパフォーマーであれば、呼吸すらお客様と共有します。

昔、俳優の益岡徹さんと舞台でご一緒した時に
舞台袖から益岡さんのお芝居を見ていた自分の呼吸が、
気付いたら舞台上の益岡さんと全く同じになっていたことがありました。

チラッと客席を見てみると、お客様たちも益岡さんと同じ表情をしていたんです。
で、益岡さんが泣いた瞬間に僕たちの涙腺も崩壊するんです。

いやー恐ろしい伝染力…。

僕は「伝染力」というのは「人を巻き込む力」とも同じだと思っています。


僕が子どもたちにダンスを指導するときに、
「このダンスを観てる人が、どんな顔をして観てくれていると嬉しい?」
と聞くことがあります。

ほとんどの子どもが、
「笑顔でー楽しそうに観ていて欲しい!」
と答えます。

そりゃそうですよね。
退屈そうに、しんどそうに観て欲しい人なんていません。

ならば子どもたちがやるべきことは一つ。
自分たちが誰よりも楽しんで、最高の笑顔で踊る。
そうすればお客様も自然と笑顔になって、楽しんでくれます。

下手に盛り上げようとしてはいけません

自分たちが踊っている場所、音楽、仲間…
そういった自分以外のものを感じて、その瞬間を全力で楽しむ。

そうすれば、きっと周りの人もそんな自分たちを楽しんでくれます。

不安がある状態で舞台に立たないでいいように、
しっかり練習はしないといけませんよ!!

伝えるための技術(ステップや振付)はしっかり磨いた上で、伝えようとしない。
感情の押し売りはしない。


皆さんは、子どもたちが楽しそうに大笑いしているのを見て、
つられて笑ってしまった経験ってありますか?

親しい人が泣いていて、もらい泣きをしてしまったことは?

無愛想な店員さんに接客されて、別に機嫌が悪いわけじゃないのに
自分まで嫌な気分になったり…

不安そうな人と一緒にいると、自分まで不安になったり…


舞台も一緒なんです。
感情は周りに伝染します。

自分の感情に嘘をついた状態でパフォーマンスをしても、
見ている人には分かります。

感情は伝えるものではなく、伝わるものなんです。

伝えようとする感情は嘘です。伝わりません。


例は悪いのですが、数年前にとある議員の号泣会見がありましたよね。

本人が「泣こう泣こう」と必死になるほど周りは冷めていく。

あの時はみんなが笑いながらネタにしていましたが、実は日本の演劇界でも
あれと同じようなことをしている人たちがたくさんいるんです。

本人たちに自覚がないのが残念なのですが…。


なにかをやろう伝えようとせずに
そのシーン、その瞬間にあるべき感情を嘘なく引き出せる行動をする。
それが真実であればあるほど、お客様は共感してくれます。

一番大事で、俳優・パフォーマーとして最も難しいこと。

舞台という虚構の世界で真実を生きる


下手な俳優ほど日常でも嘘が上手。
優れた俳優ほど日常から嘘が下手で不器用。

これが、いろんな俳優さんに触れてきて、僕がいま感じている真理です。


ちなみに北村は嘘が上手だと思っています。笑

僕みたいにならないように
誠実に、一生懸命生きていきましょうね。笑



もし気に入っていただければサポートをお願いいたします!泣いて喜びます!!いただいたサポートは自分の勉強・スキルアップの為に使わせていただきます!