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森田療法~目的本位と他者視点

森田療法では最近は少なくなったようですが、当初は入院療法として絶対臥辱療法と呼ばれるものが行われました。

現在では慈恵医大など全国で7つぐらいの医療機関でやっているようです。

この療法は、最初の一週間ぐらいは何もせず、ただ横たわって寝るというものです。

要は何もしない時間をひたすら過ごします。

そして、その時期が過ぎると作業期と呼ばれる時期に入ります。

そこでは何らかの日中活動に入ります。

掃除、草むしり、園芸作業等を行います。

ある時、森田療法の創始者である森田正馬がある入院患者の行動を目撃しました。

園芸作業においては水やりをしますが、その入院患者はなんと雨の日に鉢に水をやっていたのです。

水やり作業の本来の目的は草木が枯れないよう鉢に水を適宜入れることであり、雨などで水が入っていれば本来水を入れる必要はありません。

しかし、この入院患者は鉢に水を入れるという行為そのものが目的となっていたのです。

これを「手段の目的化」と言います。

これなどは滑稽な例とも言えますが、対人恐怖症の方や神経質症の方は決して笑うことができない所があります。

程度や種類の差こそあれ、似たようなことをしているのです。

勉強する時に雑念が湧き上がって勉強に集中できないという雑念恐怖症の人は、本来の目的である勉強することをさておいて、集中するために座禅などの手段に一生懸命取り組むかもしれません。

赤面症の方は、濃い化粧や、タートルネックの服や、マスクという手段を。

私が30歳の時に出会った心療内科の医師は、しきりにあがることの苦しみを訴える私に、ストレートに言い切りました。

「緊張することは治せないですよ」と。

そして続けて言いました。

「君は緊張しないようにと人より強く意識することによって余計それに囚われてしまっている。緊張しないように、あがることがばれないようにというのは手段の目的化だ。本来、人に話すのは伝えるためだ。その目的に集中している時、あがることが治るのではなく、あがることを忘れることができる」と。

私はこの時のシーンを忘れることができません。

衝撃でした。

森田療法の軽作業期は、まさにこの目的本位の行動をすることを目的としています。

清掃なら清掃作業そのものに集中する。

どうすれば効率よくきれいにできるか。

教師、講師ならば、あがらないように話すのではなく、相手が理解しやすいよう話す。

これは自分視点ではなく他者視点のものです。

他者視点に立つことができると、あがり症の方はかなり症状が軽減していきます。

そしてこれは、実は皮肉なパラドックスでもあります。

それは、あがり症の方の苦しみは、自分のためにと思えば思うほど苦しくなり、他の人のためにと思えば思うほど軽減されていくという特徴があるのです。

目的本位と他者視点があがり症克服のキーワードの一つとも言えるでしょう。

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