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悪者探しって、意味なくない?

 とある本を読んでいる、Kindleで。「外来種は本当に悪者か?新しい野生 THE NEW WILD(フレッド・ピアス (著) 藤井 留美 (翻))」という本なんだけれども、面白いというか何というか。まだ半分くらいしか読んでないのに、ちょっと飽き始めてしまった。タイトル通り、「悪者探しって、意味ないな」というのが現段階での印象です。


チリサーモンは外来種

 この作品を読んでいるのはチリサーモンへの理解を深めるため。チリで養殖されるのは、アトランティックサーモン、ギンザケ、ニジマスの3種類。その全てが外来種なんですが、すでに帰化しています。人の手によって持ち込まれた生物なので、「導入種」なんて呼ばれ方もします。

 チリでは生簀の破損により、導入種であるサーモンが流出することが度々発生し、問題視されてきました。つい最近では18年に、たった一つの養殖拠点から80万尾のサーモンが逃げ出した。そうしたサーモンの一部は、漁師によって捕らえられ、市場で販売されたりするわけです。「逃げたサーモンは抗生物質が体内に残留してるから、それが市場で売られているなんてとんでもない!」というのがお決まりの批判。抗生物質が使用されたサーモンには、本来であれば抗生物質を除去するための期間が設けられるからです。


そもそも善悪って?

 もう一つのお決まりバッシングが「捕食者のサーモンが在来種を食いまくる」というもの。これはもっともな話だ。この問題をどう理解したらいいものかと本を購入してみた、というわけなんです。

 前置きが長くなりましたが、なぜこの本に飽きてしまったかというと、論調が一辺倒なんですよね。外来種が多様性を高める事例(高けりゃいいってものじゃない)を列挙しながら、それこそ在来種の駆逐といった悪影響についても言及しつつ、最後には「でもそれは本当に外来種が悪いのだろうか、人間こそがその環境を作り出したんじゃないか」という結論に束ねられてしまうのです(今のところは)。

 例えば、アフリカのヴィクトリア湖の生態系を脅かした、かの有名なナイルパーチ。本書によると、ナイルパーチは1950年代にイギリス人により放流され、在来種のシクリッドという小型の魚を食いまくって、元いた500種が半減しました。ただそれは、水質汚染に伴う富栄養化によってホテイアオイ(水草)が大繁殖し、シクリッドの住む湖底が酸欠状態になったからだ。とこうくるわけです。シクリッドが湖底から浮かび上がり、ナイルパーチの恰好の餌になったと。んー。ぼくには、どうも納得できない。

 そもそも何かのカテゴリーを、善と悪で分けることに、意味なんてあるんですかね。そもそもぼくは、「生物多様性の保全は人類のため」と理解しているので、肝心なのはある外来種がその目的に貢献するか否かだと、素人ながらに考えている。種によって議論すべきことは変わってくるはず。ただ、こうした議論にはそれぞれの立場がそれぞれの正義を主張するので、本当にむずかしいですよね。


チリサーモン、釣ります

 本をいたずらに批判してしまいましたが、情報量がとにかく多く、たくさんの外来種が登場し、独特なキャラクターを感じさせる本です。分量が多く、読んでも読んでもkindle左下に表示される「本を読み終えるまで:10時間55分」からなかなか進まないもんで、ちょっと飽きちゃっただけ。オススメの本の一つではあります。

 さてチリサーモンの場合はどうなのか。まだまだ勉強不足なので、あれこれ言えません。実はすでに帰化したサーモンは、スポーツフィッシングの対象として人気を得ていて、日本の渓流釣りと同じように、遊漁期間が設けられている。それが、ついに、9月に解禁になるのです。このために日本から持参したテンカラと毛針を手に、まずはこの外来種を釣り上げてやろうと思います。釣って、触れて、食ってみる。そして科学的な文献も読みながら、この生き物についてじっくり考えていきたい。釣果報告をお楽しみに。

※ちなみにトップ画像のアカミミガメは、2015年に積極的に防除を行う必要がある外来種「緊急対策外来種」に指定されました





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