小さな巨人と言われるまで

僕は、バスケ部が全国で準優勝するぐらいスポーツの盛んな進学校に通っていた。陸上部に所属していた僕は、バスケのことは全くわからないが、一際異彩を放つ存在がいた。身長210センチ黒人留学生のパトリックだ。
バスケ部は全員体育コースで普通コースの僕にとってバスケ部と関わることはほとんどなかったのだか、購買の焼きそばパン競争だけは、バチバチにやりやっていた。とは言っても、体育コースと普通コースということもあり、授業はもちろん体育コースの方が早く終わる、そして、購買への距離も近い、大きなビハインドだ。そんなビハインドもあり、焼きそばパンを買えたのは過去2回。

しかし、その日は絶対に焼きそばパンが食べたかった。学校に着く前の電車から焼きそばパンのことを考え、授業中は焼きそばパンのことで頭がいっぱい。授業中に急に当てられたら「焼きそばパン!」と言ってしまいそうになるくらいだ。
この日は、絶対に譲れない。その日は授業が偶然早く終わり、チャンスだと思った。持ち前のスタミナとスピードを活かし、購買までノンストップ全力疾走。

購買への扉に差し掛かったとき、大きなものにぶつかった。見上げてみると目の前にはでかいベルト。パトリックだ。目の高さとベルトの高さが同じなんて今思うと少し萎縮してしまっていたのかもしれない。
いつもならここで諦めて帰るのだが、その日は絶対に譲れない。購買の扉をすぐに開け、焼きそばパンのもとへ。

しかし、パトリックと横並び状態。
このままでは、負けてしまう。そう考えた僕は、210センチのパトリックに向かって当時172センチの僕が、体を入れスペースを確保。焼きそばパンに手を伸ばし、すぐさま抱え込む。パンのリバウンド、いや、リパンドは、僕の勝利。
パトリックは悔しそうな表情をしていた。人生で初めて味わったであろう敗北感。

口の動きから推測するに
He's like michael jordan 彼はマイケルジョーダンのようだ。と言っていた。多分。

その日から僕は、小さな巨人と呼ばれるようになった。

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