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【東海道新幹線の大改革・のぞみ12本ダイヤをフル活用へ? 後編】

<全席指定化のメリット・デメリット>
今回、最繁忙期だけでも全席指定化することによって、自由席への乗車待ち列をある程度は解消。ひかり・こだまは自由席が残るので、完全には無くならないでしょうが、ある程度は減少すると思います。

全体の輸送人数が変わらない以上は、混雑は変わらないのでしょうが、その期間、のぞみ12本ダイヤをフル稼働させれば、その分座席を多く提供できることにもなります。
また、自由席がある場合、お客は自分の都合のよい時間帯に動こうとする可能性が高く、その分ピーク時間帯の混雑が激しくなる。その分、ピークではない時間帯・曜日で、チラホラ空席がある列車も出てくる。

恐らく全席指定とすれば、列車を予約し、その時間に合わせて行動するため、ある程度の混雑平準化にも寄与する可能性があります。

もう一つ見逃せないのが、自由席特有のトラブルを防止する面です。
荷物を座席に置いたり、切符を所持していない幼児を座席に座らせていたり。こういったところでどうしてもトラブルは起こりがちです。
勿論車掌の巡回で、注意したりもしますが、最ピーク時は巡回もままならないので、実態はどうなのか…というところです。
全席指定であれば、1人1席の原則で発売されていくので(とはいえ、乗車券を買わずに指定席特急券だけ抑えることは出来てしまうが)、こういったことは減ります。

デメリットも勿論あります。

今回、自由席券でも、立ち席に限りのぞみ号に乗車できるという特例も残しました。立ち席を排除してしまうと、それまで溢れていた自由席の立ち客が、ひかり・こだまに殺到することになり、寧ろ混乱を助長することもあるからでしょう。
しかし、のぞみ号の立ち席利用が増えると、本来指定席券を持っている人の乗降と錯綜し、やはり乗り降りに時間が掛かって混乱してしまう恐れがあります。

僕が考える方法の一手は、各乗車口で指定席を持っている人の列と、のぞみ号立ち席利用の人の列を分けて並んでもらい、列車が到着したら、指定席利用者の乗降を優先。その後に、立ち席利用の人に乗車してもらうというところでしょうか。
しかしこれは、日本国内の鉄道では初めてのケース。今年の東海道新幹線年末年始輸送は、混乱する可能性があるなと考えられます。

抜本的な対策としては、立ち席特急券の発売です。
これは自由席と同一の値段ではありますが、全席指定の列車が満席になったときに限り発売される特急券で、列車は指定。基本的に座席の利用はできないという条件で発売されるきっぷです。
自由席特急券との違いは、これは指定列車に限り有効というもの。
発売枚数も制限されているため、度を越えた混雑にはならないというものです。
個人的には、必ず立たなければならないのが確定であれば、座れる可能性のある自由席券よりも割り引いた特急料金にしてもいいのでは?と思いますが、現状、制度としてこうなっています。

これを列車ごとにするだけでなく、できれば号車指定までして、1列車のある程度の定員をコントロールし、混雑を平均化できないでしょうか?

もう一つの問題があります。
それは窓口の混雑に拍車が掛かるのではないかという懸念です。
現状、東海道新幹線の利用客の多くは、インターネットでの予約の割合がかなり高い状態ではあります。
しかし、やはり日頃鉄道を利用しない、不慣れな旅客が増える多客期には、ある程度窓口を利用する割合も増えるものと思われます。
これまでなら
希望列車が満席⇒なら自由席でもいいか
という流れもある程度あり、自由席券の発券ならそれほど時間はかからず、対応時間も短いものになります。

しかし、全てののぞみ号が全席指定となると、なんとか空いている列車を!というニーズが高まり、その分僅かかもしれませんが、窓口の対応時間が長くなることが予想されます。

近年、ネット予約の進展もあり、係員窓口を閉鎖していく傾向がみられ、大行列が問題となり、指定席を取りたくてもなかなか取れない!ということになる可能性も考えられます。

体のいい値上げだ!という声もありますが、確かに収益性という面ではかなり向上すると思います。しかし最繁忙期のみとごく部分的な全席指定化ということを見ると、定時性の確保というところが一番の理由なのではと思います。

ちなみに、最繁忙期のみ全席指定としたのは、将来的な全席指定化への布石だ。という意見もありますが、僕個人的にはそれは暫くは無いのでは?と思います。
理由として、気軽に来た列車に乗るという自由席のニーズはビジネス利用の場面であっても、のぞみ号では根強いのではないか?通常期においては輸送力に充分余裕があり、気軽に乗れる選択肢を残しておくことは、まだまだ営業施策上、大事なのではないかと思います。

2023年8月10日、東海道新幹線では過去最高の475本が運転されたと発表がありました。
片道辺りで換算すると、237本。新幹線が発車する時間帯を6時から22時と仮定して(24時まで運転するが、22時以降になると発車する本数は激減する)
東京発で考えて、途中(名古屋や静岡)始発の列車。また東京を22時以降に出発する区間運転便を除いて考えます。
平均換算すると、およそ14本が運転された計算となります。

現状の、のぞみ12本ダイヤを見てみると、のぞみ12本の他、ひかり2本、こだま3本が運転可能なダイヤと思われます。(但し、こだまは定期的に運転されるのは2本。あとの1本は、夕方18時台に三島行きのスジで使われている。ドクターイエローの隠れスジとして大阪までの通しスジが確保されているか?)

かなりギリギリに近い運転本数ではあるものの、まだのぞみ12本ダイヤが全時間帯で実施されているわけではないことがわかります。

設備、車両的には全面的にのぞみ12本ダイヤを展開して、さらに増発できる体制は整っていると思います。
しかし恐らく、これ以上増発したくても、人員上、これ以上の増発は無理がある。というより、現状でもかなり無理をして増発している。
また、キャパシティーを超える需要が発生する最繁忙期には、自由席混雑による遅延が多発し、ダイヤを維持できない。

今回発表された二つの施策は、さらにのぞみ12本ダイヤを拡大し、安定した輸送を提供するための布石なのかと思います。
因みに、この年末年始輸送では、最繁忙期間の一日平均運転本数が434本を予定しており、これは今年のお盆の計画本数を4本上回ってきています。
パーサーの削減による余力を、ここで使って来ていることが予想できます。
東海道新幹線の1日の最高運転本数をさらに超えてくることを、この年末年始輸送に期待?してみたいです。

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