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「YOUR TIME」鈴木祐著

時間管理の常識を疑う

「タイパ」という言葉をご存知だろうか。時間あたりのパフォーマンスを意味する若者用語である。私もこのタイパにこだわる方だ。無駄な待ち時間があるとイライラする。YouTubeは2倍速で見てしまう。しかしこの時間管理の姿勢が、かえって時間を無駄にしているようだ。

過去から未来への直線的な時間感覚は、時間管理術が生まれた産業革命以降に浸透したものらしい。そして時計が普及した結果、現代人は平均して6分ごとに時間を確認し、一日の総チェック回数は150回に及ぶ。もともとは工場をうまく回すためだけに生まれた「時間管理」のアイデアに振り回されているのだ。その結果、厚い本を読み通せなくなり、一本の映画を我慢強く鑑賞できなくなっている。本書で言う「認知の耐性」が失われているのである。

時計が発明される前の人類史のほとんどの期間は、直線的な時間ではなく「循環する時間」のなかで暮らしていた。人間本来の時間感覚である「イベントタイム」を取り戻すことが充実した生活を送るヒントとなると著者は言う。小さな頃から教え込まれてきた時間の常識を疑う必要がある。

「YOUR TIME」鈴木祐著 書房新社

(この記事は以前に私が業界誌に投稿した推薦図書文です)

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