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初期オールマンズにおけるリズムアレンジの妙

まず最初にお断りをしておくが、この記事の内容は、私個人の解釈によるものであるため、主観の相違により違った解釈をお持ちの方もおられることを理解している。それを踏まえた上で、デュアン・オールマン在籍時のオールマンズのリズムアレンジが、他の時代に比べて違う点を検証しようと思う。

ご存知のようにオールマン・ブラザーズ・バンドは、’69年のデビューから何度かの解散とメンバーチェンジをおこなってきた。最初のメンバーは、デュアン、グレッグのオールマン兄弟、ディッキー・ベッツ、ベリー・オークリー、そしてツインドラムのブッチ・トラックスとジェイモー・ジョハンソンの6人である。’71年10月にデュアン・オールマンが他界し、続いて翌年にベリー・オークリーも他界した時期までを「初期」と考え、この時期のアルバム収録曲を例に挙げ検証していく。

この時期にリリースされたアルバムは4枚であるが、4作目の「イート・ア・ピーチ」ではデュアン・オールマンが参加していない曲もある。
その中でファーストアルバム「オールマン・ブラザーズ・バンド」の「腹黒い女〜Black Hearted Woman」と、「フィルモア・イースト・ライヴ」の「アトランタの暑い日〜Hot ‘Lanta」を考えてみる。

腹黒い女〜Black Hearted Woman

まず、ファーストアルバム「オールマン・ブラザーズ・バンド」の「腹黒い女〜Black Hearted Woman」であるが、以下の点が興味深い。

①イントロが7/8拍子で4小節あり、その最後8分音符X3でドラムのフィルイン〜そこからは通常の4つ打ちにつながる。基本的なリズムは「タン・タン・タカタン・タン」と、アタマにアクセントがある。

②途中のドラムソロ(ドラム&パーカッション)の後、「ア〜アア〜アアア〜ア」のコーラスを2クール(7小節)、その後に7/8拍子の2小節が付け足され(3:50付近)、同じ拍数のイントロにつながっている。

あえてキメのフレーズではなく、拍数の変更という、うっかりするとギクシャクするような手法で変化をつけているように思う。

アトランタの暑い日〜Hot ‘Lanta

続いて、「フィルモア・イースト・ライヴ」の「アトランタの暑い日〜Hot ‘Lanta」の例を見てみよう。
①基本的なリズムは6/8であり、所謂3連のリズムである。こちらはインスト曲なので、ギターソロX2が終わり、フックになるテーマを挟んで(3:16付近)〜ドラムソロに繋がる。
②問題はこの後の「ズタ・ズタ・ズタ」と3/4のフレーズに繋がり(3:48付近)、再度イントロのテーマに戻るという流れである。

こちらも6/8というリズムに3/4のリズムを挟むことで、アクセントの位置を変化させている。
6/8拍子は4/4の1拍を3連符にしたもので、1小節が「タタタ、タタタ、タタタ、タタタ」という解釈になる。それに対して3/4拍子は、1小節が「タン・タン・タン」となり、4分音符=8分音符X2で置き換えれば「タントン・タントン・タントン」になる。そして音符の最初にアクセントを置くことにより、「音数を変えず」に「アクセントの移動」をおこなっている。

長いオールマンズの歴史においては、私も知らない演奏もたくさんあるが、とりわけこの2曲は初期オールマンズの特徴が出ているように思う。

この2曲以外にも「夢〜ドリームス」は3/4拍子の曲となっており、途中に変則的な展開はないものの、一般的な4/4の曲から考えれば、リズムを意識した曲と考えることもできる。

以前、デュアン・オールマン在籍時のバンドの目標は「ブルースの解体と再構築」であるという記述を読んだことがある。また、デュアン・オールマンがフェイバリットに挙げているのは、マイルス・デイヴィスとグレイトフル・デッドであるとの記事もあった。要するにカテゴライズされない〜ということに重点をおいていたのではないかと考えている。

このようなリズムアレンジの妙がなされているのが、初期オールマンズの特徴であり、その後のディッキー・ベッツ期、チャック・リーヴェル期、ダン・トーラー期、ウォーレン&アレン期、そしてデレク期は、アンサンブルの壮大さは感じるが、初期の持ち味とは違う面がクローズアップされてきたように感じる。

ベースマンであるが故の気になる点ではあるが、デイヴ・ブルーベックの「テイク・ファイヴ」しかり、リズムの妙をサラッとアレンジできるのは相当の経験だと考える。

リズムは意識して捉えれば非常に面白い。地域や時代、当時の流行によってそれぞれが互いに影響し合って、音楽は進化し淘汰されてきた。何の気なしに聴いている曲も少し深掘りすれば、意外なフックやギミックが見えてくることもある。

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