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トヨタ自動車 2021期3月期 売上計画の裏側の推察

ゴールデンウィークが開けて、3月決算の企業が続々と決算発表をしています。コロナの影響で明暗が分かれ、暗の会社の方が多いわけですが、5月12日にトヨタ自動車が決算発表をしています。

トヨタ自動車の決算発表

数字のサマリは、こちらです。

・2020年3月期:売上高 約29.9兆円、営業利益 約2.4兆円
・2021年3月期(予想):売上高 約24兆円(前年比▲約20%)、営業利益 約0.5兆円(同▲約80%)

2020年3月期の売上・営業利益の規模感には驚かされますが、2021年3月期の売上・営業利益の大きな減少幅に着目されます。5月13日には、ソニーが決算発表をしていますが、2021年3月期の業績予想はマーケットの不確実性を踏まえ控えていました。トヨタ自動車も同様に業績予想を公表しない選択をとることはできたと思いますが、自動車産業各社へ及ぼす影響を鑑みて、一つの基準として業績予想を公表した、とのこと。

業績予想を出すことで、自動車部品会社や他自動車会社、海運や商社などのパートナー企業も参考にして、経営に臨むことができることを考えたようですが、一方で、当然上場企業なので、株式市場との対話も、その業績予想の数値を基にすることになるので、株式市場向けの思惑も織り込んでいると思います。それらを踏まえると、この事業計画はどのように作成したのか?が気になるところです。

売上計画作成の二つのアプローチ(推察)

上記は、P/Lの業績予想ですが、売上計画とコスト計画に大きく分かれ、コスト計画は売上計画を基点に調整し決めて、最終的に利益計画が決まるので、ここでは売上計画がどのように作成されたか?を勝手に笑、考えようと思います。

まず、売上計画作成のアプローチについては、大きく二つ。

(1)マーケット全体とマクロトレンドから算出
(2)地域別売上詳細の積み上げ

(1)は、所謂経営企画の組織(組織名を調べてませんが)が作成しているでしょう。(1-1)コロナ影響でどこまで落ち込むか?(1-2)ボトムから、どのようなスピードで回復するか?の問いを考えていると思います。

(1-1)は、直近の自動車販売の落ち込み(前年比マイナス)と、リーマン等の世界的なリセッションが起きた時の落ち込みの数字を確認した上で、コロナ影響では、どこまで落ち込むか?を見立て、(1-2)は、同様に、リーマン等の世界的なリセッション時の回復トレンドを踏まえて見立て、松・竹・梅のケース別に数字を作成したと推察します。

地域別の影響の違いもあるので、日本・北米・欧州・アジア・新興国他等の大きな地域にセグメントを分けて、前述のトレンドを参考に、数字を作成しているのではないかと思います。

(2)は、同様に経営企画の組織が旗を振っていると思いますが、実際に数字を作成するのは、各地域の事業リーダーです。通常の事業計画を作成する時と同様に、各地域の支社別等で、コロナ影響に加えて、個別要素も踏まえて数字を作成していると思います。各事業リーダーは、それが2021年3月期の目標となり、評価対象となるので、精度を高く作成しようとしていると思います。

公表する売上計画の決め方(推察)

(1)と(2)のアプローチで数字を作成した次のプロセスとして、経営企画的組織と各地域トップとで、(1)の数字を傍らで持ちながら、(2)の数字の蓋然性について議論したと思います。そして、
・売上計画におけるリスクは何か?
・そのリスクが生じる確度は高いか低いか?
・リスクに対する売上毀損額はどの程度か?
を整理した上で、
・どこまでのリスクを読み込むか、読み込まないか?
を経営陣も含め最終的に意思決定したと思います。

この売上計画は、決算の際にもお話されていましたが、見通せないリスクのポーションが大きいので、どこまでのリスクを読み込むか?が悩ましい議論だったと思います。

売上計画の固さに関する所感

あのトヨタ自動車であることと、株式市場に公表する数字であることを鑑みると、かなりリスクを読み込んだ形で着地しているのではないか、と通常だと考えますが、こちら。

トヨタの世界販売台数は4~6月期に前年同期比で6割、7~9月期は同8割、10~12月期で同9割の水準を想定する

CFOの近健太執行役員は、2021年の初頭には2020年並みの水準を回復するとみていると会話されているようですが、個人的な感覚としては、回復のトレンドの読み込みが少し早い気がしています。

リーマンショックの株式指数の回復期間(Bloombergの数字を基に三井住友DSアセットマネジメントが作成。P5)を見ると、ドルベースで22か月かかっているし、円ベースだと更にかかっています。勿論、この傾向をそのまま、自動車販売に当てはめることはできないのですが、リーマンショックと同等かそれ以上に失業率の高まりや消費減退がありえることを考えると、コロナ前に戻るのにはあと半年から1年くらいかかってもおかしくないと思いました。

その意味では、この売上計画は、リスクを最大で読み込んだわけではなく、中庸よりも少なめにリスクを読み込んだ数字と感じました。もしかしたら、営業利益では赤字にはしないが(そこまで落ちる理由となる材料が現時点ではないので)、コロナの影響度合いは大きいということを、経済及び政治に対して訴求するために、前年比80%減を落とし所にしたことも考えられます。

おわりに

ということで、今回も勝手に笑、色々と考えてみました。トヨタ自動車の決算の記事と、引用したリーマンのレポート程度という限定的なインプットで考えているので、少しずれているかもしれませんが、時間もリサーチ工数もかけないと、こんな風に、トヨタの売上計画を考えることができるよ、として読んで頂ければと思います!

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