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森田療法~気分本位と事実本位

以前にも書きましたが、あがり症の方々には消極的自己中の方が多いです。

消極的自己中とは、自分から他の誰かに積極的に悪いことをするわけではないが、他の人ことなど考えられず自分のことしか考えられなくなっている、自己中心的態度を意味しています。

これは、自分の抱える症状による余裕のなさによるところが大きいでしょう。

いずれにせよ、人との関わりで生きていくのが社会ですから、これは周囲のみならず、一番は本人にとってよろしくないことでしょう。

そして消極的自己中のピークは、やはり人前で話す時でしょうか。

もちろん人によっては違いもありますが、しかし社交不安障害の方やあがり症の方は概ねそうでしょう。

そしてそのマックスの緊張時、スポットライト浴びているかのように自分が失敗するのではないか、声が震えたらどうしようなどと、自分がどう見られているかにばかり意識を向けます。

それこそ自分の全能力をかけて。

こういった状況において、話している本人は話が伝わったかどうかをどう意識しているのか?

はっきり言ってあがり症の方にはどうでもいいとは言いませんが、緊張したり震えさえしなければそれで良いのではないでしょうか?

だって、人の目、人の思惑ばかり気にして、自分の評価を下げていないと分かればそれでいいのですから。

このように、自分の不安や恐怖の有無とその程度にこだわり、それに一喜一憂する態度を森田療法では気分本位と言います。

一方、緊張しながらも汗をかいたり、つっかえながらも、伝えるべき内容を伝えられたか、自分の役割をこなせたかどうかに集中する態度を事実本位、目的本位と言います。

気分本位の方は、相手に伝わったかどうかより、相手の目を恐れます。

目的本位の方は、相手の目を恐れはしても、伝わらないことによる目的が達成されないことを懸念します。

意識のあり方が180度違うのです。

この気分本位と目的本位の態度というものは、あがり症の方にとって占める割合が異なります。

一番症状が重い時期は気分本位10で、目的本位の割合がゼロかもしれません。

それが回復の過程において次第に気分本位の割合が下がっていき、目的本位の割合が上がっていきます。

ですから、あがり症の程度はこういった側面からも推察できます。

そして、あがり症の克服においてはいかに目的本位の姿勢を高めていけるかになりますが、これは「あるがままに」という言葉がキーワードとなります。

それは、緊張しながらでもびくびくしながらでも、その気持ちのままに、その場の目的を達成するために恐怖場面に突入するということです。

この行動態度が継続してできるようになった時、あがり症は着実に回復していきます。


簡単に言ってしまっていますが、このあり方には相当な勇気が必要でしょう。

この勇気を持ち、かつ、保ち続けるためには、二つのことが大きな支えとなります。

一つは自分の悩みを理解し共有してくれたり応援してくれている人や、あるいは同じ悩みを持つ仲間の存在です。

このつながりが、崩れそうになる自分の勇気を支えるのです。

ここにこそ支援者や自助グループの持つ意味があります。

そしてもう一つは、価値観です。

それは自分がどうありたいか、このままの人生でいいのか、どういた人生を送りたいのか、ということです。

ほんの少しずつでもいい、目的本位の割合を高めていく必要があるのではないでしょうか?

始まりは本当に本当にほんの少しでいいのです。

全ては、ほんの小さな一歩から始まるのです。

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