サレンダー・トゥ・ユー!/ヴィーナス (‘80)
Surrender to You! / The Venus (‘80)
かつて’80年代初頭に日本国内でロックンロールやオールディーズが流行った時期があり、その中心ともなったバンドが、今回紹介させていただく「ヴィーナス」である。
私の親が若い頃(’60年代初頭)にアメリカやイギリスのロックやポップスが輸入され、日本国内のアーティストが、こぞって日本語詞を乗せてTVに出演していた。この時期が「日劇ウェスタン・カーニバル」の時代である。「ロカビリー三人男」として、平尾昌晃、山下敬二郎、ミッキー・カーチスがクローズアップされ、歌っていた曲は、初期エルヴィス・プレスリー、ポール・アンカ、ニール・セダカらのポップスが中心であったにもかかわらず、「ロカビリー」という名称を使ったことにより、オールディーズもロックンロールも全て「ロカビリー」と呼ばれる結果となってしまった。
そして’80年代になり、ストレイ・キャッツの台頭により、本来の「ロカビリー」がクローズアップされるも、国内ではまたしてもオールディーズがその同義として流行る結果となった。
ストレイ・キャッツのファーストアルバムには、エディ・コクラン、ウォーレン・スミス、ジーン・ヴィンセントらの有名どころの’50年代のロカビリーをはじめとして、ルー・ウィリアムズやロイ・モントレルといったマイナーなアーティストの曲も収録されていた。
さて、本作はヴィーナスが’80年にリリースしたアルバムであり、オールディーズの日本語カバーではあるが、エヴァリー・ブラザーズ、リトル・リチャード、レスリー・ゴーア、トロイ・ドナヒューなど、実際のアメリカにおけるヒットチャートのような選曲であった。そういった面でも、彼らはストレイ・キャッツと方向性は違えど、同じベクトルを持ったバンドであった。
ところが、このヴィーナスというバンドは’70年代に男性五人組のグループ(ビーナス表記)でスタートしており、メンバーチェンジを経て’80年に、ほぼ現在のメンバーとなった(この時期は女性ツインボーカル)。そしてプロデューサーやバンドリーダーの意向により、アメリカンポップス路線へとシフトしていった。この頃にバンド名が「ヴィーナス」から「ザ・ヴィーナス」に変更された。
その後、’81年には「キッスは目にして」のヒットにより、アメリカンポップス=ヴィーナスという図式が一般的となった。
下の画像はアメリカンポップス路線前のヴィーナスのシングル盤である。右側の女性がヴィーナスのコニー・レーン〜LPのポニーテールの女性である。バックの男性たちは、その後 髪型がリーゼントとなり、バンドのカラーが一体化した。
このシングル盤の時期は「和製アバ」のような感じで、ツインボーカルと、さらっとしたバックバンドという雰囲気である。
私自身はオリジナル音源の発掘が好きであるが、彼らの日本語詞によるアメリカンポップスは、非常に完成度が高いと感じる。そういった意味でも、彼らがロックンロールやオールディーズに興味を持つきっかけになった方も多いのではないだろうか。
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